おまけの俺、決戦直前の静かなひとときを過ごす
作戦決行当日。
夕刻前に配置につくため、俺たちは早めにアジトを出発した。
俺はリュミナとひよりとともに、森で待機する役目だ。
美琴も直前まで合流してくれるらしく、
三人で森の入口付近に腰を下ろしていた。
一方で──悠真は少し遅れて出発する予定だ。
今はイリアと何やら話し込んでいるらしく、
少し離れた場所に、二人の姿が見える。
(……あれはあれで青春だな)
そんなことを思っていると、隣でリュミナが
胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
「なんか……ドキドキしてきたよ」
「今からそれだと、持たないぞ」
軽くそう言って、頭をぽんと撫でる。
「えへへ……」
力の抜けた笑みがこぼれる。
その様子を見ていた美琴とひよりが、なぜかじっとこちらを見ていた。
(……なんだ、その目は)
「お前たちも撫でてほしいのか?」
ぴたり、と二人の動きが止まり──
次の瞬間、そろって頬を膨らませた。
「リュミナちゃんばっかり、ずるいです!」
「ずるいです!」
「はいはい」
苦笑しながら、二人の頭をわしゃっと撫でる。
「ちょ、叔父さん!」
「髪、乱れちゃう……!」
「少しは落ち着いたか?」
「……はい」
「……はい」
揃って頷く二人。
その横で、リュミナがじーっとこちらを見ていた。
「……むぅ」
ひよりが困ったように笑う。
「リュミナちゃん、ごめんね。
でも……ちょっと羨ましかったの」
「……わかる」
美琴も小さく頷く。
リュミナは少しだけ考えてから──
「……むぅ……まあ、いいよ」
と、ふてくされたように顔をそらした。
(……ほんと、わかりやすいな)
「ほら、機嫌直せ」
そう言って、そっと肩を引き寄せる。
「っ……!」
一瞬、息を呑む気配。
そして──
「きゃっ……!」
小さく声を上げて、顔を真っ赤にする。
その様子を見ていた美琴とひよりも、同時に声を上げた。
「ちょっと!?」
「それはずるいって!」
「いや、これはセーフだろ」
「アウトです!」
「アウトです!」
そんなやり取りをしていると──
「……そろそろ静かにしてくれ」
呆れた声が飛んできた。
振り返ると、ライルが腕を組んで立っている。
「すみません」
「ごめんなさい」
「すみません……」
「ごめんなさい……」
四人揃って頭を下げる。
ライルは小さく息をつき、周囲を見渡した。
「もうすぐ時間だ。
気を引き締めてくれ」
その一言で、空気が変わる。
(……ああ、そうだな)
さっきまでの緩んだ空気が、すっと消える。
夕陽が森を赤く染めていく。
長く伸びた影が、地面を覆い──
やがて、すべてが静まり返った。
(……来る)
まもなく。
作戦が、動き出す。




