おまけの俺、獣人の連携に驚く
廃坑の奥は、不気味なほど静かだった。
兵士の気配はない。
聞こえるのは、自分たちの足音と、時折落ちる水滴の音だけ。
「現在地はこのあたりのはずだ……そろそろ右に分岐がある」
俺は《虚無視界》で周囲を探りながら進む。
「……あった。ここを右に──」
その時だった。
かすかな音が、奥の暗闇から響いた。
「……何かいる。一旦止まれ」
ロウガの低い声が飛ぶ。
「ハチヤ、コマチは前方警戒。シロガネは後方だ」
「ロウガさま、了解」
三人が音もなく散開する。
その動きに一切の無駄はない。
(……さすが、獣人の戦闘部隊だな)
俺はリュミナを背負ったまま、気配を探る。
(……いるな)
次の瞬間――
低く唸る声が、通路の奥から響いた。
やがて、闇の中から“それ”が姿を現す。
「……でかいな」
岩のような甲殻をまとった巨大なダンゴムシ。
ジャイアントインセクトだ。
ロウガが舌打ちする。
「ちっ、こいつか……行くぞ、ハチヤ!」
「ハッ!」
二人が同時に地面を蹴った。
コマチは俺たちの前に回り込み、守りを固める。
シロガネは後方を警戒しつつ、すぐ動ける位置を取る。
(連携が完成されてるな……)
ロウガの拳が振り抜かれる。
その瞬間、右腕が膨れ上がり、獣の爪のように変化した。
――ガキンッ!!
金属を打ち付けたような硬い音。
ロウガの身体が弾き返される。
「かってぇな……! ハチヤ!」
「任せろ!」
ハチヤが一気に踏み込む。
ロウガの一撃でできた“わずかなへこみ”へ一直線。
露出した甲殻の隙間に――
短刀を突き立てた。
その瞬間。
刃が青白く輝いた。
「凍れ」
低い声と同時に、刺した箇所から氷が広がる。
一瞬で、全身が凍りついた。
ジャイアントインセクトは震えたまま――動かなくなった。
静寂。
「……終わったな」
ロウガがゆっくり立ち上がる。
そしてハチヤの頭を、わしゃわしゃと撫でた。
「いい連携だ」
ハチヤは緊張が解けたように息を吐く。
「……ありがとうございます」
「すごいな……」
思わず口から漏れた。
ロウガは鼻を鳴らす。
「俺たち犬族は群れで狩る。こういう実戦で連携を磨くんだ」
「今回の旅は、いい訓練になる」
コマチが凍った魔物を見て言う。
「これ、どうします?」
「今は時間が惜しい。奥の通路に捨てておけ。帰りに溜まってたら面倒だ」
「了解。シロガネ、手伝って」
「任せろ」
二人が魔物を運び去る。
その間、俺は背中のリュミナに声をかけた。
「大丈夫か?」
「うん♪ シュウイチに乗ってるだけだから平気だよ」
(……ほんと、強いなこの子)
「疲れたらすぐ言えよ」
「はーい!」
その明るい声が、
廃坑の冷たい空気を、少しだけ和らげた。




