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 奏汰が僕に微塵の興味がないことは、出会ってすぐに分かった。

僕は誰からも愛され、寛容される存在であるにも関わらず、彼が僕を見つめる視線は冷ややかで、どこか客観的だった。生まれてはじめての感覚。それは覚えたてのたどたどしい手つきで何かを成し遂げた自己満足の達成感に似ていた。

僕が心から求めているのはこれなんだろうと即座に悟った。


彼がどこにいても何をしていても気になった。御幣を生まない言い方をすればこれは憧れで、

御幣があるとすれば恋情のそれと似ている。

人に嫌われるってどんなこと?

結局、あの日僕を平手うちしたあの女はまだ僕を好いていて、あの日殴ってきた手のひらで僕へ愛を囁いている。

となればあの痛みは嫌われた証拠にはならない。僕が求めているのはこんな結果じゃない。

愛なんていらない。そうだ、分かった。僕は誰かをただ…。




「騎士?」


声を掛けられてハッと僕は顔を上げた。

少女(名前は忘れてしまった。だってどうでもいいじゃないか。)

が僕を汗ばんだ頬と火照った表情で見つめていた。


「ごめん。考え事してた」

「最近…変じゃない?誰か別な女のことでも考えていたの?」


くすくすと冗談まじりに彼女が微笑んで、そっとジーンズ越しに僕のふとももを撫でた。

けれども僕が本当に黙りこくってしまって、彼女はぱたりと性的な煽りをやめ、情けない顔で僕をもう一度見つめる。


「何?本当だったの?」

「…出て行ってくれ」

「えっ…?」


僕は彼女が倒れこむのもお構いなしに立ち上がった。当然、僕にまたがっていた彼女は少し乱れた服装のまま落下して無様に仰向けになった。激情した脳が沸騰してぷつぷつと音を立てているようで、

僕はそのまま片手を大きく広げて彼女に言い放った。


「出て行けといっているんだこの概製品が!」






名前も忘れていたその女の子とはそれっきり会っていない。だからといって僕はこの生を受けたときから決まっていた定めで、彼女は僕を永遠に嫌いになりはしない。それでも僕を愛してしまう。

放課後、夕日が沈みかけた教室で突っ伏す僕は、奏汰のことを考えていた。

あの目が、あの声が、あの態度が。

全く僕に興味がないあの少年だけが僕を救うことが出来ると何故か僕は確信していた。

何か特別な存在であると、この感情がたとえ間違いであっても、それでも構わない。

僕は誰かを愛してみたいだけなんだから。


ふと、教室のドアが開き、僕は顔を上げずに音を聞いていた。

やがて足音が近づき、そっと肩を叩かれようやく気だるく頭を上げた。


「帰らないのか」


両目に映った真実が信じられないまま、僕は首を振る。

僕の肩を叩いたのは、紛れもなく奏汰。短くてはねた栗色の毛がほんの少し揺れている。


「なら、一緒に帰ろう」


神様がいるとしたら僕は後世、その存在を語ろう。

バッグを握り締めて次彼が何を言うのを待つのでもなく彼の手を取った。

その先どうしたらいいのか、どこに行けばいいのか。まったく知りもせずただ、学校を飛び出して彼が僕を突き放すまでの数十分、僕はとても至福だったことを

ぼんやりと思い出していた。



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