事故
日差しによって焼かれる夏の日の事。
とある青年は仕事に精を出していた。
御年23歳、恋人もなく家族もいない天涯孤独な身の上。
しかし家族の遺産によって大学を卒業するに至ったが、人のつながりというものは希薄だった。
青年が家族を失ったのは彼が15歳の頃だ。
家族旅行の最中、青年の父が運転していた車が事故にあった。
その時運よく青年は生き延びたが、それ以来周囲からは腫物を扱うように接されるようになった。
それからだろう、彼が物語の世界にのめりこむようになったのは。
いつかゲームの主人公のように信頼できる仲間がほしい。
いつか漫画の主人公のように笑いあえる友がほしい。
いつかドラマのように支えあえる恋人がほしい。
物語の中には彼が望むすべてが存在した。
それはただひたすらに彼を魅了した。
高校は教員たちの計らいで出席をある程度免除されることとなった。
その分試験では一定以上の点数を取る必要があったため、勉学を疎かにすることはなかったのが救いだろう。
そうして高校を卒業した後、近隣の大学へ進学。
授業中であろうと本やゲームを手放さない青年に友人ができることはなかった。
そして大学も卒業に近づいた頃。
青年は就職先を探さなければならなくなった。
しかし人付き合いを疎かにしていた青年は、100を超える企業から【お祈り】と呼ばれる手紙を受け取っていた。
それは『残念ながらあなたを雇うことはできませんが良い企業が見つかることをお祈りしています』というものだ。
そうしているうちに卒業も差し迫ったころ。
ある工場の面接に合格した。
そこからはとんとん拍子で話が進み、そうして就職した彼を待っていたのは停滞だった。
悪い企業ではない、工場という仕事柄残業はある。
しかしその分手当はつく上に週2回の休みは保障されている。
さらに年に2回賞与が与えられた。
上司や同僚との付き合いもそこそこにしていた為自身の評判も悪くはなかった。
そうして入社から1年、彼は物語のように劇的でなくとも友達というものは良いものだと考えを改めるようになった。
そして、事件は始まる。
入社二年目の夏、工場内というものは空調が効きにくい。
それが災いしたのだろう。
青年はふらりとその場に倒れこんでしまった。
周囲の者も異変に気付いたが、旧式の機会はそんな事にはお構いなく製品を運び続ける。
そして運悪く、青年が倒れた場所にもそれは置かれた。
それは何の因果か青年の父が運転していた自動車の後継機のエンジンだった。




