11話:棲家へと続く道
募集開始から日数が経過すると、受付も落ち着いてきたので、一度ベレリヤの方も見にウィンダイムで飛び立つ。
ターハイズの方は、まもなく全ての船が完成するとのことで、そちらは気にせずともよさそうだ。
以前、ターハイズで船造りやクラーケン退治に協力してくれたミミが、マリニアンのところまで行ってマリニアンの恩寵について、再度確認しに行ってくれたらしい。しかし、フレイリッグに効果があるかどうかは、はぐらかされて終わったと手紙にあった。効かないという情報が出なかっただけでも、よしとしよう。
今日は、たまには外に出たいというのでマリンと一緒だ。
「わっ、いっぱい家建ってる」
フレイリッグの棲家のある山の麓の平原には木製のコテージがたくさん並んでいる。
「降りる?」
「うん、見てみたな」
一つだけ周囲にプレイヤーが多いコテージがあったので、その付近に降り立つ。
コテージの前に旗や机が置かれているので、本部なのかもしれない。
「こんにちはー」
「こんにちは。あっ、主催~」
俺に気付いたプレイヤーが笑顔を向けてくる。
「一応報告頂いていますけど、進捗どうですか? 困ってることとか」
「順調ですよー。今はまだカーリスを宿にしている人が多いから、コテージ余り気味かな。困っているのは人の振り分けですね~。四人一組にして、男女で分けていたんですけど……。見た目と中身が一致しているわけでもないので……」
「ああ……」
「まぁ、余裕あるので一回り小さい一人用のコテージもそのうち作って、希望者はそっちに移動してもらおうかなーって話しています」
「そっか、ありがとう」
「おーい、レオンー!」
聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、ミズキが馬に乗ってこちらに走ってくる。
「よう。調子どう?」
「うん。元気元気、モカは一緒じゃないんだ?」
「カーリスでお留守番」
「レオンはいっつもモカとセットなイメージあったけどな~。マリンさんに浮気したの?」
「浮気も何も元からセットじゃないって」
「へへっ、まー。どっちかっていうとモカとは兄妹か親子みたいな感じだよな」
確かに面倒は見ているが、親子はさすがにやめて欲しい。
「親子はやめろって。そっちこそ今日はサシャと一緒じゃないの?」
「サシャは、向こうで伐採の手伝いしてるよ。俺もさっきまでそっちいたの」
「そういえば、木材は現地調達か……」
「切っても切っても生えてくるから、なくなる心配なくていいよ」
「飽きない?」
「喋りながらやってるからへーき。リアルと違って重労働ってほどじゃないし」
ミズキはニコニコ明るく笑っているので、本当に苦ではないのだろう。
「ならいいけど」
「んじゃ、また夕方に報告にいくね~」
「うん。ありがとう」
馬に乗って去っていくミズキを見送って俺たちもウィンダイムに乗る。
「あんまり近づくとフレイリッグに気づかれちゃうから、上の方にはいかないよ」
「うん。ベレリヤまでならいける?」
「そこなら大丈夫―」
馬で登ると時間のかかる山道も、ウィンダイムにかかれば一瞬だ。
ベレリヤの街中を歩いていたプレイヤーは、ウィンダイムの姿に一瞬驚いたが、俺たちが乗っていると気付くと手を振ってくる。
「こんにちはー。イーリアスの人いませんか?」
「あっちの宿の一階に誰かいると思いますよー」
プレイヤーが指したのは、以前泊った宿だ。
「どうも」
宿に入るとメロンが食堂で座っていて、茶菓子を片手にお茶を飲んでいる。
「あっ、メロンちゃーん」
「あら、こんにちは~」
俺たちが挨拶をするとメロンが嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「今日はどうされたのですか?」
「様子見に来ただけ。何か困ってることとかない?」
「特に報告は上がっていませんねぇ……」
「メロンちゃんは、ここでお留守番?」
「えへへー……。土木作業が向いてなさすぎて現地を首になって事務係に……」
「うん、向いてなさそうだよな」
メロンには、なんとなくそんなイメージがある。
「ひどいですぅ。あっ、お時間あるようでしたら温泉入っていかれては~? 昼間なら部屋空いてますよ」
「へー、温泉とかあるんだ」
マリンが興味を持った様子で言う。
「はい。以前、レオさまと露天風呂ご一緒しました~」
「えっ、レオくんメロンちゃんと一緒に入ったの?」
「うん、入ったけど……?」
「かーっ! 奥手そうな顔してそ~ゆ~!」
「えっ、えええっ誤解誤解!」
「はわわ、マリンさま誤解です! 水着で入って、セレさまも一緒でした!」
俺とメロンが慌てて言い訳をする。
「……なんだー。つまんなーい」
「マリンさんは俺にどうしてほしいの……」
「へへへっ。まー、温泉も気にはなるけど、道どうなってるか見に行こうか」
「うん」
メロンに挨拶して、フレイリッグの棲家へと続く洞窟に向かう。
洞窟の中は様変わりしていた。
分岐していた道の不正解の道は木の板で塞がれていたし、足元は歩きやすいように整えられていた。通路にはランプが吊るされていて明るい。
奥まで入っていくと、大きなフロアにプレイヤーが十数名いるのが見え、その横には船から持ってきた大砲が一門置かれている。フロアの奥には階段が作られ、以前通った穴へと続いていて崩れないように補強されていた。
「もう完成したのかな……?」
マリンが上を見上げて首を傾げている。
「お疲れ様です」
俺たちを見つけたミストラルが歩いてくる。
「お疲れ様です。もう作業終わりですか?」
「いえ、もう少し足場足して、大砲を運ぶ昇降機を設置したら終わりです。昇降機のパーツはできているので明日組み立てて、動作確認して問題なければ終わりですね」
「こちら完全にお任せしてしまっていて、すみません。ありがとうございます」
「皆さん、それなりに楽しんでいるようなので問題ないですよ」
ミストラルがにこりと笑う。ミストラルはずいぶんと朗らかな雰囲気になったというか、こちらが素なのだろう。
「そういえば、今日はセーレさんいらっしゃらないのですね」
「セーレじゃなくて、ごめんね~」
マリンが口を尖らせて言う。
「い、いえ……。そういう意味では……」
ミストラルが慌てて手を振る。
「みっちゃん、セーレのこと好きだもんねぇ」
いつの間にか呼び方が愛称になっている。
「……まぁ、好きは好きですけど」
「やっぱ好きだったんだ……」
俺が言うと、ミストラルが困った顔をする。
「断っておきますけど、ラブじゃなくてライクの方ですよ。だいたい僕は男ですし。ああ、でもセーレさんの元の性別は知らないから……まぁ、どっちでもいいです。とりあえず、セーレさんに関しては推し……? みたいな感じです。強いし、戦闘センスいいし見ていると格好いいなって」
聞いていたマリンがむせる。
「……なるほど」
「セーレさん、ゲームの時のGvGトーナメントの時の動き最高で、その頃からすごいなって。ヴェンジェンスからのグラゼロが鮮やかで……。戦争の時もどこに目ついてるんだって動きで、攻撃避けながらこっち突っ込んできて殲滅していくし、クラーケンの時も全体見つつあの動きとかすごいですよね。PvPも、銃なしでもう一回対戦してみたいです」
楽しそうにミストラルが話す。この人もなかなか戦闘バカのようだ。この手の話を振ればセーレも楽しく話をすると思うのだが、ミストラルはセーレの前だと緊張して硬くなってしまうのだろう。
「そういえば、昨日セーレさんがギター弾いていたらしいじゃないですか。次やる時は呼んでくださいよ」
「あれは突発だったから……」
「みっさーん。鉄鉱石くださーい」
奥から犬まっしぐらの声がする。
「あ、はい。それではまた」
ミストラルは俺たちに挨拶をすると、奥に走って行く。
洞窟を出て、すぅっと息を吸い込む。冷たい空気が美味しい。
「いやー、みっちゃんはセーレの性別知ってるのかと思ってたからびっくりしたわ。まぁ、でもアキさんもメロンちゃんも、さすがに他の人にはバラさないか……」
「俺はミストラルさん女性なのかと思ってたわ……。セーレにバレンタインチョコ渡してたし」
わからないものである。
「ああ、そうなんだ」
「しかし、マリンさんミストラルさんとだいぶ仲良くなってたね。いつの間に?」
「戦争とかクラーケンで同じ編成だったからね。弓仲間」
そういえばそうだ。パラディンは一つのパーティにだいたい一人しか枠がないが、アタッカーは遠距離職なら遠距離職でまとめられることが多い。
「同職いいよね」
「レオくんも、アキさんとだいぶ仲良くなったよね」
「そうだな~。まだ少し距離はあるような気もするけど、確かに仲良くなったな」
「うんうん。さて、確認も終わったし帰ろっか」




