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Episode17-3.どうやらあの子には好きな人がいるらしい。

 ギャル系のマユミがまさかこんなところでコスプレイヤーの写真を撮っているなんて思わなかった。

 学校でのマユミのギャルっぽい印象とは随分とかけ離れた場所にいるもんだ。

 って言うか、それ以前に美咲がこの目の前の女性をマユミって呼んだだけで、もしかしたら別人なのかもしれない。


「おのれ!このマユミの偽物め!ギャルのマユミをいったいどこへやったんだ!?いや、むしろ今のマユミが本物であってほしい!」


「誰が偽物よっ!?」


 おっと、ついつい本音が出てしまった。

 うん、この反応はマユミだな。

 俺の言葉に激高したマユミは大きな声を上げて俺に抗議してくる。

 って思ったら急にばつの悪そうな表情に変わった。

 どこからどう見ても明らかにギャルメイクを勘違いしたかのようなケバさのマユミよりも、今のマユミの方が自然だし、それに言動とかに目を瞑ればかなりの美貌だ。

 それにしても俺の周りの女子って、性格とかを抜きにすると相当レベルが高いと思う。


「あ、あの……もしかしてどなたかと勘違いされてませんか?私はただのしがないコスプレファンなんですが……」


 今更誤魔化すのはあまりにも苦しすぎないか?マユミ。


「マユミさん、どうかしましたか?…………ゲッ!……ミサ姉!」


 おそらくマユミの前にいたコスプレイヤーが大翔くんなんだろう。

 しかもマユミとは知り合いっぽいな。


 そんな大翔くんは美咲を見て狼狽えている。ああ、何だか彼がかわいそうに思えてきた。

 そして美咲の方はって言うと、毎日のように顔を合わす俺さえも一度も見た事のない、かなりニヤついた表情で大翔くんを見る。


「へぇ……ハルってお姉ちゃんに対してそんなゲッ!だなんて、いけないんだぁ。後でお仕置きしなきゃね♪」


 って委員長さん、怖い怖い!せっかく大翔くんが楽しそうにしてるってのにさ。

 言われた方の大翔くんは、何だか縮こまってるし。


「まあまあ。俺達もせっかくここまで来たんだから、色々見てこうぜ?な、美咲?」


 俺はそんな雰囲気の中、居たたまれなくなり、美咲に他のコスプレイヤーさんも見るように促し、一端その場を離れたのだった。





「あはは……。ハルもマユミもすごく慌てて。あー、楽しかった」


「俺は何だか大翔くんがかわいそうになってきたよ」


 美咲って身内に対してはあんな一面があるんだな。それとも相手が年下の従兄弟の大翔くんだからか?

 どうやら普段、学校で見せるクラス委員長の優しい姿は外面だったらしい。

 でも同じ外面分厚い系女子のアンでも、俺をからかう事はあっても萎縮までさせる事はないぞ?


 今日は美咲やマユミの知らない一面を見たりと色々興味深い事が多い。

 そんな美咲だけど、あまりコスプレに興味などはないらしく、他のコスプレイヤーさんの姿を見ても「へぇ」とか、「すごいねぇ」とかは言うんだけど、目を輝かせたりとかそういった事は無いようだ。

 結局俺達はイベントの終了時間の確認だけし、会場を一旦離れて色々とお店を回ったり食事をしたりして時間を潰し、そしてイベントの終了時間にまた戻ってきた。もう完全にデートだな、こりゃ。



 そして俺と美咲、マユミ、大翔くんは4人でカフェに入った。

 1人ニコニコする美咲にばつの悪そうなマユミ。そして大翔くんはコスプレ姿を身内に見られた恥ずかしさからか、マユミと同じようにばつの悪そうな顔。

 まるで刑事ドラマの取り調べシーン。ただこのカフェにはカツ丼なんて無いけどな。

 ちなみに俺は何だか大翔くんのその居たたまれない気持ちがわかるような、そんな気がして俺も同じように居たたまれない気分になる


「ハルぅ?別に自分の趣味なんだから、恥ずかしがる事ないじゃん」


 そう言いながらもニヤニヤした表情で大翔くんを見る美咲。

 まあ確かに言ってる事は至極真っ当なんだけど、それならその表情をやめてやれよ、美咲。

 そんな大翔くんだけど、身長は美咲と同じぐらいかな?

 結構かわいい系の顔をしている。モテそうだな。


「身内に見られるのが恥ずかしいんだよ!それぐらいわかってくれよ!」


 大翔くんが真っ赤な顔で美咲に言うけど、美咲はわかってて言ってるんだよな。

 本当、美咲って身内にはこんな感じなのか?それともこの態度は大翔くんに対してだけなのか……。

 俺はアンの顔を思い浮かべる。

 本当に俺って良い姉を持ったもんだ。


「そう言えばさ、マユミはコスプレが好きなのか?カメラも結構本格的だよな」


 大翔くんがかわいそうになってきた俺は強引だとは思ったけど話を変える。

 するとマユミは急に立ち上がり、「ちょっと来てっ!」って俺の手を引っ張り、カフェの洗面所につれてかれてしまった。




「あのさ、あんた、私の後つけていったい何する気?まさかこれをレオくんに言うつもりじゃないでしょうね!?」


 おいおい、言い掛かりが過ぎるぞ?

 マユミって本当に思い込みが激しいっていうか、なんて言うか……。


「別に後なんてつけてねえよ。美咲の付き合いで来ただけだ。それにマユミがレオに言われたくないってのなら言うつもりなんてないしな」


 するとマユミは俺を睨みつける。


「じょ、条件は?お金?それとも……ぜ、絶対にダメだからね!私の体はレオくんのものなんだから!」


 いや、体はレオのものではなくてマユミのものだろうし、それ以前に俺がそんな鬼畜に見えるのか?

 本当にしょうがないやつだな。


「別に何も求めてねえよ。それにさっき美咲が大翔くんに言ってた通りだ。別に悪い事してる訳じゃないんだから、堂々としてれば良いじゃないか。俺だって趣味でぬか床してるけど、別に隠してる訳でもねえし」


 コスプレイヤーの写真を撮るのってそんなに恥ずかしい事か?

 俺は立派な趣味だと思うぞ?


「だって……こんな趣味、私のキャラじゃないじゃん」


 マユミは俯いて顔を逸らす。まさかあのマユミがこんなかわいい仕草をするなんてな。学校でのマユミからは想像がつかない。


「でも俺からしてみれば、学校でギャルっぽい恰好をするマユミの方が無理してるみたいに見えるけどな。本来のマユミって実はこっちの姿なんじゃないか?」


 だいたい普段のマユミってケバさが限界突破してるし。

 明らかに生粋のギャルではなく、ギャルというものをイメージでこういう感じって思い込んで真似しているような……。そんな印象を受けるんだよな。


「だってさ……。レオくんってギャルっぽい女の子が好みって聞いたんだもん……」


 それは初めて聞いたな。

 だいたいレオとは1年からの付き合いだけど、女の子の好みの話なんて一度もしたことない。

 ちょっと確認してみようかな?

 俺はスマホを取り出し、レオにrineを送る。


《なあ、レオってギャルみたいな女の子ってどう思う?》


 すると返事は即時に返ってきた。ちょうどスマホを見てたんだろうな。


《うーん。もちろん人によるんだろうけど、ちょっと怖いかな?どうして?》


 俺はその返信を確認すると、そのrineの画面をマユミに見せる。


「本人は怖いと思ってるらしいけど?だいたいレオがギャル好きなんて、一体どこの何情報だよ?」


 するとマユミは俺のスマホの画面に映るアイコンを見てレオ本人のアカウントだって確認すると、驚愕の表情を浮かべる。


「えっ……私、ミクからレオくんがギャル好きだって聞いて……それで……」


 そういう事か。

 思い込みの激しいマユミの事だ。知り合いに言われて信じ込んでしまったんだろうな。


「それって言われたのっていつだ?」


「え……春休み……」


 ああ、よくわかった。おそらくそれは4月1日だったんだろう。

 それを信じ込んだマユミは慣れないギャルメイクに手を出したんだろうな。

 そのマユミの言うミクって人もマユミで遊び過ぎだろう。


「俺は今のマユミの方がよっぽど自然に見えるけどな。それ以前にいくらレオが好きだからって、それに合わせて自分を偽っても疲れるだけだろう。まあ最後はマユミが決める事だろうけどさ。マユミもレオの事が好きなら、もっとちゃんとレオと話せよ」


 俺はそれだけ言うと、踵を返す。


「さ、行こうぜ?早く戻らないと2人が不思議に思うぞ?」


「ちょっと待って!」


 俺はマユミに呼び止められる。

 そしてもう一度振り返るとマユミは真っ赤な顔をして俯いていた。


「あ、あの……ありがと……」


 俯き加減のマユミは礼を言うと、すぐに顔を上げて俺を真っ直ぐに見てビシッと人差し指を差す。


「か、勘違いしないでよねっ!?今回は感謝するけど、あんたが私のライバルだって事は変わらないんだからね!」


 ……ライバルでもないんだがな。

 まるでテンプレのようなツンツンっぷりだけど、こっちの方がよっぽどマユミらしく思える。

 でも嫌いな相手にでもちゃんと感謝を伝える事が出来るなんて、やっぱりマユミって良い奴なんだろう。


 こうして俺はマユミの勘違いをひとつ正して洗面所を出て、そして美咲達の待つ席へ戻ったのだった。

 あ、そう言えばレオへの返事、忘れてるな。また帰ったら返事しとこう。

 ここまで読んでくれてありがとうございます!


 ブックマークやご感想などはお気軽にどうぞ。


 それではまた次回♪

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