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Episode15-4.どうやら俺は不安らしい。

 終わった後のタマはどうしても眠気が勝ってしまうようで、いわゆる終わった後の感想会みたいなものが出来ない。

 ネットで見るとそう言った反省会のような事は女性の方が好きっていうイメージがあるんだけど、おそらくタマも俺もまだまだ経験が少ないせいか加減がわからず、結局最後は体力勝負って事になるのかもしれない。

 タマは俺の横で幸せそうな表情をして眠っている。

 ああ、だけどコンタクトレンズをしているんだよな。ちゃんと起こしてあげないと。

 俺はそう考えつつもそれを行動には移さず、タマの髪をかきあげたり、頭を撫でてみたり、頬や鼻の頭をツンツンと指先でつついてみたり……ダメだ、ハマりそう。


「んん……」


 寝ているタマを弄くってると、少し寝苦しそうにタマが寝返りを打つ。

 本格的に入眠する前に起こさないとな。

 って事で俺は惜しみつつもタマの肩を揺らして起こす。


「あ……アルくん……」


「おはよう、タマ。って言っても今夕方だけどな」


 タマはまるでまだ夢を見ているような、そんな瞳で俺を見る。

 そして少ししたらおそらく自分のおかれたその状況に気付いたのだろう。

 顔を真っ赤にしてすぐに掛け布団で体を隠す。って言うか、そろそろ慣れろよ。


「あ、あの……わ、私……」


 タマは状況こそ理解しているっぽいけど、恥ずかしさのあまり混乱しているようにも見える。


 部屋の時計を見てみると、帰るにはまだ少し早い時間。まだ少しならゆっくり出来るな。

 そう考えた俺は、まだ恥ずかしそうにしているタマの肩を抱き、横からキスをする。

 こうしているとちょっとぐらいタマにも余韻を楽しんでもらえるんじゃないかな?

 するとタマはすごく安心したような、幸せそうな表情を浮かべる。


「あの……私何度でも言います。私、アルくんの事が大好きです!」


 俺はそんなタマをとても愛しく感じ、そしてタマが少し苦しく感じるんじゃないかと思いつつも、ぎゅっと抱きしめるのだった。




「気をつけて帰ってくださいね」


「ああ、また明日な、タマ」


 タマは家の前まで出て俺を見送ってくれた。

 何だかそれさえも嬉しく感じる。

 そして俺は歩き出した。

 少しして振り返ると、まだタマは俺を見ている。

 それはそれで嬉しいし、今はまだ暖かいから良いんだけど、冬になったらやめさせないと体が冷えてしまうな。

 そして俺が大きく手を振ると、タマも振り返してくれたのだった。






 そして翌日。

 2学期は2日目からがフルタイムの授業だ。

 昼休み。

 昼食を食べ終わった俺は5限目が音楽の授業ってのもあって、音楽室に移動する。

 あれ?移動する俺達の前にタマがいる。タマも教室移動なのだろうか?片手には教科書やノートを持っているな。

 しかも男子と歩きながら、にこやかに話してるし。


「あっ、タマちゃんが男の子と一緒にいるよ、アルくん!」


 レオが珍しいものを見たような表情で俺に話しかけてきた。


「おおっ!?タマちゃんも進歩したんだねぇ。お姉さんは嬉しいよ」


 美咲もレオに続いて何だかニヤニヤしながら俺を見る。


「アルくん、これを浮気と勘違いしちゃダメだよ?」


 いや、さすがにこれだけでタマが浮気してるなんて言い出したら、彼氏持ちの女子は男と話すだけで浮気になっちまうし、俺もリアルタイムで美咲と浮気してる事になる。

 さすがに俺はそこまで不寛容ではない。


「別に。それに俺以外の男にも慣れてもらわないと。あいつの今の目標ってバイトする事だからな」


 俺がそう言うとレオが少し心配そうな表情を浮かべる。


「でもタマちゃんがアルバイトをするとなると、学校帰りで駅周辺になりそうだよね。何だか心配」


 レオはタマと同じ町に住んでるからあの辺りの夜の暗さを良く知っている。

 俺だって心配だよ。もちろんレオも含めてな。


「ねえ、アルくん、タマちゃんに声掛けてあげなよ」


 美咲がそんな事を言ってくる。

 でもこれって俺が話しかける事で話の腰を折ったりしないだろうか?

 せっかくタマが俺やレオ以外の男子と話してるんだ。

 邪魔するべきじゃないだろう。


「いや、良いよ」


「そう?」


 美咲はそんな俺を不思議そうな表情で見る。


「せっかく頑張って男子と話してんのに水を差すのも悪いだろ。どうせ一緒に下校するんだし、今声を掛けなくても良いしな」


 美咲に理由を説明する。

 けど美咲はあまり納得出来ないみたいだ。


「うーん、まあアルくんがそう言うならしょうがないけどね。でも私が例えばタマちゃんの立場だったら、やっぱりそれでも声を掛けてほしいかな?どうとも思ってない男子と話すより、どんな話題だったとしても好きな人と話す方が楽しいし」


「へぇ……そんなもん?」


 俺としては自分に興味のない話題だと例え相手がタマだろうと眠気を感じるかもしれない。

 まあタマってそれほど口数が多い方でもないし、俺も話が苦手って訳では無いけど、そこまでお喋りでもないから、実際にはそんな事はないんだけどな。


「そうなんだよ。アルくんはまだまだ、女心の理解が足りてないね」


 何故か美咲はそんな事をドヤ顔で言う。

 まあ美咲もその有り余る力以外は完璧に女性だし、俺よりはタマの気持ちがわかるんだろうな。


「美咲はそう言ってるけど、そうなのか?レオ」


「しっ、知らないよっ!もうっ、なんでそれを僕に聞くのさっ!?」


 冗談っぽくレオに尋ねると、レオは不機嫌な表情で俺に抗議する。

 そしてそれを見ていた美咲はケラケラと笑うのだった。

 ん?あれ?一瞬だけど、タマがこっちを振り向いたような……?まあ気のせいか。





「アルくーん」


 放課後、いつものようにタマがやってくる。

 そしていつも通りレオや美咲と挨拶を交わし、俺とタマは学校を出た。


「そう言えばさ、昼休み、廊下で見たんんだけど、男子と話してたじゃん。ちゃんと話せたか?」


 俺はレオや美咲と一緒に廊下で見掛けた事をタマに話す。


「あ、はい。移動で教室を出る時に話しかけられまして……あの……色々雑談した後、2人で遊びに行こうって誘われちゃいました」


 なにっ!?いきなりな展開だな。

 でもそれはある程度覚悟が出来ていた。

 クリスにのせられてイメージチェンジに成功したタマはクリス同様に飛び抜けて美人だ。

 B組のみんなもその変身っぷりには驚いた事だろう。

 そして男性恐怖症もある程度緩和された事で、ついにタマはモテ女になったって感じかな?

 その辺りは彼氏としても嬉しいんだけど、不安もあったりする。


「あっ、もちろんお断りしましたよ?アルくんを裏切る事なんて出来ませんから!」


 タマが何故かドヤ顔で胸を張る。

 うん、その点は俺も彼氏として安心だけど……。でもなんて言うか、タマの純粋な笑顔を見ていると、何だか俺の胸に突き刺さるものがある。

 このしくしくとした胸の痛みはやはりタマに対する罪悪感なんだろうか?

 俺ってこんな罪悪感を抱えたままで、これから先、タマと付き合っていけるんだろうか?


「でもアルくんも人が悪いです。私、アルくんが声を掛けてくれるの、待ってたんですよ?」


 あれ?タマ気付いてたんだ。しかも声を掛けられたかったって……美咲の言ってた通りじゃないか。


「いや、タマの邪魔しちゃ悪いなって思ってさ。次からは声かけるわ」


 少し言い訳染みた事を言って、俺はタマに釈明をする。

 するとタマは嬉しそうに笑うのだった。




「アルくん。今日もありがとうございました!それじゃ、また明日」


 そう言って今日もタマは駅に消えていく。


「……俺はどうしたら良いんだよ……クリス」


 何故か名前を呟いてしまう。

 俺の中で生まれた小さな不安。それが膨らんでいくような、そんな感覚を感じながら俺は商店街に向かったのだった。

 ここまで読んでくれてありがとうございます!


 ブックマークやご感想などはお気軽にどうぞ。


 それではまた次回♪

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