第01話「二人の日常」
「イレギュラー・マリオネット -The Wild Guardian-」の続編です。
前作はこちら
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――ここは、天人達が暮らす異世界。
天界アルフレイル。
その片隅に、ノクス・イスターンの家はあった。
室内の机には、処理を待つ書類が所狭しと積み上げられている。
ノクスはその一枚一枚に目を通しながら、いつものように政務の仕事に追われていた。
「ふぅ……。今日も相変わらずの量ですね。少し休憩して、英気を養わないと」
ようやくペンを置き、凝り固まった肩をほぐすように首を回す。
コキ、コキッ。
小さな音が鳴ると、ノクスは椅子の背もたれへ身体を預け、疲れたように息を吐いた。
「さて、それでは……いよいよお待ちかね。今日のお楽しみを始めますかねぇ~♪」
ワクワクしながら左手にはめた指輪に力を込める。
それに呼応するように淡く光りを放つが、一見何も起こらない。だがしばらくすると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
『……ノクス? 入って良いか?』
聞き慣れた少年の声だ。
「おぉ、ライガですか。ええ、もちろん! さ、入ってきなさい」
静かに扉が開くと、そこに立っていたのは筋骨隆々な黒髪の少年だった。
ジッパー付きで動きやすそうな袖なしの黒い上着に、同じく黒い短パン。素肌に直に着ている服が、少年の野性味を引き立てている。
それでいてあどけなさの残る顔立ちは一層目を引いていた。
「ふふ、ライガはいつ見ても可愛いですね~!」
ノクスは、まるで芸術作品でも鑑賞しているかのように、ライガのシルエットにうっとりと見とれた。
『もう……っ、見てるだけじゃなくて、ちゃんと触れてくれよ! 俺は、ノクスのお嫁さんなんだからな!』
ライガは、嬉しそうに顔を赤らめておもむろに上着のジッパーを下げ始める。
「ええ、もちろんです! ちょうど休憩しようと思ってたところですし、ライガを堪能させてもらいましょうか♪」
徐々に露になっていく少年の素肌に、ノクスは興奮を抑えられないようだ。
『へへ……っ♪ それじゃあ、今日もたっぷりご奉仕しないとだな!』
そんなやり取りが終わる頃には、ジッパーは完全に外れ、上半身がむき出しになった。
「ああ……っ! ライガの肉体美をこんな眼前で拝めるなんて!」
目の前に広がる鍛え上げられた筋肉美に、感嘆の声が漏れてしまう。
「はぁぁ~っ! 幸せぇ! これっ、これなんですよ! ライガからしか得られない栄養素♪ 僕の生きる糧!」
『……お…で、ガガ………。…た、たっぷり…っ、ごほう、シ…レロロ…………(カクッ)』
「……あれ? ライガ?? お~い!」
『……………』
見ると、ライガは白目を向いて、立ったまま口をあんぐりと開け、脱力していた。
指輪に灯っていた光も、いつの間にか消えている。
「ああ、いけない。またリンクが途切れてしまいましたか。……ふんぬっ!」
ノクスは、うっかりしていたと言うような顔で、左手にはめた指輪に力を込めると、また光が戻った。
――――ビクンッ!!
……次の瞬間、ライガの全身が小刻みに何回か震えると、意識を取り戻したのか、ゆっくりとノクスを見つめてにっこりと笑顔を見せる。
『……ノクス、今日はいっぱい愛し合おうぜ!』
「ええ、もちろんです! さすが僕のお嫁さんですね!」
『当たり前だろ? 疲れたご主人様をねぎらうのは、愛する妻として当然だぜ!』
「はぁああ~! 眺めているだけじゃもう満足できない! さぁ、極上の体験をさせてください~!」
ノクスは、先ほどの書類整理の疲れなど吹っ飛んだかのように、ライガに向けてダイブ。
――ドゴォォン!!
「ぶへぇっ!??」
だが、ヒラリとかわされ、ノクスは壁にめり込んだ。
「……極上の体験ができなくて残念だったなぁ? ご・しゅ・じ・ん・さ・ま!!」
ハッと気づいて顔を見上げると、そこには正気に戻ったライガが鬼の形相で拳をボキボキ鳴らしながら見下ろしていた。
「しまっ……また指輪のリンクが切れてしまった! ちょっと待ってください、今リンクを繋げ直して……」
「誰が待つか! 好き放題しやがってぇぇぇ!! てめぇ、覚悟しやがれ!」
◇◆◇◆
「ううっ、痛たたた……。信じられない。守護者が主人を本気で殴るなんて……っ」
ノクスは顔中に張った絆創膏を鏡で見ながら救急箱を閉じた。
「……っけ!! 死ななかっただけ、ありがたいと思え!!」
正気を取り戻したライガは、ふてくされた様子で悪態をつきながら紅茶の用意をしていた。
「しかし、こうしてライガを操るのも上達したでしょ? 最初は苦労しましたよ。カタコトしか喋らされないし、あちこちぶつけるし、動きもカクカクでしたよね」
ライガの薬指にはノクスと同じデザインの指輪がはめられている。
『リンクリング』――これは召喚主と守護者を繋ぐ証だ。
「ったく、いい加減これ外せよ! うっとおしい」
「ダメです。これは二人の永遠の愛を誓い合った証ですから」
「けっ! 何が愛の証だ! 毎日毎日、よく飽きねぇよな。カップルごっこも、これで何度目だよ」
「ごっこじゃありません! 僕らはもうラブラブカップルじゃないですか!! ほら、こうして指輪に力を込めれば……」
と、指輪に反応して少しずつライガの股間が膨らんでいくのをノクスはニヤニヤしながら見つめる。
「ほ~ら、ライガってば、もうそんなご立派に……」
「どわぁああっ!? だから、俺で遊ぶなっ!!」
こんなやり取りが、もはや日常風景となっていた。
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