第30話 決闘
リベルトと魔法の撃ち合いをする為に訓練棟まで来て、俺たちは今受付をしている。
「決闘の予約ですね?今は使われてないので、すぐにご利用できますよ。ただ、コートを整備しないといけないので、10分ほどお待ちください」
10分か。その程度、全然待てるし別にこの後特に予定は無い。
少しばかり待つとするか。
リベルトもそれで問題ないようで、取り敢えず俺達は今からコートを使用する為に名前を登録して、近くの椅子に座った。
そういえば、俺たちがここに来た直後ぐらいから人が多くなったような気がするな。
周りの会話に耳を傾けると、こんなことが聞こえてきた。
「多分、あいつらだろ?入学早々決闘するとか、今年の一年生は血の気が多いな。それに、次席と三席なんだっけ。おおかた、三席が次席に喧嘩売ったってところか」
俺たちの話をしているようだ。
ちょっとした魔法の撃ち合い程度に考えていたんだが、もしかしなくても決闘って真剣なものだったりするのか?
スルーしていたが、地味に俺とリベルトの不仲説が出てるな。お互いの魔法が見たくなって決闘をしようと言う話になっただけなのだが、何も知らない人から見たらそうなのか。
少し待ってから、俺たちは魔法の撃ち合いをする為にコートへ入った。
やはり、俺たちが戦うことが気になるのか、かなりの人数が見学している。
「すごいね、リオン君。僕たちのことが気になって、沢山のそれも先輩達がそこから見学しようとしてるよ。名誉なことじゃないか?」
「うん、そうだね。人に見られている方が、やっぱり緊張するけど、その分張り切ってできるよ」
お互いコートに立ち、既に準備は終えている。
どちらかの合図があれば、すぐにでも始められる状態だ。
「勝利条件は、相手に攻撃を当てること。貸してもらっている魔法の攻撃を一度だけ弱める魔道具の使用回数が切れた時、どっちが勝ったか確認する。これで大丈夫だよね?」
「うん。承知しているよ。早く始めよう」
「よし、じゃあ始めようか」
俺がそう言った次の瞬間、リベルトの前には魔法が出現した。
俺が合図を出す前は、リベルトから魔力は感じなかった。つまり、この一瞬で魔法陣を描き発動させたのだろう。
「速いねー。でも、簡単に対処できちゃうよ?」
リベルトの放った魔法の属性は雷。それに対して、俺は『土壁』を使った。
これは、名前の通り土を使って壁を作るシンプルな魔法だ。
発射されたリベルトの魔法は、突然現れた俺の魔法に対応できず、ぶつかって消えてしまった。
魔力にはとある仕様がある。それは、それぞれ対になる属性の魔法とぶつかると魔力が相殺されて魔法が消えると言うものだ。
現象魔法は魔法そのものが消え、具現化魔法はぶつかった物にかかっている魔力が霧散する。
その仕様に則り、リベルトの魔法は消えて俺の魔法は崩れ落ちたのだ。
「素早く魔法の属性を見分けて、それに対応する属性の魔法を使ったのか。見事だね。じゃあ、これはどうかな」
この一瞬の攻防で、俺が何をしたのか分かっているようだ。リベルトはそう言いながら更なる魔法を展開した。
発動した魔法は二つ。風属性魔法と雷属性魔法だ。
風属性は対となる属性が無い。つまりは相殺できないのだ。雷属性はさっきと同じように土属性魔法で相殺出来るのだが、風の魔法がそうはさせてくれない。おそらくこちらの土魔法をそれで壊すつもりなのだろう。
「考えたね。どう対処しようかな」
俺は顎に手を当てて俯いた。
その間にも魔法は近づいてくる。
それでも、俺はその態勢をやめなかった。
やがて、このままだと魔法が当たってしまう、と言うタイミングで、俺は身を翻した。
防御できないのなら、避ければいいじゃない。
相手の攻撃を避けてしまえば、わざわざ防御する必要もない。そう考えた俺は、わざと魔法を当たるギリギリまで引きつけてから魔法を避けたのだ。
「なっ、体で魔法を避けたのか!?」
「魔力操作のお陰で身体強化の倍率が上がってるでしょ?それがあれば、飛んでくる魔法を避けるのも不可能ではないよ」
常人の身体能力では、飛んでくる魔法を避けることは奇跡が起こらない限り早々ないだろう。
しかし、この世界には魔力がある。ドールが言うには、この世界の人々は皆自分の持っている魔力により、無意識のうちに大なり小なり身体強化を行なっている。
魔力操作の腕を磨くと、身体強化も追随する形で倍率が上がる。
そして、俺程度になると反射神経は求められるが、飛んでくる魔法を避けることも、頑張れば出来るようになる。
俺が避けたのは風魔法だ。風魔法は雷魔法を守り確実に通すため、その前を飛んでいた。
リベルトは、俺が避けたのを見て風魔法はもう当たらないと割り切り、風魔法を消して雷魔法の軌道を変えた。
「『土壁』」
飛んできた魔法を、土魔法で防いだ。今度は邪魔をするようなものはないので、確実に防いだ。
「そろそろ、俺も攻撃に転じさせてもらうよ」
俺は、そう宣言してリベルトを囲うように魔法陣を展開した。
その数、なんと5個。魔力操作の限界でこれらを同時に自由自在に操るのは難しいが、5方向から同時に直線的な動きで飛んでくるだけでもそれらを防ぐのは困難なはずだ。
「『石弾』、『火弾』、『水弾』、『雷弾』、『風弾』」
同時に相殺されることのないよう、それぞれ別の属性の放ち、同時に射出されたその魔法は、リベルトを取り囲むように円を描いた。
リベルトはそれらに対処すべく魔法を使おうとするが、こっちを立てればあちらが立たず、次第にリベルトを囲む円は小さくなっていった。
「降参だよ。どう足掻いても僕はここから抜け出せない」
自分が積んでいる事に気づいたのか、リベルトは降参を宣言した。
それを聞いて、俺は魔法を消し、リベルトに近づいた。




