142 連撃のマーラ5
「うぷぷ、森に入ってこないのかな?」
魔界テレビでお菓子を食べながら様子を見られるなか、マーラとアリエスは森の入口に立った。
魔法陣を描いた後は儀式でも始めるのか、座り込んだままなかなか動き出さない。
「たったの2人?それに全然入口から動かないよ」
つまらなそうにチャンネルを切り替えると、反対側の領軍が守ってる正門の前では他のメンバーが暴れていた。
ウラカル達が炎をチラつかせ、援軍の冒険者が少しずつ迷い木を切り倒していく。
このままでは閉じられた道が完全に開かれるのも遅くないだろう。
「うううう、駄目だよ。せっかく人間が逃げないように囲ったのに。逃げちゃう」
街から餌が減るのは大問題。
幸運なことにフールの興味はマーラから完全に離れた。
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貧乏くじを引かされたアリエスが不安そう。なんで私がここに。
「今日はマーラさん。よろしくお願いします」
「悪いな、私がエクスの惚気話をしてしまったせいで」
たしか、効果時間10分のバフを1ヶ月延長する御伽話のような人。本当に実在したんだ。
会話が止まったまま森の入口で魔法陣を描くのをお手伝いし、ようやく完成した。
「マーラさん。私達2人だけですよぉ。彼氏もいないのにまだ、死にたくないです」
「心配するな、アリエス。今日は一撃放つだけだ。運が良ければそれで全て片がつく」
何を言ってるのだろう。
「一撃?」
「戯曲では、物語を盛り上げるため大技は最後に使うのがセオリーだが、それって効率が悪くないか?」
効率厨の女は最速アタックを狙うらしい。
「でも、どうするんです?」
「花火を知っているか?」
不穏なマーラのご機嫌をとるアリエス。
「聞いたことは」
「無数の爆発球を1つに束ねてドデカい花火を打ち上げる。儀式魔法、八尺玉」
マーラが勝気に笑い瓶から高そうな触媒の粉を撒くと蝋燭に火をつけたのを見てゲンナリするアリエス。
これ時間のかかるタイプ。
それから2時間。
「あのー。マーラさん?マーラさん。マーラさん帰りましょうよ」
「·····」
が、瞑想状態のまま返事はかえってこない。魔王の襲来に怯えて精神をすり減らしていたアリエスだが魔法陣が光りだしたのを見て顔を輝かせる。
「マーラさん。もしかして?」
「時は満ちた」
ついに、マーラがカッと目を開き立ち上がった。
「良かったです!えっと私は何を」
「見てくれればいい。気絶せず見ててくれるだけでいい」
連撃のマーラ!
本領発揮。
推して参るッッッ!
「は、はい。覚醒」
「さて、効率化の辿り着く先。エクスと私の共同作業、超初級魔法の最大攻撃を見るがいい」
ポウッと爆雷球が生まれた。
魔法使いとの戦いでメインでは無いものの決め手になりうる中級攻撃魔法。
ポウッポウッポウッポウッ。
それが次々と放たれて、威力を蓄えたまま上空に滞留して集まっていく。
「ひいっ」
ブツブツと魔法を練り続けるマーラの横でアリエスが青褪める。
こんなたくさん見たことが無い。
すでにヤバそう。
暴発したらどうするんですか?
「マ、マーラさんんんん?」
ゾーンに入ってるのか、ブツブツと呟き相手をしてくれない。
尽きないエネルギーは大勢の信徒を集めて行う儀式魔法をたった1人で賄える。
さらに速度が増し爆雷球が空中へと集められていく。
ポポポポポポポポポポポポポポポボポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポボポポポポポポポポポポポポポポポ
「も、もう十分ですからっマーラさん」
涙目で縋り付く。
マーラの髪が静電気で逆立つ。
アリエスも同じ。
高まりすぎたエネルギーがプラズマ化して大気が鳴き出した。
ブブブブブブブブ、バチバチバチバチィッ、
「し、死にたくないよおおお」
アリエスがマーラの足元にしがみつく。
気絶しちゃいたい。
だけど、さっき自分でかけた覚醒がそれを許さない。
「超初級殲滅魔法、八尺玉」
万雷。
視界が白くなる。
ひゅおーっと音がして。
色が消えた世界で、目の前にある全ての迷い木が同時に砕ける。やや遅れて殴るような体の奥に響く轟音。そしてバチバチと至るところで火柱が上がる。
フールの拠点を含む6割が消失。
迷い木だったものは、松明に、いや狼煙に近い何かに。
「見てくれたか」
「ふひい」
色が戻ってきた。
チカチカと燃える木々が目に痛い。
耳はキーンとして何も聞こえない。
森は焦土に。
「ん?」
「うわわん。マーラさまっ殺さないでくださいッ!」
赤く燃える髪は、まるで魔王マーラ?
「?」
「ひいいっ」
魔導師とは自然災害。
「これで、仕留められてるといいんだが」
貴重な触媒を使ったため、切り札の一撃。
「やりましたかね?マーラさん」
アリエスちゃんは呟いた。







