第29話 先輩
入学式が終わり、俺は入寮の為に男子寮へやって来た。
「新入生ども〜、ここが、これからお前たちも住む事になる寮だ。そこの壁にクラス割が貼られているから、確認するように。それぞれに部屋が割り当てられているから、くれぐれも間違えないようにな」
寮まで俺達を案内してくれた先輩が、寮の壁を指差してそう言った。
やっとクラス割が確認できるのか。入試の順位が2位だったから白金クラスはほぼ確実だろうが、一応確認しておこう。それに、ルートがどのクラスに入ったのか気になるし。
先輩が言い終わると、一斉に俺以外の一年生がクラスを確認する為壁に群がった。
貼り紙を見て、クラスを確認した。言うまでもなく俺は白金クラス。ルートはどうやら金2クラスらしい。
貼り紙をよく見ると、自分の名前の横に部屋の番号が書かれていた。
危なっ。見逃したら、自分の部屋が分からなくなるところだった。
自分の部屋とクラスも確認できた事だし、寮の中に入ろう。
「えーっと、502だから、5階の・・・・・・あった、あの部屋だ」
自分の部屋を見つけ、部屋に入ろうとしていると、突然後ろから呼び止められた。
「おうい、リオン」
聞き慣れた声が俺の耳に入ってきて、その声は俺の名前を呼んだ。
もしやと思って声のした方に振り返ると、予想通りそこには一つの影があった。
その影は、俺と似た金髪で、身長は高く、180程ある。
「アレン兄様、お久しぶりです。お変わりありませんか?」
俺は、兄様の存在を認めるなり、すぐに挨拶をした。
周囲には人がいる為、砕けた口調ではなくかしこまった方が良いかと思い丁寧に言ったのだが、その様子がツボにハマったようで、兄様は笑い始めた。
「ぷっ、アハハハハ。リオン、やっぱりお前面白いな。俺たちは兄弟だろ?そんなかしこまった言い方しなくてもいいぞ」
「そうかもね。それで、兄様はどうしたの?何か用が?」
俺が聞くと、兄様は笑いながらこう言った。
「おいおい、用がないと弟に声を掛けちゃいけないのか?別に良いだろ」
「でも、なんで5階に?ここは白金クラスの部屋だけらしいけど」
まさか、兄様も白金クラスだったりするのか?
「ん?友人が白金クラスに居てな、暇だからだる絡みしに行こうと思っていたら、リオンを見かけて声をかけたんだよ。んじゃ、俺は友達のところに行ってくるな」
そう言うと、兄様は奥の方へ消えていった。
嵐のように現れて去っていったな。できる事ならもう少し喋りたかったけど、仕方が無いか。
兄様と別れた俺は、部屋の扉を開けて中に入った。
部屋の広さは今世の俺の部屋より一回り大きいくらいか。
中を見回すと、左右両側にシングルベッドが置かれていて、部屋の奥には綺麗な光景を眺められる窓がついており、その下に勉強用だろうか、机が二つ置かれていた。
ベッドが二つ置かれているのを確認した時に気付いたのだが、どうやら二人部屋のようだ。
俺の相棒は誰なのだろう。十中八九白金クラスなのだが、クラス割は俺とミュー、そしてルートぐらいしか確認していない。
なので、俺と相部屋になる人が誰か把握できていないのだ。
自分のクラスと部屋番号を確認する段階で、相部屋になる事が分かっていれば、誰が相棒になるのか知れたのに。
取り敢えず、俺は荷物を整理したりして時間を潰した。
今日は、たしか入学式が終わってからは予定が入っていなかったはずだ。同級生と仲良くなり、明日からの授業に備えろと言われたが果たして相部屋になった相手と仲良くなれるのだろうか。
そんなことを考えていると、コンコン、と扉がノックされた音が聞こえた。
「入って、どうぞ」
それに対して返事をすると、後ろで扉が開いた。
そこにいたのは、長めの銀髪を後ろで束ねていてとても整った顔をした美男子だった。
「君が、自席で合格したリオン・ヒュード君。で、合ってるよね?よろしく。僕の名前はリベルト。リベルト・グリュンだ。」
リベルト・グリュン、入試ではたしか三席だったか。どんな人だろうとは気になっていたが、まさかこんなところで会えるとは。
「よろしく。知ってるみたいだけど、改めて自己紹介させてもらうよ。リオン・ヒュード、ヒュード伯爵家の次男で、適性は火と土。他の属性も満遍なく仕上げているから、大抵のことはできるよ」
俺が自己紹介を終えると、リベルトはこんなことを言ってきた。
「なるほど、噂は嘘ではないみたいだ。言うなれば器用、いやそれだと後に貧乏が着いてしまうから万能か」
万能か。嫉妬や皮肉は感じられず、心から純粋に誉められているようでとても嬉しい。
「ありがとう。リベルトはどうなの?気になるな」
俺が聞くと、彼は全く嫌な顔をせずに答えてくれた。
「教えてあげよう。先ず、僕の適性は風と雷だ。他の属性は最低限だけやってあまり育てていないけれど、その分この二つを限界まで鍛え上げたんだ。試験の時も、風と雷で派手な魔法を使ってここまで上がってきたんだ。僕の家は侯爵家でね、家庭教師についた宮廷魔術師の教え方も良かったんだ」
侯爵家の息子だったのか。それなら、家庭教師の腕が良かったと言うのも納得だ。
「そうだ!荷物の片付けとか整理が終わったら、魔法を撃ち合いしてみない?リベルトの魔法を見てみたいし、君も俺の魔法が気になるだろう?」
彼の話を聞いていると、突然魔法の撃ち合いをしてみたくなった。
この学園にはかなり大きな訓練場があって、そこには魔法の撃ち合いをするためのコートもあるらしい。一年生も使えると誰かが言っていたのを聞いたので、そこに行けば出来るはずだ。
俺がそう提案すると、リベルトは二つ返事で肯定した。
「いいね!じゃあ、早速向かおうよ。さっきもらったこの紙に校内の地図が書いてあるし、場所は僕が案内するよ」
リベルトはかなり積極的に話を進めてきて、何故か今すぐ行く事になった。
荷物はいいのか?




