第二章 プロローーグ!
超お久しぶりの投稿です。
俺こと夜葉杉丸は現在、ダンジョン攻略真っ只中。
「おい!走れヨワマル!そんなんじゃ魔物に追いつかれちまうぞ!!」
俺の目の前を走るのは筋肉隆々としたおっさん、もといガルシアだ。
”鮮血の両斧”というパーティーでリーダーをしている冒険者だ。
見た目もさることながら、白銀級のベテラン冒険者。
そんな彼を必死に追いかける俺は未だに下級冒険者。
なぜこれほど階級の離れた冒険者が一緒にダンジョンに潜っているかというと、簡単な話俺の鍛錬である。
「ヒィ……ヒィ……ちょ、ちょっとタンマ……」
「足を止めるなヨワマル!魔物がすぐそこまで来てるって言ってんだろうが!」
「そ、そうは言うけど……もう全力疾走し続けて何分経ってると……思ってやがる」
「死にたくねぇなら走れ!おい、パイク、ザガン!魔物の足止めをできるか!」
パイクは細身の男で愛用の武器は槍。
ザガンは背こそ低いが巨大なハンマーを扱う。
どちらも上級冒険者で俺よりも遥かに強い。
「流石に数が多すぎるぞ……俺達二人では大した時間稼ぎもできん」
「右に同じく!オイラも割と消耗しちまってるんだよ。もって二分ってところか」
二人とも疲弊しているのに、それでも時間稼ぎを買って出てくれる。
俺の体力がなさすぎるせいで相当足手まといになっていた。
「クソっ!おいヨワマル!強くなりてぇんだろ!なら走れ!足が折れても這って動け!冒険者ってのはすぐに死ぬ職業だ!それが分かっててオレに鍛錬を頼み込んだんだろ!」
そう、ガルシアの言う通りこの鍛錬という名のダンジョン攻略は俺が言い出したことだ。
まさか受けてくれるとは思っていなかったが。
「わ、分かってる……でも……横っ腹がいてぇ……」
頭では分かっているつもりだ。
それでも身体が言うことを聞いてくれない。
「うるせぇ!魔物に襲われりゃあもっといてぇぞ!腹を掻っ捌かれて内臓が飛び出て血飛沫が舞い――」
「分かった分かった!嫌な想像させんな!!」
ガルシアがいらん事を言ったせいで横っ腹を抑えながらも少しずつ前に進むことができた。
魔物に襲われたら、と思うと……いやいや、嫌な想像は止めとこう。
俺痛いの嫌いなんだよ。
「なら走れ!もうすぐそこまで魔物の群れが来てやがる!」
ガルシアがそう言い、俺もチラリと背後を見た。
遠くの方に赤い目を光らせた無数の魔物がこちらへと全力疾走してきている。
「おおおお!!やべぇやべぇ!」
痛む腹と足にムチを打って俺はまた走り出した。
俺の後ろにはザガンとパイクがいる。
俺が遅れれば最初に襲われるのがその二人だ。
彼らも”鮮血の戦斧”のメンバーで、俺の事をよく思ってくれている。
まあ俺があまりに弱すぎて庇護欲をかき立てられているのかもしれんが。
「チッ!前からも来やがった!」
「え?おいおい挟まれてんじゃねぇか!」
「オメェがちんたら走ってるからだ!」
いやいや、こんな言い争いしてる場合じゃない。
前から小さな緑の魔物ゴブリンが五体俺達に向かって走ってくるのが見えた。
背中に担いだ俺の相棒、黒龍丸を手に取ると両手でしっかりと握りしめる。
何を隠そう黒龍丸は俺の唯一の武器だ。
フサフサの毛先がなびく、モップ。
俺の事を掃除屋なんて呼ぶやつもいるが、あながち間違いではない。
モップといっても普通のモップじゃない。
柄の部分は鉄よりも硬いと言われている魔力を多く含んだ木が使われている。
それにオーダーメイドだ。
剣と打ち合っても折れることのない頑丈さは十分武器になる。
何しろ数回はコイツでゴブリンを屠っている。
「いいか、ヨワマル!お前は右の一体を狙え!他の四体はオレがやってやる!」
「分かった!」
俺だってゴブリン一体くらいならなんとかなる。
疲弊した身体を無理やり動かして、ゴブリンへと駆け出した。
ゴブリンは俺が動いたのを見て棍棒を振りかぶる。
「うおぉぉ!!」
「グギャッ!」
鋭く突き出した黒龍丸の先端がゴブリンの喉を貫いた。
運がいいな俺。いつもなら何度か打ち合ってようやく有効打が当てられるが、今回みたいに一撃で致命傷を負わせられたのは相当運がいい。
「オラァァッ!旋風牙ァ!」
ガルシアの雄叫びで肩がビクッと跳ねたのは内緒だ。
俺の背丈ほどもある斧を勢いよく振り回し、それと同じくして風が舞う。
「グゲッ!」「ギギィッ」「グッ!」「ギャッ!」
四体まとめて吹き飛び壁にぶち当たると、上半身と
下半身がズルリとずれて地面に落ちた。
グロすぎ。
臓物とかドロっと垂れてるし。
いや、それにしても流石は白銀級だなガルシア。
一撃で四体倒せるなんて憧れるぜ。
「なにボーッとしてやがる!走れ!」
「お、おう!」
俺がジッとガルシアを見ていたのがバレると叱責が飛んでくる。
こうしてる間にも背後から迫りくる魔物の群れは止まってくれないのだ。
俺はガクつく膝を叩いてまた走り出す。
多分ガルシア達鮮血の両斧だけだったなら楽に攻略できていたかもしれない。
そもそもダンジョン内で大量の魔物に追い回される事などそうそうないらしい。
それもこれも俺のせいである。
分かりやすく言えば俺がモンスターハウスと呼ばれる罠にかかってしまったのが原因だ。
大量の魔物がどこからともなく現れ俺達は撤退せざるを得なくなってしまった。
「見えてきたぞ!」
ガルシアが前方を指差す。
見えるか見えないかギリギリの距離に上階へと続く階段があった。
不思議な話だがダンジョン内の魔物は別の階層に移動することができない。
まあファンタジーな世界に来てしまっているからそういうものかと納得してしまうけど。
つまり、階段を登ってしまえば後ろから迫りくる魔物の群れは撒くことができる。
ガルシア達だけなら撤退などせずにその場で戦闘を繰り広げるだろう。
しかし残念ながら今は俺という名の足手まといがいる。
流石にベテラン冒険者でも雑魚一人守りながら戦えないと判断したようだ。
「チッ!徐々に距離が詰められてきてやがる。ヨワマル!もっと速く走れねぇのか!」
「これが限界!……なんだよ!」
自慢じゃないが俺の足は遅い。
学生時代、運動音痴といえば俺の名があがるくらいだった。
そういえばこの世界に来た時俺は大学生だったな。
てっきり忘れていたけど本当なら今頃就職していた。
就職という意味では今冒険者になってるから就職できたと言ってもいいかもしれないな。
まあとにかく、今は一分一秒を争う瀬戸際にいる。
俺の足がもつれでもしたら、彼らは全力で守ってくれるだろう。
ただ、無事に済むかは分からない。
何しろ魔物の数が多いんだ。
俺というお荷物を守りながら、魔物の殲滅は相当大変だと思う。
「もうすぐだ!ザガン、あれを使え!」
「任せな!いくぜぇ!」
ザガンが突然足を止めると巨大なハンマーを振りかぶった。
「大地散開!」
勢いよく振り下ろされたハンマーが地面に当たると同時に凄まじい揺れが俺達を襲った。
「うぉぉぉぉ!」
「耐えろヨワマル!」
辛うじて踏ん張ると後ろが気になったからチラッと横目で見る。
地面に亀裂が走り一部の魔物はそれに足を取られ転んでいた。
当然その後ろを走ってくる魔物もドミノ倒しのように倒れていく。
「うおっすげぇ」
「感心してる場合じゃねぇぜヨワマル!あんなもんただの時間稼ぎにしかならねぇからな!ほら、走れ!」
なかなか激しい攻撃だったのに、それでも時間稼ぎ程度にしかならないとか俺からしてみれば考えられない。
俺だってあんな派手な技使ってみてぇよ。
そのまま走り出し遂に階段へと足をかけた。
一気に駆け上がり上の階層に辿り着くと腰が抜けて俺はその場で尻もちをついた。
「しんど……」
「ハァハァ……なんとか撒けたか」
喋るのもきついくらい心臓がバクバク鳴ってるよ。
あれだな、良く分からない部屋には入らないようにしよう。
また同じ目に合ったらたまったもんじゃない。
「少し休んだら上に行くぞ」
「え!ああ……そうか」
そうだった。
必死だったせいで忘れてたけど、ここはダンジョンの六階層。
出入口までまだ六フロア登らないといけなかった。
これ明日は筋肉痛で動けなくなりそうだぞ。
ああ……こんなことなら鍛錬なんて頼まなかったらよかったぜ……。
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