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「あー!アリス、わかっちゃった!ベルン会長ってばぁ、副会長さんが好きなんでしょぉ?でもぉ、副会長さんは、そっちのイケメンの……エドガーさん?とつきあっているって思っていたから、ダンスパーティに反対してたんでしょ!ね、ね、あたりぃ?」


空気を読むって、なんだっけ。


甲高いアリスちゃんの声が生徒会室に響き渡り、つられて全員の視線がベルン会長に向く。

ベルン会長は、みるみる真っ赤になった。


「そ、そうだ!」


やけになったかのように、ベルン会長がさけぶ。


「そうだよ!俺は、グレイシアが好きなんだよ!でもダンスも誘えないヘタレだよっ!くっそ、どうせ俺はアントワール伯爵家のできそこないだよ!」


「やーだー!やっぱり、あたりなんだぁ。好きな子をダンスも誘えないって、会長ってばヘタレすぎるー」


なぜか嬉しそうに、アリスちゃんが手をたたく。


もしかすると、さっきの会長の却下を恨んでのことなのだろうか。

会長にダメージを与えるためだとしたら、大成功だ。


ベルン会長は赤かった顔色を青に変えて、目には涙が浮かべている。

そんな会長を見たアリスちゃんはますます嬉しそうに「やだー、会長ってば、泣きそう」とはやしたてる。

そんなアリスちゃんを見て、アリスちゃんの付き添いの男子たちはほのぼのとした笑みをうかべている。


なんだ、このカオス。


「グレイシア」


あっけにとられて見ていると、エドガーに肩を押された。


「さすがにベルン会長がかわいそうだよ。……ちゃんと言ってあげたら?」


「あー……、うん」


わたし、エドガーにも自分の気持ちを言ったことなんてないんだけどな。

さすが実力で選ばれた生徒会メンバー。

それか、わたしがわかりやすいだけなのかな。


ま、本人にはぜんぜん気づかれていなかったみたいだけどね。


わたしは会長の前に歩いて行って、その手をとる。

そしてその手に口づけて、尋ねた。


「ねぇ、ベルン会長。クリスマス・パーティが実現したら、わたしと踊ってくれますか?」


会長は、信じられないとばかりに目を大きく見開いて、それからこくんとうなずいた。

やれやれ。


というか、この人、ほんとうに私情でクリスマス・パーティに反対していたのか。

アリスちゃんたちが帰ったら、エドガーと一緒にお説教しないとだな。

生徒会長って立場をなんだとおもっているんだ。


アントワール学院で企画を通せるか否かで、生徒の人生が変わることもあるんだぞ。

特にアリスちゃんみたいな平民の子にとっては、企画が通るってのはすごいチャンスなんだ。

……まぁ、アリスちゃんなら、企画うんぬん関係なくはいあがってきそうだけど。


あ、考えると腹がたってきた。

わたしは、目の前で嬉しそうに顔がほころぶのをごまかそうと赤い顔でうつむいている会長を見ながら、自分からダンスに誘うなんて失敗したかもと思う。


だけど。


「えええええええー、信じられない。副会長さん、会長でいいんですかぁ?ヘタレなのにぃ?」


アリスちゃんが唇をとがらせて口をはさんできて、ベルン会長がびくっと震えたのを見ると、仕方ないかとあきらめの気分になる。

わたしは肩をすくめて応えた。


「自分でも不思議だけど、この人のことが好きなんだ」


ヘタレで、駄犬で、残念な男だけどね。

そっと心の中でつけ加える。


まぁ、とはいえ。

わたしの言葉をきいて、嬉しそうに顔をぐしゃぐしゃにさせて喜ぶ会長がかわいいので、つまりはそういうことなんだろう。


整った容姿にときめく気持ちは一瞬で霧散しても、駄犬な中身に感じる愛しさは積もっていく。

自分でも不本意だけど、恋とはそんなものなのだろう。





ちなみに、1か月後。

アリスちゃんの企画したクリスマス・パーティは実現し、わたしは会長と踊った。


ダンスを猛練習したという会長とのダンスは、なかなか楽しいものだった。

そんでもって、今は会長とお付き合いをしている。


ときおりエドガーに無駄なやきもちをやくベルン会長は、ヘタレで駄犬で、とてもかわいい。

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