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妖狐お婆ちゃん  作者: 海蛙
9/16

6.縫治嫁入り話? (2016)

術者の目であり鼻であり盾である結界、狐塚の屋敷に設置された結界が何かに反応し、珠詠に情報が送られる。

夕空から橙が消え始め、空色が滅紫(めっし)掛かり始めた時の事だった。

「む、縫治か。」

今日は偶然縫治と休暇が重なっており、縫治が今日狐塚邸に来ることになっていた。

珠詠が腰を上げるまでも無く、武義が縫治を迎えていた。

「縫治姉! 久しぶりだなぁ!」

「武義、少し見ない間にこんなに逞しくなっちゃってぇ、お姉ちゃん嬉しいなぁんもう…お婿に欲しいなぁ。」

顕証(けんしょう)な程に武義にデレデレの縫治、小さな頃から接してくる武義は実の弟の様で一人っ子の縫治にはとても大切な存在になっていた。

仕事だけでなく、親から持ち掛けられる店の跡継ぎ話でストレスもプレッシャーもガンガン掛かっている彼女にとって武義こそが心の支えであり癒し、気の薬なのだ。

「縫治よ、随分と孫に惚の字じゃな。懐かしいのう…儂とアイツが衝動的に会いたくなったあの時を思い出す。」

珠詠の声でぴょんこと驚き飛び上がる縫治、焦りが顔に出ている。

「こ、こんばんはぁ~白狐様ぁ…えっとそのえっとえっとえっと…あははぁ。」

あまり見せない一面を珠詠に見られて動揺が隠せない縫治。

「もっと立派な立場、そうじゃな…玄狐(げんこ)ぐらいになったら孫をくれてやっても良いぞ? 縫治。」

「そんなぁ…私は早く武義が欲しいのに…」

「なぁ、婆ちゃんも縫治姉も何を言っているんだ…。」



「縫治ちゃん、うちの息子は遠慮なく婿に貰ってくれて良いのよ、武義はこの性格だから今の時代じゃ女日照りなの。貴方だけが頼りよ。」

屋敷の居間で嬉しそうに先ほどの話題に食いつく辰詠、武義はずっと苦笑いのままである。

「ええ! 任せてください辰詠さん! 私が武義君と一緒に一家を繁栄させます!!」

「ちょっと待たんかえ!? 話を勝手に進めすぎじゃ、落ち着かぬか! 儂ゃまだ許可しとらんぞ、許諾しとらんぞ!! 儂の愛しの孫を勝手に持ってゆくんじゃない!」

そう言ってばっと武義の腕にしがみ付く珠詠。このように武義が自分の下から離れそうな話を聴くと必死に抵抗するので、溺愛振りが窺える。

「落ち着いてくれ婆ちゃん、俺はまだ何処にも行かないって…。」

「本当か!? まだお婆ちゃんの下にいてくれるのじゃな?!」

安堵する珠詠、何かに気付いた縫治。

「はっ、そういえば狐は嫁入りするもの…じゃあ私が嫁入りして狐塚になれば…毎日武義を弄りまわし放題…!?」

「はぁ!? 内側から侵蝕する気じゃな!? やらせぬぞ泥棒猫め! 狐じゃけれど!! まあ茶番はここまでとして…嫁に来たければ、武義がもう少し成長してからにするがよい、

まだ若すぎるのじゃ。お主になら武義を任せられる気がするからの。」

「縫治姉が嫁に、か…まあ相応の男になれるように頑張るよ、うん…。」

空返事のように返答する武義。



「あ、そうだ武義、今度祭りがこの町であるじゃない。一緒に行かない?」

「おう、良いよ。久しぶりに一緒に行きたいと俺も思ってたところだよ。」

縫治はガッツポーズをとらずにはいられなかった。


・・・・・

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