おまけの俺、斥候にされる
「ダルガス?」
声をかけるが、応答はない。
視界が白く弾け、足元の感覚が消えた。
次に気づいたとき──
俺は、石造りの神殿のような場所に立っていた。
空気は冷たい。
天井には巨大な魔法陣が淡く光っている。
「……ここ、どこだ?」
混乱していると、
目の前に“それ”が現れた。
黒い霧をまとい、
人の形をしているようで、していない。
声が、直接頭の中に響く。
『よく来たな、人間』
『我はカイトリア──この世界を導く神である』
(……神?)
状況が飲み込めないまま、
俺は立ち尽くすしかなかった。
カイトリアは続ける。
『本来、勇者召喚の儀で呼ばれるのは“勇者”と、それを支える者のみ』
『だが……お前は巻き込まれたようだな』
(巻き込まれた……?)
『安心するがいい』
『お前にも“役割”は与えてやろう』
黒い霧が胸に触れた瞬間、
冷たい何かが体の奥に流れ込んできた。
『──斥候のジョブだ』
「……斥候?」
『勇者の影となり、敵を探り、道を切り開く者』
『お前にはそれで十分だろう』
(十分って……勝手に決めるなよ)
『これでよい』
『勇者のために働け』
『それが、お前がこの世界に存在する価値だ』
(……価値?)
黒い霧の世界が、再び光に包まれる。
――次の瞬間。
目の前に広がっていたのは、巨大な大広間だった。
高い天井。
煌びやかなシャンデリア。
壁際には甲冑姿の兵士たちが並ぶ。
その中央。
一段高い玉座の前に立つのは、気品ある女性。
――王女、か。
「ようこそ。よびかけに応えてありがとう、勇者の皆様」
優雅に一礼する。
「私はエルディア王国第一王女、アリア=エルディア」
周囲の高校生たちがざわつく。
「なんだこれ……本当に異世界転移ってやつか?」
「うそ、マジで勇者召喚……?」
その中で一人、堂々と前に出る男がいた。
「俺は勇者を拝命した神谷颯太だ」
少し照れくさそうに続ける。
「こういう世界じゃ名前でいいんだよな。ソウタと呼んでくれ」
にやりと笑う。
「俺が邪神なんて蹴散らしてやる」
(……ノリが軽いな)
心の中でツッコミを入れつつ、周囲を見る。
どうやら、あの時光に包まれた連中も一緒らしい。
王女が続ける。
「今回の召喚では、勇者様に聖女、聖騎士、賢者の四名が……」
一瞬、言葉を止める。
「あら、五名おられるわね。何かの手違いかしら」
その視線が、こちらに向く。
(……俺か)
「みなさま、“ステータスオープン”と唱えてください」
「カイトリア様からの加護をご覧いただけます」
颯太がすぐに反応する。
「ステータスオープン!」
光の板が浮かび上がる。
〈ソウタ 勇者〉
「おお、マジで出た……!」
続いて他の三人も声を上げる。
〈ヒヨリ 聖女〉
〈ミコト 聖騎士〉
〈ユウマ 賢者〉
そして――
全員の視線が、俺に集まった。
(……え、俺もやるのか?)




