Episode11-4.どうやら俺達は見つかってしまったらしい。
「タマ先輩、委員長先輩、男女先輩。3人とも、今日はありがとう!」
チコが帰ろうとする3人に挨拶するけど、委員長とレオは微妙な笑顔。
チコ、2人の先輩の呼び方、もうちょっと考えようぜ?
そして俺はいつも通りタマとレオを送るんだけど……。
「委員長、結構荷物あるのに、わざわざ駅まで来て良いのか?」
すると委員長は笑顔で「構わないよっ!」って返してくる。
いや、本人がそれで良いなら良いんだけど……。
まあいくらそんじょそこらの女子より力があるって言ってもやっぱり女子だしな……。
「委員長、はいバンザーイ!」
やはり委員長もお風呂に入る時とか上を脱ぐ時にそう言われて育ってきたんだろうな。やはり深層心理、日本人のDNAに刻まれた『バンザイって言われたら両手を上げる』って行動は一緒らしい。
俺は両手を上げた委員長のリュックをヒョイと奪い、左肩に掛けた。
「あ……ありがとう、アルくん」
基本的にパーティーグッズってプラスチック製品が多いからか、案外軽い。
ただ委員長は路上でバンザイをしたのが恥ずかしかったのか、少し顔を赤くして俯くのだった。
駅に着いたのは10分後。いつも通りの時間でもやはり真夏だけあってすごく暑かった。まだ幾分早い時間でもあるもんな。
「ん、委員長、これ返すわ」
俺はリュックを委員長に手渡すと、委員長はそれをまた背負う。
「うあっ、ちょっと背中が生ぬるくて変な感じ。アルくんって結構体温高め?」
んな事聞かれてもわからん。
ただ委員長は特に嫌がってるような表情を見せなかった。
「じゃあね、2人とも!アルくんはまた明日!」
そう言って立ち去ろうとする委員長を俺は呼び止める。
「あのさ、委員長。もし家を教えてもらえたら、明日にでも荷物持ってくぞ」
パーティーグッズはまだいくつかあって、委員長は明日また取りに来る。
「うーん……良いの?タマちゃん」
何故俺ではなくタマに聞くんだ?って一瞬考えたけど、委員長はタマがそれで心配しないかを気にしたんだろう。
「え?えっと、なんで私に……?」
タマはタマで、そんな委員長の気遣いに全く気付いていないみたいだ。まあ俺もそうだけどタマも恋愛初心者だもんな。
あまりピンと来ないのかもしれない。
「委員長、タマには俺から説明しとくからさ。また場所は地図アプリで送っといてくれ」
電車の時間が近い事に気付いた俺は、取りあえず電車に乗ることを優先し、委員長に別れを告げるのだった。
そしてレオを送り届けた後、俺はタマに、何故先ほど委員長がタマに尋ねたのかを説明した。
するとタマは本気で全く気付いてなかったようで、ハッとした表情を浮かべる。
「あ、あの……。き、キスとエッチさえしなければ、大丈夫です……」
そしてそれにやっと気付いたタマは気付かなかった事がすごく恥ずかしかったのか、真っ赤な顔で俯きながらそう告げてきた。
おいおい、それじゃハードル高過ぎて、簡単にくぐれそうだ。まあ、越えようともくぐろうとも思わないけど。
どうやらタマは今の時点では彼氏を束縛するタイプじゃないらしい。でも俺が浮気とかしてしまったら、もしかして豹変するのかも知れないな。……気をつけよう。
などと考えていたら、タマの家に着いた。
「あの、今日もありがとうございました」
そう言ってタマはいつものように唇を差し出す。
タマが誘って来ないって事は、今日は家に母親がいるのか、それとも何かしら事情があるんだろうな。
そう言えば、俺の母さんとタマの母親って知り合いっぽいんだよな。
それってタマに話した方が良いのだろうか?まあ付き合いが長くなるうちに追々話す機会もあるかもしれないし、今は暑いから別に良いか……。
俺はそんな事を考えつつ、タマに口付けをして、この日は別れたのだった。
「き、キスとエッチさえしなければ、大丈夫です……」
帰り道、夕日に変わるにはまだ早い時間、俺は先ほどのタマの言葉を思い出していた。
そうだよな。やっぱり……キスはアウト、だよな。
とぼとぼと歩きながら、俺はアン、そしてクリスの顔を思い出す。
胸のこのチクチクとした痛みはまだしばらく続きそうな、そんな予感を感じつつ、俺は帰路についたのだった。
翌日、俺は残りのパーティーグッズを集めて家を出た。
昨日に委員長から送られてきた家の場所を確認すると、思ってた以上にご近所さんだった事に驚いた。
我が家の建っている区画の裏側にかなり小さなローカル線が走ってるんだけど、その反対の一角だったのだ。それこそいけない事だけど、線路内を乗り越えて行ったら徒歩1分。
直線距離で50メートル程かな?頑張れば糸電話ぐらい通せそうな距離。いや、わざわざそんな事しなくても大声出せば聞こえるな、こりゃ。
線路と線路沿いの細い道が両側に1本ずつ走っているだけで、約16年もの間、お互い知らない者同士だったなんてな。あ、俺は6歳の頃にここに来たから10年か。
指定された家の表札を確認。『佐藤』の文字。いや、それでも日本一多い名字だ。慎重に慎重を重ねて近くにも『佐藤』がないか確認……よし、ここだけだ。
ピンポーン♪
「はーい、いらっしゃい」
チャイムを鳴らすとおそらくモニターの確認もせずに委員長は出てきた。
「はい、パーティーグッズの残り」
俺は紙袋に入れた数々のグッズを手渡す。
この中には俺が昨日掛けてみんなに笑われた髭付きの鼻メガネも入っている。
「うん、ありがとっ!」
「じゃあな、帰るわ」
ガシッ!
手渡した後は特に用など無いので帰ろうとすると、委員長に腕を掴まれてしまった。
いや、結構力強くて身動き取れないし、それに両腕でしっかりと掴むものだからちょっと柔らかいし。
「アルくん、一応佐藤家の家憲のひとつに、客人をそのまま帰らせてはいけないってのがあるんだけど。お茶ぐらい飲んでって!」
いや、委員長、こんな住宅地の明らかに核家族であろうこの佐藤家に家憲も何もないだろう。……多分。
しょうがない。昨日のタマとの約束はあるけど、大丈夫だろう。
「あ、今日ね、家に私1人だけだから。あんまり気を使わなくて良いよ?」
う、うん、大丈夫だろう……。
「今エアコン効いてる部屋ってここしか無いからさ。ここで待ってて」
そう言われて通されたのはおそらく委員長の部屋。
普通に女の子らしい、可愛らしい内装に、明らかにプライズゲームで取ったであろう縫いぐるみがいくつか棚に置いてある。
そして勉強机の棚には小さなサボテンの鉢が置いてある。
そう言えば女の子の部屋って、家族以外では入った事無いな。
まさか彼女の部屋より先に入ってしまうとは……。
「お待たせー」
委員長がお盆にお菓子と麦茶をのせて来て、部屋に置かれた小さくてお洒落なローテーブルにそれを置く。
「さ、どうぞ」
そう言われて俺は冷たい麦茶を頂く。外は暑かったけど、このエアコンの効いている部屋でいただく麦茶が一気にそんな体を冷やしてくれる。
そしてこの麦茶に癒されたのが委員長に伝わったのか、委員長は嬉しそうに微笑んでくれた。
俺は俺で堂々としていれば良いのに、どうも気まずい。
何だかんだで委員長みたいなかわいい女の子の部屋にお邪魔してるんだ。男子高校生として緊張するなって言う方が無茶ってもんだ。
「でさ、昨日、言われた事なんだけどさ」
そんな俺の緊張を知ってか知らずか、委員長は俺に話しかけてきた。
でも何か話をしていた方が緊張が幾分か和らぐので助かる。
「昨日?」
「うん、私の誕生日のちょっと前になるんだけど、買い物に付き合ってほしいの」
別にそれなら全然構わないんだけど、でもそれって浮気にならないんだろうか?
「うーん……それはどうなのかな?例えば近場の商店街とかなら……」
「ああ、タマちゃんには許可もらったよ?えっと、キスとエッチさえしなければOKなんだよね」
ってタマ、そんな開けっぴろげで良いのかよ!?
「って事で、うーん……今日は私、お留守番しといた方が良いと思うし、そうだね……今週の土曜日、7日で良いかな?」
スマホを見ながら委員長が勝手に予定を立てていく。
まあ暇だから俺はいつでも良いけどさ。
そんなこんなで俺と委員長は一緒に買い物をする事になったのだった。
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