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絶対不死世界エリュシオン  作者: 高森エニシ
第五章 最終決戦
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10話:主催より一言

 翌日は、パラディンの当てができたということで、セーレが今できる部分の編成をすると言って自室に籠っていった。

「シオンさん、チラシのデザイン変更したの作ってほしいんだけど」

「はーい。どうするの?」

「募集中のところに、現在の参加者記入してほしいなーって。それで、それを撒きに行こうかと。数字は今日の集計後で」

「承知。PCあれば一瞬なんだけど……。あー、トレスか切り貼りでいけるかな? ちょっと部屋で作業してくるね」

 俺が頼むと、シオンも自室に入っていく。大部屋は受付で人の出入りがあるから集中できないようだ。

 受付ではマリンとモカが愛想よくプレイヤーに受け答えしていて、たまに差し入れなんかももらっている。

「バルテルさん」

「ほいほい、掲示板の増設ね」

 俺が呼びかけると用件を言うまでもなくバルテルが答える。

「話が早い」

「既存の掲示板のサイズとか参考にするから、掲示板のとこ行ってくるね」

「あ。俺も行くよ。貼りかえるやつもあるし」

 掲示板の付近に行くと、やはり今日もプレイヤーがいて労いの言葉が飛んでくる。

「レオくん、これ上の方お願い」

 メジャーの先端をバルテルに渡されて、掲示板の一番高いところに当てる。

「こんなことならキャラメイクもうちょっとスリムにして背高くしておくんじゃったわい」

「スリムで背の高いドワーフかぁ……」

 そういうキャラメイクのプレイヤーもいないこともないが、ドワーフは基本背が低くずんぐりしていて、愛嬌のある好々爺といった雰囲気のプレイヤーが多い。

「よし、それじゃ……。その辺の店で作ろうか」

 素材さえあればどこでも作れるのは便利である。バルテルが定規を使って掲示板の絵を描いて、詳細を書き込んでいく。

「せっかくだから色赤くしたろ」

 しばらくするとバルテルが作成した設計図を使って製作を始める。

「バルテルさんも器用ですよね」

「DIY好きじゃからねー」

「何作ってたんです?」

「最後に作ったのは、庭に置くベンチ」

「ベンチの置ける庭があるって羨ましい」

「まぁ、土地いっぱいある田舎じゃから、都会とは認識ちがうよね。元の世界帰れたら遊びにおいでよ。うちは汽車だとちょっと遠いから車出すよ」

「汽車……? 走ってるんですね。バルテルさん北海道でしたっけ?」

「ああ、汽車はそっちでいう電車。そうそう北海道。色々案内するよ。帰ったら桜咲く頃かのう」

「そっか、北だとそれくらいなんだ」

「うん」

 雑談をしていると赤い木枠の掲示板ができあがったので、それを他の掲示板の横に並べて、プレイヤーから質問があった事項など新しい情報を貼っていく。

 少し離れたところから掲示板を眺めて、二人で「よし」と言ってギルドハウスに戻る。


 ギルドハウスの受付には人がまばらにいる。

「おかえりなさいませ、レオ様」

「ただいまー。どう?」

「順調ですね。こちらをセーレ様に渡してきてくださいませんか」

「はい」

 クッキーから紙の束を受け取って、セーレのいる部屋に行く。

「入るよー」

「……どうぞ」

 部屋に入るとセーレが机に向かってサラサラとペンを走らせている。

「これ、クッキーさんから」

 受け取った紙に目を通すと頷いて傍らに置いて、再びプレイヤーの名前とギルド名と受付番号を記入している。

 セーレは迷う素振りもなく、機械的に次から次へと処理をしていく。

 集中しているだろうし、邪魔せず部屋を出ようとすると呼び止められる。

「レオさん」

「何?」

「14時からの回のパーティー行きませんか」

「いやー、皆仕事してるのに……」

「参加者との交流と思って」

 セーレから発せられた言葉に耳を疑う。

「いや、俺は交流してもいいけど、お前の方は交流する気ないだろ!?」

「たまには狩りしないと戦い方忘れると思います」

「お前が忘れるとは思えないし、今日じゃなくてもいいだろ……」

「……この作業、思ったより辛いんです。気分転換したい」

 眉をハの字にさせて言ってくるセーレに、笑いそうになったが平静を装う。

「なるほど。それが本心ね。じゃあ、マリンさんからOKでたらで」


 セーレの件をマリンに伝えるとあっさり許可が出て、セーレと二人で野良に交じって久々に狩りに出かけた。同じパーティーのメンバーは最初こそセーレにビビりまくっていたが、最終的には盛り上がって狩場を一緒に駆け巡った。


 各々仕事をこなして、夕会になって討伐参加者の数字が更新される。

「なんと、本日で討伐参加希望者が500名を超えました」

 皆が、パチパチと拍手する。

「90以上のプレイヤーこんなにいたのか」

 と思ったものの、ただのゲームだった頃の200人規模の竜討伐が毎週複数のグループで行われていたのだから、今回参加する人がそれくらいはいてもおかしくはない。

「そんなに人数いて、身動きとれるかな?」

 マリンが首を傾げる。

「縮尺変わってて、だいぶ広かったから問題ないと思う」

「そっかー」

「というわけで、レオさんこれ」

 シオンから、頼んだチラシとは別のチラシを渡される。

 内容は『フレイリッグ討伐参加者500人突破 大聖堂前にて正午に主催より一言』と書かれていた。

「おう……」

 主催より一言という言葉に、しばし目を閉じてから頷く。



 翌日、正午を知らせる鐘が鳴る。

 大聖堂前にウィンダイムに乗って降り立つと、何百人かのプレイヤーが集まっていた。

 一人では不安なのでセーレにも同行してもらっている。

 シャノワールからもらったマイクのスイッチをオンにして俺が話始める。

「フレイリッグ討伐主催のレオンハルトです。本日は、お集りいただきありがとうございます」

 自分ではマイクの効果はイマイチわからないが、それなりに遠くまで声が届いているような気はする。

「さて、すでにご存じの方も多いかとは思いますが、昨日時点でフレイリッグの討伐参加者が500名を超え、製作支援者も800名を超えました。おかげさまで各種準備は滞りなく進んでおります。まだ、討伐まで期間はありますが、必ず成功させましょう!」

 俺がそう言うと、歓声が沸く。

 励ましの言葉や、リアルに帰ろうという発言が沸いたあとで、いつの間にか言葉の種類が変化していく。

「主催―! 歌ってー!」

「いえ、今日はそういう場ではありませんので……」

「照れてるかわいー!」

 これはたぶんアンネリーゼの声だ。

「歌ってー!」

 皆が囃し立てるのに困って、セーレの方を見る。

「ちょっと、セーレ。どうにか沈めてくれない?」

「レオさん、マイク入ったままですよ」

 セーレがマイクを指で俺のマイクを指さしながら、そして、わざわざ俺のマイクに自分の声を拾わせるように頭を寄せて言う。

「あーっ!」

「かわいー!」

 アンネリーゼとその周囲にいたプレイヤーが可愛いコールをしてくる。聞き間違えでなければアキレウスの声も混じっていた気がする。

 ああ、頑張って真面目なイメージを作って、討伐準備を進めていたというのに……。

「えー、今日のところは、こちらのセーレさんのバイオリンでご勘弁願えないでしょうか」

 俺がそう言うとセーレがマイクを装着してオンにする。

「却下します。伴奏しますね」

 セーレがギターを取り出す。

「なんでギター持ってるの……」

「返し忘れていまして」

 そう言うと、セーレが俺のお気に入り曲を奏でだしたので、渋々歌い始める。



「辛い」

 ギルドハウスに帰って項垂れていると、顛末をセーレから聞いたマリンとモカとエリシアが爆笑している。

「笑ってないで、受付対応して……!」

「あはは、今人いないしー。って、誰か来たや」

「私、対応するねー」

 笑い転げているマリンに変わってシオンが対応していたが、シオンもプレイヤーが帰った直後に笑いだす。

「フラスタの差し入れ届いた。レオンハルト様へだってー」

 そう言いながら、シオンが大きな花の飾りを受付の横に置く。

「どういうことなの……。俺は真面目に主催をしていたかったのに……」

「親しみやすい印象がついてよかったのではないですか?」

 他の皆と違って、落ち着いた表情でセーレが言う。

「お前が歌えばよかったのに」

「オレが目立っても仕方ないでしょう」

 まぁ、セーレは何もしなくても目立つし、俺よりよほどカリスマもあるだろうから、確かに目立つ必要はないだろうが、それでも変わってほしかった。


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