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雨がまた少し、強くなっていた。傘を開く。
二人は再び背を向け、帰っていく。マイがいたので吸えなかった煙草に、火を点けた。なんとなく目が離せずに、二人の後ろ姿を見つめていた。
……涼介は赤レンジャーと、まるで俺をヒーローみたいに言う。
だが、違う。
確かに俺だって、お前と同じ状況になったら、マイを拾っただろう。仕事をしながら家政婦を雇ったりして、なんとか育てようとするだろう。でも、もし仕事で帰れないことが多くなったら、もし出世に膨大な勉強時間が必要になったら。
たぶん俺は、マイを諦める。
施設に預け、援助をしたりすることで、自分の心を慰めるんだろう。そもそも、経済的に余裕がなかったら、拾いもしない。
お前みたいに、迷わず助けるなんてできねぇよ。自分とマイを天秤にかけちまう。
歩いていた涼介がふいに立ち止まって、首を少しこちらに回した。目を向けて『またね』と言っていた。
「またなー! 二人とも!」手を振る。
「またねー! あきらおじちゃん!」マイが手を振り返す。
「お兄ちゃんだっつってんだろが!」
さすがにもう遠かったので、怒鳴ってだけみせた。
マイは笑っていた。楽しんでいたのは、三人ともだ。
マイが涼介のシャツの裾を取って、今度こそ二人は、二人の家へと帰っていった。
雨は傘と涼介を濡らし、雲の切れ間から天使の梯子が、二人の後ろ姿を輝かせていた。
……どうしてそんなに迷わねぇ。どうしてそんな風に決められる? 敵わねぇって感情は、俺がお前に持ってんだ。
遠くに視線をやると、他にも一つ、大きな梯子が下りていた。
俺も、行こう。火を地面で押し消し、吸殻を携帯灰皿に入れた。
駅の方へと足を向け、小さく、笑った。つぶやいてみる。
「よく似合ってるぜ、ヒーロー」
その赤い傘はお前にこそ、お前だけに相応しい。
終わり
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