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4:LUK

「あなたはそれでいいんですか」

女は最後に意気消沈した声で訊ねた。俺は黙って頷く。


あの日、俺はパーティーのメンバーたちを悲惨な死に追いやった。のうのうと生きていることは許されない。

このデスゲームは絶対にクリアされなければならない。そして罪を償わせるのだ。


「鉄血さんが納得してるなら俺たちはそれでいいっす。それで俺たちは何をすればいいんすか」

再び、魔術師のなかから質問が飛ぶ。


「魔術師は二班に分かれてもらう。ハンターと組んだ奴はエンカウントと同時にアタック強化の 支援魔法(バフ)をかけてくれ。残りのメンバーは魔法による後方射撃だ。とにかく撃ちまくってくれ。ハンターはバフをもらったらハイドアタックで攻撃。少しでも命中率が上がるように、後ろと側面に回って叩くんだ」


謙信はほとんどの攻撃が回避されると見て、とにかく命中率を重視する作戦を選択したようだ。

支援魔法担当のいわゆるバッファーも後から攻撃に参加するから黒魔法×11、ハンターの命中率上昇の攻撃スキル ハイドアタック×6。

合計17発にも及ぶ集中砲火だ。仮に、こちらの命中率が50%だとしても7,8発の攻撃は当たることになる。

それだけ喰らえば、かなりのダメージになるだろう。


これなら殺れそうだな、と誰かが呟くのが聞こえた。話を聞いていたメンバーたちも次々と賛同を示す。

作戦は固まった。あとは実行に移すだけだ。




作戦会議が終了すると、何人かが俺に握手を求めてきた。

別に死ぬと決まったわけじゃないのだが、なかには涙ぐんでいる奴もいて、どうにも居心地がわるい。


さっさと退散しようと出口の方へ足を向けたとき、一人の女が俺の前にやってきて行く手を塞いだ。

見れば、さっきの作戦会議中に俺のことで謙信に食い下がっていた女だった。


現実では滅多にお目にかかれないような美少女だ。こんなときにリアルのことを考えるほど、俺も野暮ではないつもりだ。

彼女はサヤカというらしい。

「LUKはいくつですか?」

サヤカが訊いてくる。


LUKはゲームシステム上の運の良さを表すステータスで、状態異常のかかりやすさや、アイテムのドロップ率に関わってくる。

攻撃力や防御力に直接関係する数値ではないが、レアスキルやレアアイテムの獲得を目指すプレイヤーにとっては、無視できない重要なステータスだ。


俺はメニュー画面を開いて、自分のステータスを呼び出してみた。

STR、VITの値が高く、AGI及びINTは全ジョブ中最低ランク、残念ながらLUKにも恵まれていないようだ。

メイキング時にもらえるボーナスポイントも全部STRにつぎ込んでいたのが災いした。


B版で即死特攻を保有していた死霊の場合、即死攻撃が発生率は20%くらいだったが、Bテスト時の敵のデータはまるで参考にならない。


「ラッキー7だ。いいことがありそうだろ」

敵のステータスは総合的にかなり高く設定されている。相対的にLUK値にもかなりの開きがあるとみて間違いはないはずだ。30%は超えてくるだろうか。

俺は内心の恐れを表には出さず、冗談を言ってみたつもりだが、サヤカの表情は依然として硬いままだ。


「トレードウィンドウを開いてくれませんか」

言われた通りにすると、サヤカは俺のアイテムボックスに【幸運のお守り】というアイテムを送ってきた。


「これ、気休めにしかならないでしょうけど」

装備品らしい。まだ誰もクエストをこなしていないのに持っているということは、キャラメイキング時にランダムを選択するともらえるギフトアイテムだろうか。もしかすると序盤で役立つアイテムを手に入れたやつもいるかもしれない。


サヤカに促されるまま、首飾の空きスロットに装備してみると、LUKが3上昇した。

効果は微々たるものだが、これから行う作戦のことを考えれば、力強い励みになる。

「ありがとう、もらっとくよ」

「一応レアなんですから、後でちゃんと返してもらいます。絶対なくさないでください」

サヤカは言った。


現実と違って、MMOで物をなくすのは死んだときだけだ。

つまり、死ぬなということなのだろう。

俺は彼女の気遣いに感謝するとともに、もしもの時には、このお守りをルート(死体からアイテムを剥ぎ取る犯罪行為)してもらえるよう、ハンター達に頼んでおくことにした。


サヤカと別れたあと、装備したままのお守りをこっそり確かめてみた。


赤い布袋に金糸で『開運招福』と刺繍されている。惜しいことに、縁結びの御利益はないらしい。




PKを行うまでもうちょっとかかります。

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