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166 バイト紹介2


 最後は残った一人を連れてリィナ雑貨店へ。魔石特需のせいかお店は見たことない大勢のお客さんでごった返している。

 流れ者と呼ばれる外から来た人が多いような。


「着いた。おばちゃんを呼んでくるから少し待ってね」


 忙しそうなおばちゃんに声をかけるタイミングを窺ってると、慌てた様子で背中を叩かれた。


「アニキ、商品を盗まれてます」

「え! どこ?」


 指さされた方向を見るけど人が多すぎて。


「あの膨れた鞄のダガーを持ってる人です!」

「分かった。ありがとう」


 ダッシュで近づいた。

 のはいいけど、ちょっと緊張。


「あ、あのー」

「なっ·····なんだ? ガキ」


 逃げるか、誤魔化すか迷ってる、そんな反応。


「その鞄の中を、見せてください」

「てめえ。まさか俺を疑ってるのか?」


 で、脅してきた。


「·····はい」

「表へ出ろ」


 こくんと頷くと、暇な客達が周りに集まってきて、いつの間にか僕らは見世物に。

 きょろきょろするけど、助けてくれる人は居なくて、ひそひそ声が耳に入ってくるだけ。


「あのガキ可哀想にな」

「おいおい知らないのか、ああ見えて大魔導師さまだぞ。俺は少年に銀貨5枚」

「正気か? 乗った!」


 盗人が、目を丸くして僕を見た。


「なっ! お前、大魔導師なのか!?」

「そうです」


 おおー、肩書きってすごいかも。


「くそっ」

「今なら決闘は無かった事にしてあげますけど、どうされますか?」


 ざわっとギャラリーから、戦えよって不満げな視線が刺さるけど、知りませーん。

 ふふふ。

 ここは平和に。

 あっ·····駄目っぽい。


「待てよ。そういえば、お前を討伐戦で見てないぞ。さては情報系だな。それに、俺は魔法を唱える暇なんて与えねえぞ」


 ファイティングポーズをしてきたから、仕方なく電撃棒を伸ばすと鼻で笑われた。

 でも、これが無いと手加減が出来ないし。


「えいっ」


 へろへろした先制の一撃は空を切る。


「遅せー。そうだ! その玩具は没収してやろう」

「あっ」


 ニヤリと馬鹿にした顔で、武器を奪おうと掴まれ、


「びびびび」


 ああー。

 ゴブリンみたいに泡を吹いたので、死なせないように転がして、電撃棒をジャコッと短くして収納してあっさり勝利。

 便利すぎるな。

 馬鹿判定棒ゴブリンチェッカーと名付けようか。


「おおおおー!」

「賭けは俺の勝ちだっ」

遺失魔道具アーティファクトを持ってるなんて聞いてねえぞ」


「アニキ、さすがです ! こいつ、こんなに盗んでました」


 スラムの子が、嬉しそうに盗人の鞄を漁って証拠を見せてくれたので一件落着かな。

 領軍の人に引き渡そう。

 それから、店で忙しそうにしてるおばちゃんに報告っと。


「あのー」

「なんだい?今忙しい あらっエクスくん。エクスくんじゃないかい」


 疲れが見えて心配です。


「盗人を捕まえました」

「エクスくんが!? 危ない事しちゃダメだよ」


 心配してくれるなんていい人だ。


「あはは。秒殺でしたけど」

「ふふ。強がって、もう。 店は閉めようかね。どうも人手が足らなくて」


 会計待ちの人達から不満げな視線がして、ぞわぞわ。


「良ければ、手伝いましょうか?」

「エクスくんありがとう。 でもね、無理はしなくて良いんだよ」


 意外だった。限界な癖して僕のことを思ってくれて嬉しい。今度は僕が驚かす番だっ。


「はいっ。手伝うのは、この子です」

「よ、よろしくお願いします」


 生贄を捧げると、びっくりした嬉しそうな顔。


「え、エクスくん」

「ふふふ」


 次のひと言に心臓を掴まれた。


「紹介業を始めたのかい?」

「ち、ちがいます」


 こんな仕事があるなんて知らないよっ。


「あはは、いつものエクスくんで安心したよ。また暇な時に遊びにおいで」

「分かりました」


 ふうっ。


「エクスくんなら、永久就職してくれても良いんだよー。もれなく母娘スライム枕つき。エクスくんんー」


 手をひらひら振ってさよならだ。

 店を出ると、大きな影に追いかけられた。


「おいっ、待てって」

「なんでしょう?」


 振り返って見上げるとさっき僕に賭けていた男の人だ。なぜか嬉しそう?


「ファイトマネーだ。勝たせてくれてありがとう大魔導師さん!」

「どうも」


 まさか、これも仕事だった。

 剣闘士グラディエーターデビュー。

 手のひらで踊る銀貨1枚は、E級の指名依頼料金をちょっと超えてて震える。

 違いますよね?



 夕食時、それが魂の色に出てたららしくてくま吉が聞いてきた。


「どうしたんでい?相棒」

「僕は今日、働いたかも」


 不思議そうに見つめ合うくま吉とルカ。


「良いじゃねえか、主?」

「エクスは少し疲れてるのよ」


 ルカに、ナイフでお皿のお肉料理と一緒に僕のくだらない悩みは斬られた。

 剣闘士エクスくんを、優雅に一刀両断。

 家にチャンピオンがいた。



挿絵(By みてみん)

ガンガンONLINE



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