48.ラスティールのわがまま
ベガルド王国、王の間。
病気の国王に代わり玉座に座るボナレフ王子。周りには各大臣や『六騎士』など国内の実力者が揃う。真っ赤な長絨毯が敷かれ厳粛な空気が流れる。
ボナレフの前に『六騎士』騎士団長ランディウスが立ち、絨毯の中央で片膝をつくローゼンティア、そしてラスティールに向かって言った。
「ローゼンティア、そしてラスティール」
「はっ!」
ふたりの勇者が顔を上げる。ランディウスが言う。
「この度の魔王ガラッタの討伐、見事であった!!!」
頭を下げるふたり。静まり返る一同。ランディウスが続ける。
「ローゼンティア、我々の期待に応え魔王を討ったその功績、まさに『六騎士』の栄誉に値するもの!!」
「有難きお言葉、感謝致します」
そしてランディウスはラスティールに向かって言う。
「ラスティール・ホワイト」
「はっ」
「ローゼンティアと共に魔王を討伐したと言う話、誠であるな?」
「はい」
ランディウスはラスティールを見て言った。
「ならば約束通り、その働きを称え貴殿を『六騎士』に任命する! 異存はないな?」
「……」
黙り込むラスティール。それに気付いたランディスが少し困った顔をして尋ねる。
「なぜ黙り込む、ラスティールよ」
ラスティールはランディウスの顔を見て言う。
「私が『六騎士』になれば再び王都にて暮らすことになりますでしょうか?」
「当然だ。有事の際にいつでも『六騎士』に指示を出し、動いて貰わなければならぬ。以前もそうであっただろ? それがどうした?」
ラスティールは以前王都に住んでいた時の屋敷を思い出す。
決して狭くはないが、今住んでいる田舎の屋敷・敷地に比べればずっと狭い。そこに自分を慕って集まって来てくれた人達を全て住まわせることは不可能だし、屋敷の畑、もっと言えばホワイト領の人達ともほとんど会えなくなる。ラスティールが言う。
「有難いお話。身に余る光栄。ですが……」
ラスティールはランディウスの顔を見上げて言った。
「お断りさせて頂きます」
隣にいたローゼンティア、ランディウス、そしてそこに居るすべての者がその言葉を聞いて驚きの表情を浮かべた。
「お父様!」
屋敷で帰りを迎えた父ベルフォードにラスティールが挨拶する。屋敷で待っていたデレトナなどほかの勇者達に一礼し父に言う。
「ただいま戻りました」
「うむ。で、どうであった?」
ずっと心配していた父親だが、意外に明るい娘の顔を見て少し安心した。ラスティールが答える。
「はい、『六騎士』就任への要請を頂きました……」
「ほう、それは……」
喜ぶ父。周りの勇者達も喜びの声を上げる。しかし娘の次の言葉に驚く。
「しかし、お断りしました」
「は? な、なぜだ!?」
意外な返答に父が驚きを隠せない。
ここに来てからずっと願っていただろう『六騎士復帰』。それが叶ったと言うのに当の本人は断ったと言う。父親が言う。
「魔王ガラッタ討伐を成し遂げたお前には、十分その資格があると思うのだが……」
ラスティールが答える。
「ええ、ただ私はここで皆と一緒に暮らしたい。ここで強くなりたい。そう思ったんです」
「ここで……?」
「はい」
ラスティールが真剣な顔で言う。
「ここに来てから『六騎士』に戻ることが私のすべてでした。その為に日々鍛錬し、視察を行い騎士として必要な知識、経験を積んで参りました」
「うむ……」
父親が頷く。
「しかし村比斗と出会ってから自分が如何に無知であり、何もできぬ未熟な存在だと思い知らされました。今では領地の民と畑について語るのが楽しくてなりませぬ」
「なるほど」
「だからと言って魔王討伐を諦めたわけでもありません。ただここにいても強くなれる。いや、ここにいるからこそ私は強くなれる。今の私にとって強くなるために『六騎士』と言う肩書は決して必要なものではなくなりました」
黙って聞く父親。ラスティールが言う。
「『六騎士』就任後は王都に移動せねばなりませぬ。今の私にこの土地やみんなと別れて王都に行く気持ちなどありませぬ」
そこまで聞いた父ベルフォードが言う。
「分かった。お前の気持ちよく理解した」
「お父様……」
ラスティールはホワイト家復興への機会を、自分のわがままで潰してしまったことに申し訳なく思う。父が言う。
「魔王を倒すような自慢の娘だ。好きにしなさい」
「は、はい!」
ラスティールの顔に笑顔が戻る。
「お嬢様~」
それを聞いていたデレトナ以下屋敷の勇者達の目に涙が溢れる。
「おーい、ラスティール!!」
本邸にラスティールの帰りを知った村比斗とミーアがやって来る。村比斗が言う。
「おい、それでどうだったんだ!? 復帰はできたんだろ?」
『六騎士復帰』を一緒に願ってくれていた村比斗がラスティールに尋ねる。ラスティールが答える。
「うん、まあその前に村比斗。お前らに伝えておかなければならぬことがある」
「ん? 俺らに?」
村比斗が首を傾げる。
「ああ、そうだ。とりあえず今日より別邸から出て行ってもらう」
「え?」
村比斗は理解した。覚悟はしていたがラスティールが『六騎士』に復帰し、王都に行くのならば自分達とは一緒に居られないと言うことを。村比斗は頷きながら答える。
「そうか、分かった。おめでとう、ラスティール。俺達のことは心配しないで向こうで元気にやってくれ!」
ラスティールが笑って答える。
「何を勘違いしておる。移動先は、本邸だ」
そう言ってラスティールは人差し指で床を指す。ミーアが言う。
「え? じゃあ、ミーア達、ここから出て行かなくてもいいの!?」
「ああ、もちろんだ。ここで一緒に暮らそう」
「やたー!!」
ミーアが喜びを全開にしてラスティールに抱き着く。そして唖然とする村比斗に手を差し出して言う。
「と言う訳だ、また宜しくな。村比斗」
「あ、ああ……」
村比斗は嬉しさと驚きがごちゃ混ぜになりながら、綺麗なラスティールの手を握り締めた。
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