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143 フール討伐隊2


 少し時を戻して、正門側。

 援軍の冒険者達は弱音をはきだした。


「くそっ、迷い木が減らねえ」

「奥からどんどん湧いてきやがる」

「フールに勘づかれたか?」


 順調に思えた街道奪還作戦が、上手く行かなくなってきたからだ。


「やはりマーラがいなくては」

「ふざけるな。あれ以上、デカ乳女にでけえ顔をさせてたまるかっ」

「そうだ」


 息はぴったり。

 少し火力が足りないが、フールが出てこないならば押し勝てるそんなバランス。


「くくく、力を見せようじゃねえか」

「そうだ。おらっ反撃すっぞ」

「フールはぶっ殺す」

「「おおーっ!」」


 背後がピカッと光った!


 遅れて轟音。


「うわあああ」

「きゃあ!」


 可愛く悲鳴を上げてウラカルに抱きつく可愛くない姐さん。と可愛い男。


 揺れ。

 振り返ると遠くで立ち上る太い無数の煙。


「なんだ?何が起きた」


 マーラが戦っていた前線の辺りで起きた異変に、皆ガクガクと足が竦む。


「魔王とは、あれ程の力を持つのか!?」

「待て、まだ分からない」

「何がだ!アレを見て。お前の脳みそはゾンビなのか」

「マーラかもしれない」


 希望に縋るようなセリフ。

 言った本人すら信じてはいない。

 逃げて命を拾うか、死んで散るかの2択。ゾンビになれる3択めも。

 迷っている。いや、誰かが撤退と言い出すのを待っているような空気。

 そんな中、口を開いたのはウラカル。


「くくく、戻るぞ。あの街にはまだ手下と大魔導師のエクス先生がいるからな」


 はっ?お前は真っ先に逃げ出しそうなキャラだろと、これには一同面食らう。


「な、なんだと。序列11位の働かない大魔導師はそれほどの」


「行くぞ」

「はいよっ、あんた格好良いよ」

「流石ですボス」


 こう見えて彼はスラムの王。

 ゴミのようなすぐ裏切る小悪党にも曲げられない信念があったらしい。

 命知らず野郎のリョグが合わせて続く。


「へっそうだ。フールもさっきの一撃で疲弊してるかもしれないしな。裏切り者はさっさと消えろ。魔王を前に裏切られても困る」

「くそっ格好つけやがって。それは俺らのセリフだ」


 腕に覚えのある者は死を覚悟してリョグの背中を追った。

 残った賢老ダルフが未だ迷っている半数の援軍の冒険者達に口を開く。


「若者は先が見えておらんで困るの」

「と、言いますと」

「引けばまた戦える。不利な状態で戦うのは愚か者のする事よ」

「おおっ流石は賢老ダルフ」

「我らは逃げるのでは無い。いったん引くだけ」

「はいっ」


 チキンどもは逃げ出した。

 常識的な判断。

 しかしながら、エクスの寵愛を受けたマーラに常識は通用しないので、生き恥を晒す事になる。お可哀想に。




 □□□□□□□□



 フール陣営。

 人間を逃がさないよう、仮拠点に移動して迷い木を再配置していたフール達は、偶然にもマーラの一撃を回避していた。

 協力して総攻撃を掛けてリョグが命を掛けて道連れにしていれば結末は違ったのかもしれない。


 小さな羽の悪魔は、突如起こった轟音に、焦りながら魔界テレビのチャンネルを合わせるが、画面は砂嵐。


「映らないよ。映らない。なんで?このポンコツ!」


 斜め45度にチョップ!

 映像が戻ってきた。


「映った?え?」


 チャンネルを間違えたかと思うほど、荒廃した土地が広がる。画面に燃える迷い木を見て、戦力値ボードを確認したら半分以下に。


「くっそ、なんだよ。マーラは何をやったんだ?ヤバいヤバすぎる。どうしようフール?」

「エクスくううん」


 だが、知能をやられているフールは、たまに正気を取り戻す時以外はこんな感じ。自分の世界に戻り無口な魔物製造機へと戻った。


「うわあああ!人間は弱いから傀儡にして、頭いいって思ったのに」


 ひくひくと鼻が動いた。

 濃密な恐怖の感情がフールという意識の下に流れてきたからだ。

 それは街の人達の恐怖の感情。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛何これ、おいちぃ!!!」


 恍惚の表情でびくんぴくん震える。

 これこそが魔王が人間を襲う理由。


「人間はやっぱり恐怖の味が最高お」




漫画1巻発売2022/1/12まで

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] フールは鉱山に居るギルマスと同程度の知力ってところか(最大限の侮辱)
[一言] ヤバイなこのフール、言動がキメているw
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