026. 魔道具の可能性
「ねぇねぇ、みんなってどこの部活に入った?」
翌朝、ボクは魔道具部活に入る仲間を探すべく、クラスメイト達を調査していた。
一人は当てがあるし、もう話もつけてあるけど、もう一人探さないといけないんだよね~。
「え、何々? ハクレも部活に興味持った感じ?」
一番にこの話題に食いついてきたのは、相変わらずゲーム機を手放さないゼフィア君と仲良しのセオドア君だった。
「そうそう。昨日初めて別館に行ったんだけどさ~。けっこういろんなとこがあるんだね。それで、みんなってどこの部活入ったのかな~、って気になって。」
ここはいったん様子見。というか、この二人はもうすでに決まってそう。面白そうなことにはすぐ首を突っ込むタイプだろうし。
「オレはゲーム部活。やっぱここしかないっしょ! すごいんだよ~。人気だったレトロゲーとか、話題の最新作までそろってんの。こういうビデオゲームだけじゃなくて、ボードゲームとかもあったりしてさ~、遊んで遊んで遊びまくる最高の部活。」
悪魔は好きなことの話になるととてつもなくおしゃべりになるのか? いや、ゼフィア君の場合は元々おしゃべりだけど。ゲームの話になるとすごく生き生きしてる。目が輝いてるもん。
「セオドア君は?」
「ん? 俺? 俺は魔術開発部活。」
「魔術開発!?」
結構意外かも。だって、魔術を開発するって難しそうだし。あっ、でも、ボクの能力もボクが開発したようなもんか。……ならいけるか。だって、ボクでもできるんだもん。悪魔だったら、ちょちょいのちょいだよね。
「そう。錬金術とかねー。」
さらに予想外の言葉にボクはポカンとする。
え……。錬金術って魔術なん? というか、セオドア君がそれに興味持つ理由って――。
「セオドア、お前それ、金が欲しいだけじゃね?」
ボクが心の中で思ったことをゼフィア君が代わりに言ってくれた。
セオドア君と話すことが多いからか、最近気づいたことがある。セオドア君はとにかく手癖が悪い! 気を付けていないとすれ違いざまに財布とかアクセサリーとか平然と盗っている。本人曰く、癖らしい。手が勝手に動いちゃうんだと。
いや、そんなわけあるか!
初めてそれを知ったときは思いっきりそうつっこんだ。
とにかく、セオドア君は金に目がない悪魔なのだ。
やっぱり、悪魔はみんな個性が強い。強すぎる。
「んで、ハクレはどこの部活入んの~?」
「あー、えっーと、魔道具部活ってとこ。」
すると、二人は首を傾げた。
あんまり知られてないんだろうなー。部室もあんなんだったし。
一応あの後、先輩にいろいろ聞きながら、大雑把に片づけをした。さすがにあのままはまずい。
まあ、本格的に綺麗にするには、一回マジの大掃除が必要になるレベルでいろんなものがでてきた。中には、先輩が分からない魔道具まで混ざっていた。だから、昨日までは物置だった部室は、一応活動場所と言える程度には片付いた。あまりの変わりようにアイ先輩も驚いていた。
どうせ、片付かないと思ってたんだろうな。
片づけをしてみて分かったが、先輩は整理整頓がひどく苦手だ。全部を見える場所に置いておこうとするから、全然片付かない。そりゃ、ああなるわ、と納得せざるを得なかった。
「なあ、それって、なにやってる部活なんだ?」
話が聞こえていたのか、ザーク君が話に入ってきた。
珍し。普段は誰とも話さないのに。しかも、自分から話に入ってくるなんて。これは、勧誘チャンス?
「基本的には、魔道具の管理って言ってたよ。先輩はオリジナル魔道具の発明とかもしてるみたいだけど。」
「例えば?」
おっ、マジで結構食いついてくるじゃん。
代わりにゼフィア君とセオドア君はあまり興味がなさそうだった。お互いに自分の部活がどうなんだ、という話をしている。
本当に悪魔って興味があるないの差激しいな!
「光り輝く目覚まし時計とか、ビリビリクッションとか。」
昨日いろいろと自慢げに見せてもらったが、正直どこで役に立つんだよ、っていうものばかり。
ビリビリクッションの威力は強いわけでは無いけど、まあまあ痛かった。いたずらとして仕掛けるなら最適だと思う。
「あ、あとは、録音できるミニボトルみたいなのもあったかな。」
あれは正直凄いと思った。録音されてたのは、学校のチャイムだったけど。やっぱもっと他に使い道あっただろ!
「お前、今日行くのか?」
「え、うん。」
「俺も行く。」
「えっ、本当!?」
まだ確定じゃないけど、興味持ってくれる悪魔がいて良かった~。とりあえず、ノルマ達成なのかな? 放課後が楽しみだな。
―――――――――――――――
そして、放課後。
ボクはザーク君とすっごく不機嫌なユオ君を連れて部室に向かっていた。
そう、ボクが考えていたもう一人の当てとはユオ君のことだ。
ユオ君は登校してるときに誘った。いつも放課後はどっかで寝てるから元々どこにも入ってないとは思っていた。それに基本はすることが無いって言っていたので、それを理由にごり押した。
「先輩、こんにちは!」
部室に入ると、アイ先輩はまだ来ていなかった。
「わっ、ハクレちゃん。いらっしゃい……!?」
普通に迎え入れてくれた先輩だったが、ボクの隣にいる二人を見て、とても驚いていた。
「ほ、ほんまに二人連れてきてくれたなぁ……。」
「はい! クラスメイトのユオ君とザーク君です。」
先輩に二人を紹介するとザーク君は少し頭を下げた。ユオ君はというと、立ったまま寝ていた。
ユオ君って歩きながらでも寝るし、どんな状況でも寝れるってある意味才能?
「うわ~、嬉しいわぁ。質問あったらなんでも聞いてな~。」
言葉通りにっこにこの先輩。
ザーク君は部室に入っていろいろ見て回り始める。すると、手のひらサイズの瓶を手に取った。教室でボクが話題に出した録音できるミニボトルだ。
「なあ、これって、アンタが作ったのか?」
「そうやな~。それが気にかかるんかいな?」
「これって、市販もされてるよな。」
へぇ~。……。って、ええ!? 先輩が作った魔道具ってお店で売ってるの!? ってことは、先輩の魔道具も結構役に立ってたり?
ザーク君が魔道具に反応したのは、先輩が作ったやつが売られてるの知ってたからだったのか。
「ほんなら、もしかして、気に入ってくれてたんかな?」
「オレじゃなくて、妹がな。」
そう言って、ザーク君は瓶を元のバスケットに戻す。
ザーク君って妹いたんだ。まあ、確かに。面倒見が良いなあ、とは思ってたけど。お兄ちゃんだったなら納得か。
時々、ザーク君と一緒にいろんな手伝いをしているが、口調は荒っぽいもののやることは丁寧だし、細かいところまで気がつくから、正直、ボクよりも手伝ってる感がある。
「なあ、なんでアンタは魔道具なんて作ってんだ?」
あっ、確かに。それは聞いてなかったかも。先輩が好きだから、始めたのかなー、って勝手に思ってたけど。
「魔道具っておもろいわぁ。魔力なしでも、火が出たり、花が咲いたりするやん? うちは、魔道具には無限の可能性がある思てるねん。」
空飛ぶカプセルなんか、本当にあれどういう仕組みでああなってるのか教えてほしんもん。
「うちは生まれつき魔力あんまりないんやけど、魔術はほんのちょこっとしか使えへんの。でも、魔道具やったらどうや? いくら使っても、倒れへんし、疲れへん。魔界には魔力量が少ない悪魔もようおるから、うちは魔道具を作っとるんやで。」
なんか、先輩がちゃんと考えてるんだな、って思うのは失礼かな。
それでも、魔力が少なくて大変な悪魔もいるんだ。悪魔社会って実力主義なところありそうだし。
「先輩、俺もここに入る。別に毎日来なくたっていいんだろ?」
「おおきに。ええで、ええで。大歓迎やで。そっちの子もええんやろか。」
先輩は部室の隅で寝ているユオ君に目をやる。
「はい。と言っても、本人ほぼ寝てるだけだと思いますけど。」
これで、部員数は五人になるから、目標達成ってことでいいんだよね?




