第48話 謹慎
リオン達がデブリと決闘を行ってから3日ほど経った頃。とある貴族の屋敷では、一人の男が机の上で頭を抱えていた。
「全く、どういうことだ。あいつのせいで、我が家に恥を塗られてしまったぞ」
彼の名はグラン・ピッグ。デブリの父親である。
グランは、先程とある人物から受け取った手紙を読みながら、悩んでいた。
「ああ、一体どこで育て方を間違ったのだろう。他の家と大差ない教育をしていたつもりだったのだが、ダメだったのだろうか」
この国の貴族は、多くが子供の教育の大部分を家庭教師に任せ、直接的なアクションは行わない、という方法で子供を育てている。
その例に漏れず、ピッグ家も同じ方法でデブリを育てていた。
「あまり考えたくないが、家庭教師に問題があったのか?今の時間なら、メイの授業を終えた直後でまだ屋敷にいるはずだ。ここに呼んで話を聞いてみよう。おい、彼をこの部屋へ呼んできてくれ」
グランは、近くにいた使用人に声をかけ、この家の家庭教師を呼ばせた。
10分ほど経った後、部屋の扉からノック留守音が聞こえた。
「入れ」
グランがそう言うと、扉が開き男が一人入って来た。
「失礼します。お呼ばれしたようですが、何かございましたか?」
男は、部屋に入るなりそう言うとグランの目の前まで歩く。
「この前まで、デブリに付いて教えてくれていたな。ありがとう。君から見て、デブリはどのような人物だったか、正直に教えてくれないか?」
グランは、早速男に質問をした。
それを聞いた男は、突然のことに困惑しながらも言葉を選びながら喋り始める。
「は、はあ。デブリ様は、優秀だったと思います。ただ、ご自身の身分を傘に着るような態度が度々見受けられたので心配です」
「ふむ・・・・・・以前からその傾向はあったのか」
グランは、男の言葉を聞くとボソッと呟いた。それを見て、男は慌てて弁解を始めた。
「め、メイお嬢様はデブリ様よりも優秀で、その才能に驕ったりなど一切されておりません。デブリ様が学園で何か起こしたのかもしれませんが、心当たりなどは一切」
それに対し、グランは淡々と発する。
「うむ。言い分を聞く限り、其方に非はなさそうだ。だとすると処分はデブリ一人に受けさせることとなるが・・・・・・多少強引にでも矯正するしかないか。デブリは学園を休学させ、しばらくこちらで再教育するべきか」
今後の方針を定めたグランは、そのまま男に語りかける。
「すまないが、またデブリに付いてくれないだろうか。待遇はさらに良いものとしよう」
グランは下手にでて、男に頼み込んだ。
完全に想定外の言葉に驚きつつも、男はそれを咀嚼した。
数秒間、男は瞬きを繰り返しながら考えると、快くその頼みを引き受けた。
「勿論です。デブリ様を改心させられずに送り出したことは、心残りでしたのでこちらも嬉しいばかりです」
男の意外な台詞に、グランは目を見開きながら、深く頷いた。
「それは助かる。是非、こちらに協力してくれ」
「ええ。しかし、そのまま謹慎させるのは、ピッグ家の威信に関わるのでは?耳の早い貴族は既に情報をつかんでいるでしょうし、何か建前が必要だと思います」
男がグランに問う。それに対し、グランは心配無用とばかりにこう言った。
「それに関しては、考えがあるのだ。我が家には隣国のチェパン公国と縁がある。その繋がりで留学させると言えば、疑われることも少ないだろう」
男はその言葉を聞き、グランへ賛同した。
「流石です。他国であれば他の貴族も探りを入れることが難しくなるでしょう」
「では、私は近日中にデブリを回収するよう手配しておく。それまでに準備しておいてくれ」
問答を終え、男は頷くと部屋を出て行く。それに合わせ、グランも事務仕事を再開し始めた。
◆◇◆◇◆◇
デブリとの決闘を行ってから、1週間が経った。
その間、彼はこちらにちょっかいをかけてくることもなく、決闘を観戦していた人達から流れた噂によって俺やアレンの悪い噂は殆ど聞かなくなった。
「おはよう、リオン君」
「おはよう、アレン。今日は一段と機嫌が良さそうだね」
あの件以来、アレンは俺に心を開いてくれたようで、笑顔でこちらに話しかけてくるようになった。
お陰で、教室の中で俺が喋る相手が増えて彼とはよく昼食を食べている。
俺がアレンの様子がいつもと少し違うことに気付き声をかけると、声を弾ませながら答えてくれた。
「さっき聞いたんだけど、なにやら明日からデブリが謹慎させられるらしいよ。建前上は留学らしいけど、その実は謹慎だと噂になっているんだ」
なにっ、それは本当なのか?留学が本当だとして、謹慎だと言われてる理由が気になって仕方がない。
しかし、アレンに聞いても彼はわからないと言うだろう。
「明日からってことはこの学園にデブリの迎えが来るってこと?いつか知ってる?」
謹慎だとしたら、デブリのことだ。抵抗しようとして、目立つだろう。それを確認できたら、それが謹慎かどうか判るはずだ。
「確か、今日の放課後って聞いたよ。時間あるなら、一緒に観に行こうよ」
「そうだね。あいつを見るのはそれで最後だろうし、折角だから他のメンバーも誘って見にいこう」
ミューやリベルト達も、これを見逃したくは無いだろう。俺の提案に、アレンも同意して、早速俺はミューを誘いに向かった。
次回のからは週一更新となります。よろしくお願いします




