49.ヤンデレ vs ツンデレ!?
「はい。あ~ん、して」
「……」
村比斗が無表情でじっと固まる。
「いけませんわよ、村比斗様ぁ。好き嫌いをなさっては。それとも食べ物が固いのかしら? でしたらわたくしが口で柔らかくして、そのまま口移しで……」
「要らん!!」
村比斗は隣にべったりと座って一緒に食事をするローゼンティアに向かって言った。真正面に座るラスティールが真っ赤な顔をして言う。
「む、村比斗ぉ!! き、貴様と言う奴はこの様な清々しい朝になんと言う破廉恥なことをするつもりだ!!!!」
「い、いや、今のはこいつが言ったんだろ。ちゃんと聞いてんのか、お前……」
ローゼンティアが真っ赤なロリータドレスからのぞく「胸の谷間」を強調しつつ村比斗に言う。
「村比斗様ぁ、いやですわ。わたくし達はもう夫婦。その程度のことでお恥ずかしがらなくてもよくってよ。おほほほほっ」
それを聞いたらスティールが立ち上がり血相を変えて怒鳴る。
「ロ、ローゼンティア!! 貴様、先ほどから一体何を言っているんだ!! と言うよりなぜお前がここに居る!?」
ホワイト家・本邸の食堂。ラスティールやミーア、村比斗達と共に何食わぬ顔でローゼンティアが席に座っている。その後ろには彼女の護衛勇者のレザルト。ラスティールが壁に立つデレトナに言う。
「デレトナ、なぜこの女を入れた!?」
巨体のデレトナが小さくなって答える。
「いえ、その、申し訳ございません……」
いくらデレトナとは言え、現役の『六騎士』が無理やりやって来ては追い返すことは不可能。それを察した村比斗が答える。
「まあ、それは仕方ないだろう。こいつが来ちゃ、誰も止められん。だろ?」
そう言われては何も言えなくなるラスティール。ローゼンティアが言う。
「それにしても村比斗様は料理もお上手でびっくり致しましたわ。今度わたくしにも是非料理を教えて頂けませんですこと、ふたりきりで」
「うぬぬぬぐぐぐっ……」
それを真正面で見るラスティールの顔が更に赤くなる。村比斗が言う。
「いいから、お前は一度離れろ。これじゃあ食べられんぞ」
「ですから、わたくしが口移しで……」
「はいはい、ティアちゃんもそのくらいにしようね~」
村比斗の隣に座っていたミーアが、ローゼンティアの腕をつまみ上げる。ようやく朝食が食べられるようになった村比斗に、壁に立っていたデレトナが声を掛ける。
「ところで兄貴」
「ん?」
スープを口に入れた村比斗が返事をする。デレトナが言う。
「いつ俺達に稽古をつけてくれるんだ? お嬢様みたいに俺ももっと強くなりたい!」
「ぶー!!」
口に入れていたスープを吐き出す村比斗。
「あらあら、これはまあ、お子様みたいに。わたくしが拭いて差し上げましょう」
そう言って隣に座るローゼンティアがナフキンで村比斗の顔を拭く。ローゼンティアの後ろに立っていたレザルトも言う。
「同感だ。ラスティールの急激なパワーアップ。それに貴殿が絡んでいるとなると是非稽古をつけて欲しい。断るならその頭、ここで叩き割るぞ」
ローゼンティアの護衛勇者として、そして私的にも彼女にぞっこんのレザルトは、やはりこの得体の知れぬ村比斗と言う男が気に入らない。隙あらば彼女をこの様な悪夢から目覚めさせ、以前の様に野に咲く可憐な花のように振舞って欲しい。それがレザルトの切なる願いであった。
村比斗が顔を青くして言う。
「お、おい、何物騒なこと言ってんだよ……」
「レザルト」
村比斗の隣に座っていたローゼンティが言う。
「はっ」
「何度も申しましたが、村比斗様はわたくしの夫。その方に剣を向けると言うのであれば、それはわたくしに対して剣を向けると同じこと。そう捉えても宜しいでしょうか?」
「い、いえ、そのようなことは決して……」
ローゼンティに注意され大人しくなるレザルト。村比斗が言う。
「おい、ローゼンティア」
「ティアでございますわ」
「何でもいいが、俺はお前の夫でも何でもない。頼むから理解してくれ」
ローゼンティアが答える。
「村比斗様は胸の大きな女性はお嫌いですか?」
そう言って再び胸の谷間を村比斗に押し付けるローゼンティア。ロリなのに出るとことは出ている。村比斗が汗をかきながら答える。
「い、いや、そんなことは、ない……、んだけど……」
まるでいちゃついているようなふたりを目の前にして、ラスティールは拳を強く握りながら思う。
(こ、この幼女好きの変態底辺が!!! 前の戦いで少しは見直したと言うのに、やはり外道は外道。絶対にこんな奴の言うことなど聞いてやるもんか!!!)
一方の村比斗も鬼畜を見るような眼差しで睨むラスティールを見て思う。
(何でこいつはいつも俺をそんな風に睨みつける? 俺だってこんな地雷女……、ま、まあ体はロリのくせにエロいんだけど、それでもこんな危ない奴に絡まれているんだぞ。もうちょっと可愛くしていればそれなりの態度をしてやるのに!!)
睨み合う両者。
その険悪な雰囲気を変えようとミーアが言う。
「ね、ねえ、ティアちゃん。それで『六騎士会議』はどうだったのかな~?」
ミーアの言葉に皆がはっとする。
確かにローゼンティアには『六騎士』の情報を貰うよう依頼している。その事を思い出したローゼンティが椅子に座り直して皆に言う。
「そうでしたわ。村比斗様があまりにも素敵過ぎてすっかり忘れておりましたが、皆様に今後の方針をお伝えせねばなりませんね」
ラスティールが尋ねる。
「魔王ガラッタ亡き後、今後どう動くのだ?」
ローゼンティが頷いてから話し始める。
「ええ、『六騎士』の次なる目標は、魔王ゾルドでございます」
「魔王、ゾルド……」
皆の顔が真剣になる。
「ええ、【知の魔王】と呼ばれるその名の通り知略に長けた魔王でございます。力ではガラッタには敵いませんが、その魔力はそれを補って余るほど。恐るべき存在でございます」
村比斗が尋ねる。
「なあ、魔王ってのは三体いるんだろ? 残りの一体ってのはどんな奴なんだ?」
皆の間に沈黙が広がる。ラスティールが頷きながら答える。
「村比斗、最後の魔王ってのはな、誰も知らぬのだ」
「誰も?」
「ああ、何せその魔王を見て生きて帰って者はおらぬ。遭った者は全て殺された」
「マジ、か……」
そう思うと怪我だけで逃げることができた先の魔王ガラッタが可愛いものに思えて来る。村比斗が尋ねる。
「そ、そんな奴とどうやって戦うんだ?」
ラスティールが答える。
「無論、お前とだ」
顔が青くなる村比斗。ラスティールが続けて言う。
「勇者とはな、村比斗。そのような敵がいると思うと力が出て来るんだ。心配は要らぬ」
「大丈夫ですぞ、兄貴!! 兄貴のような強い勇者と一緒ならば、魔王にだって負けやしねえ!!!」
事情を知る者以外からは完全に勘違いされている村比斗。ミーアが言う。
「じゃあ、当面は『六騎士』に合わせて魔王ゾルドに対象を絞るってことね?」
「ああ、それがいいだろう」
ラスティールが頷いて応える。ミーアが続けて村比斗に言う。
「ねえ、村比斗君」
「ん? なんだ?」
ミーアは嬉しそうに続ける。
「話は変わるんだけど、別邸に作っていた『按摩部屋』の飾り付けが完成したよ~、後で見に来てね~!!」
「按摩部屋? ああ、そうだったな……」
村比斗は先日まで住んでいた別邸に按摩部屋を作ったのを思い出した。内装などはミーアとシルフィーユが担当していた。ミーアが言う。
「最初のお客さんは、ラスティちゃん、ど~ぞっ!!」
指名されたラスティールが慌てて言う。
「い、いや、結構だ。そ、そのようなもの私に必要ない!!」
ミーアが言う。
「えー、いいじゃない。ラスティちゃん、魔王倒してお疲れでしょ~!!」
「だ、大丈夫だ。要らぬ、そのような……」
「なーんだ、お前。怖いんだろ?」
「なに?」
村比斗が馬鹿にしたような顔でラスティールに言う。
「どういう意味だ、村比斗」
ラスティールが真剣な顔で村比斗に言う。
「怖いんだろ? そう言う未知なものに対してよ」
「ふ、ふざけるな!! わ、私がなぜそのようなものを恐れる?」
「だったらやってみろよ、歓迎するぜ」
ラスティールはいやらしい笑みを浮かべる村比斗を見て直ぐに言う。
「要らぬ要らぬ、要らぬわ!! 私は……」
「でしたら、わたくしがお願いしようかしら」
その話を聞いていたローゼンティアが言う。
「『アンマ』とは何か存じませぬが、村比斗様にして頂けるのならばわたくしは何でも喜ばしくてよ」
「いけませぬ、ローゼンティア様。この後は王都で大切な会議が……」
すぐに口を挟むレザルトにローゼンティアが言う。
「大丈夫ですわ! あなた代わりに出て頂けますか? わたくしは病で行けぬと」
顔が赤く染まったラスティールが言う。
「ダメだ、ダメだ!! お前などには行かせぬ!! 村比斗、私が受けよう!!!」
顔を真っ赤にして立ち上がりラスティールが大声で言う。
こうして『按摩部屋』の記念すべき第一号のお客様が決まった。
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