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原澤部長はとても厳しく、それは部下から『鬼澤』と言われるほど。
鬼澤の指導に耐えられず辞めていった社員は何人もいた。
でも残った社員は若いながらも役職を持つようなエリート街道まっしぐらな者ばかり。
各言う私もその一人だけど・・・。
正直この企画課は一癖も二癖もある者がほとんどで、こんな人たちをまとめられる部長は凄いとつくづく感じる。
そんな鬼澤だけど、つい二ヶ月前に結婚したばかりの新婚ほやほやで、歳の差婚。
年下の妻が可愛くて可愛くて仕方がないらしく、妻に悪い虫がつかないようにウザイぐらい目を光らせている。
「原澤部長、嫉妬丸出しの男ほど見苦しいものはありませんよ?」
緩む口元を必死に引き締める私に部長は大きなため息を吐いた。
「おい、皆川」
「はいはい、午後の会議の打ち合わせ行ってきまーす」
私はユナちゃんから資料を受け取り、打ち合わせを行うミーティングへと向かった。
今回の会議は私を主として、数人の仲間と行った大きな仕事の報告会。
半年前から企画し、一週間ほど前に重要企業との契約が無事決まり祝賀会をしたばかり。
そう、例のあの飲み会。
だから、このミーティングではあれからずっと避け続けていた松橋先輩と、久々に顔を合わすことになる。
はあ・・・正直、足が重い。