『幼女と精霊』
「......お待ちしておりました。
ナノア様ですね。それと...異邦人の方」
ナノアって言うのか。
出てきたのは白髪を生やした老人。
燕尾服を着て、白い手袋。完璧な執事と言ったところだろうか。
特徴的と言えば、"隻眼"であることだろう。
黒い眼帯を巻いている。
左目が開いていて、鋭い目付きを俺たちに落としている。
「異邦人と言っても、私の連れよ。心配は結構。」
「......そうですか。ならよいのです。どうぞ、先へ。」
老人は朗らかな微笑みを見せ、目を細めた。
「といいますか、それは重傷だ。
速やかな治療を施さなければ。」
大きく左目を見開いた様子で。
屋敷の庭のベンチに寝かせ、治癒を開始する。
黄緑のもやをてに纏い、金髪少女の肩の傷口にてをかざす。
「それにしても、自分の衣服での応急措置は
よい判断です。これがなければ今頃は...」
──そう思うと、背筋も凍る
しばらくして。
「取りあえず傷口は塞ぎきれました。
私も慣れてはいないので、少し回復は遅いかもしれないですが。」
わずかにまだ赤黒く脈打っているのがみてとれる。
「いや、助かったよ。ありがとう。」
「いえいえ、それと亭主様は、外出中でございます。暫く留まることになるのですが、いかがなさいますか?」
少女を背負い直し、
屋敷への道のり、蛇のようにくねった整備されているのを踏みしめて。
「どのくらいなんだ?」
「約2日ほどですね。」
「......結構長いな、 その、ナノはどうするんだ?」
「軽々しく省略しないの! 、まぁそうね。街でもまわって待とうかしら。」
「──おいおい大丈夫かぁ?そんなちっこい体じゃ、珍しいとか言われて売り飛ばされるんじゃねぇの?」
「誰が売り物になるか!」
「このお嬢様は預かりますか....それとも。」
「ああ、それは頼む。屋敷へ入ってもいいか?責めてしっかり寝かせてから......」
「─ええ、構いませんよ。」
今は何よりナイフを刺した犯人を警戒しなければ、いつ襲われるかもわからない。止めを刺さなかったのは何故かも。
扉は俺が縦にもう一人入りそうな大きさだ。
ギィ......と鈍い音がして、
正面には左右に階段が展開されている。
──それと、白い何かが歩き回っている?
「......ほっほっ、驚きましたかな?
彼らは、純粋精霊、この屋敷の手伝いをして貰っています。」
一匹のそれが、近づいてくる。
腕は羽織の裾のようになっていて、顔面はない。身長は俺の半分くらいだ。
下半身は幽霊のように薄く、なびいている。
「やっぱ、かわいいわ~♪」
──ナノアは精霊に抱きついてすりすりしている。
──そんなやつは、放っておくとして
とにかく一回この子を寝かせよう。
「寝室はこちらです。」
執事さんは、扉を開けて案内する。
俺は少女をベッドに寝かせ、一息付く。
それにしても、可愛らしい見た目だ。
寝ている姿と来たら一級品だ。今までみた女子の中ならナンバーワンを争う。
──そのとき
屋敷の静寂は消えて無くなる。
─パリィィンと、ガラスの破片が飛び散る。
漆黒の矢が顔を掠め、天井に突き刺さる。
赤黒い液体が頬をつたう。
「......っ!」
「何事ですか!」
執事が応援に駆け付けた。
「敵襲だ! クソ、」
その音で少女はやっとのことで目を開く。
水色の滴るような瞳。この状況で一瞬惹かれた自分が腹立たしい。
ただ、あのナノアと違っておとなしい感じだ。
「....なにごとぉ、?」
しっとりした声、じとっとした瞼、寝起きを物語っていて、尚且つ状況を理解してほしいほどの無邪気。
「...よく起きた! とにかく、立てるか?」
「......うん」
のっそりと立ち上がる彼女に、少しだけほんの少しだけ焦りと苛立ちを感じてしまった。
「私は...ラノア様と合流します。
どうか、ご無事で.....」
「おう! やるしかない、か。」
割れた窓ガラスから、白い不気味な仮面を被った男、?女?性別はわからないが、入ってきた。首から下は黒い布で覆われ、まるで浮いているように移動している。
「おいおい......挨拶代わりに魔法ぶっぱなしてきやがってこの外道が!」
冷や汗混じりに出た言葉だ。正直怖くてたまらないが、格好つかないのが嫌だ。
金髪の子に傷を付けたことも、こいつが、確信犯だろう。
「.....っ!」
いつの間にか視界は、黒い布で埋まっていた。
見上げると、反り立った壁のように曲げて見下ろしてくる。
腹元にはナイフの先端が当てられていた。
「......無視しないで?」
少女は黒い男に手をかざし、衝撃波を放つ。
壁にたたきつけられた黒マントに、
「これでも食らえ!」
花瓶を投げるが、ナイフの先端を当てて威力を殺し、素早く蹴って返してきた。
「ぐっ、」
花瓶の固さに腕を痛め、もう片方で楽にするため押さえて悶えていた。
──そのころ、執事は精霊と遊んでいたナノアと合流していた。




