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第9話 戦いの果てに見えたもの

命を奪い、守って、生き延びた先にあるもの。

それは本当に、誰かのための未来なのか。

それとも、自分をすり減らすだけの“末路”なのか。


これは、『異世界来たけど俺の能力は死なないと強化されない件』


死を重ねてなお、“人として生きること”を選ぶ少年の物語。

村へ戻ると、風景は変わっていなかった。


でも――空気は、変わっていた。


 


蓮「……みんな、見てるな」


 


どこか遠巻きに、けれど以前のような“拒絶”ではなかった。


まるで、“何かに触れてはいけない”ものを見るような目。


それでも、誰も口に出しては言わなかった。


 


蓮「……結局、俺が“人を殺した”ってこと、もう広まってるのかもな」


 


アイリスは、何も言わなかった。


その代わり、蓮の隣にずっと立っていた。


それだけで、蓮には十分だった。


 


ゼクス「よく戻ったな」


 


村の長――ゼクスは、広場で蓮を待っていた。


 


蓮「あの男は……俺が、倒しました」


 


ゼクスは、蓮を見つめる。沈黙が短く流れた。


 


ゼクス「その命、背負う覚悟ができたようだな。……なら、もう君は“この村の外”へ進む時期だ」


 


蓮「外へ……?」


 


ゼクス「“火”はまだ小さかった。だが、近くに“もっと大きな異変”が控えている。

その兆しが、この村にも届き始めている」


 


そう言って、ゼクスは村の北の地図を示した。


蓮には、見慣れない印がついていた。


 


ゼクス「ここにある、旧時代の“塔”。今は誰も近づかない。

だが――さきほど、光の柱が立ち上がった」


 


蓮「……また、誰かが死ぬかもしれないってことか」


 


ゼクス「……そうだ。

だが今回は“転移者”ではない。“異常に耐えられる者”――君のような存在にしか、到達できない場所だ」


 


蓮は、地図を握った。


遠くで燃えた森の匂いが、まだ鼻の奥に残っていた。


 


蓮「俺、行きます」


 


その返事を聞いたゼクスは、小さくうなずいた。


 


ゼクス「……出発は明日。準備をしておけ。あと――もうひとつ、気になることがある」


 


蓮「気になること?」


 


ゼクス「村の南の井戸に、昨夜から“誰か”が住み着いている。

姿は見せないが、人間ではない。気配が妙に薄く……“死者に近い”匂いがするそうだ」


 


アイリスの表情が一瞬、強張った。


 


アイリス「……まさか、“記録にいたあれ”じゃ……」


 


蓮「記録?」


 


アイリス「昔の転移者の中に、“死にすぎて人の形を捨てた”存在がいたって。

名前も記録されてない。……でも、もしそれが本当なら」


 


蓮は思わず、拳を握った。


 


死を重ねて、人であることをやめた――

それが自分の“行く末”だとでもいうのか。


 


そのとき、井戸の方向から――不気味な笑い声が聞こえた。


 


「クク……命を使いすぎると、壊れちまうぞ……転移者くん」


 


蓮とアイリスは、同時に振り返った。


風は止み、空がぐらりと歪んだように見えた。


 


蓮(……次の相手は、“俺の未来”かもしれない)


 


胸の奥が、ずしりと重くなる中で、夜が静かに村を包んでいった。

蓮とアイリスは、迷わず井戸のほうへと足を向けた。


 


夜の村は静かだった。


風も音もないのに、何かが“ざわついている”気配だけが確かにあった。


 


蓮「ここか……」


 


井戸は村の外れにあった。

昼間見たときは何の変哲もない石造りの井戸だったが、今は違って見えた。


中から――“視線”を感じる。


 


アイリスは弓に手をかけた。

蓮は短剣に触れた手をわずかに握りしめる。


 


アイリス「……出てきなさい。姿を見せないなら、警告と見なして撃つ」


 


しばらくの沈黙のあと、井戸の奥から――それは“這い出て”きた。


 


肌は灰色。

髪は焼け焦げたようにぼろぼろ。

目元に色はなく、虚ろな黒が沈んでいた。


 


だが――その口元だけが、異様に笑っていた。


 


???「ああ、怖い怖い。もう俺はとっくに死んでるってのになあ……」


 


蓮「お前は……何だ」


 


???「“何”だって? お前と同じさ。“死んで強くなった”ただの成れの果てだよ」


 


蓮「名前は?」


 


???「ないよ、もう。忘れちまった。死ぬたびに、削れるんだよ。

記憶も、感情も、人格も――最後に残るのは、“死への執着”だけさ」


 


アイリスの指が震えた。


 


アイリス「まさか、本当に……“死喰い”の伝説が……」


 


???「はは。そう呼ばれてるのか、俺。ずいぶんカッコいいじゃねぇか」


 


蓮「俺は……お前みたいにはならない」


 


???「言ったろ? 最初は誰だって、そう言うんだよ」


 


蓮「なら、教えてくれ。お前は、どこで“人”をやめた?」


 


その問いに、井戸の男――“元転移者”は、ふっと笑った。


 


???「……好きだった人の死体を踏み越えて、生き延びたときだ」


 


蓮「……っ」


 


???「そのとき気づいたよ。“守る”って言葉は、たいてい嘘だ。

結局は、自分の都合で、誰かの命を天秤にかけるだけさ」


 


アイリス「蓮、もう行こう。こいつは……“引きずる”」


 


だが、蓮は目を逸らさなかった。


 


蓮「なら――俺は、そうならない道を、俺なりに選ぶ。

お前の声も、目も、全部覚えてる。けど、俺は“ここで止まらない”」


 


???「……いい目だ。久々に、面白いのが来た」


 


蓮が背を向けると、井戸の闇が“ぬるり”と元の静寂に戻った。


 


アイリス「……よく、耐えたね」


 


蓮「……怖かった。でも、ああはなりたくないって、本気で思った」


 


アイリス「きっと、あれは“未来”じゃない。あんたが、そこを選ばない限り」


 


蓮は、小さく息を吐いた。


 


夜明けが近づいていた。


空の端が、わずかに白んでいた。


 


その光を見つめながら、蓮は小さく呟いた。


 


蓮「俺が進む道は……俺が選ぶ」


 


その言葉は、まるで“過去の転移者”たちに向けられたようでもあり――

これから現れる“新たな敵”に対する宣言のようでもあった。



第9話を読んでくれてありがとう。


今回は、蓮が“村人の視線の変化”と、“死に囚われた転移者”という鏡のような存在に出会う回でした。


あれは、過去か未来か。それとも、ただの幻想か――

それでも蓮は、“ああはならない”と心に誓いました。


第10話では、いよいよ“選択”と“試練”が本格化します。

かつて命を喰った男がいた塔へ。そして、蓮に課される“ある決断”。


飽きる暇なんてないまま、物語はさらに深く、重く動き出します。


どうか、次回も見届けてください。







※この作品はAIの協力の元作成されています

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