Episode11-1.どうやら俺達は見つかってしまったらしい。
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それでは11話、スタートです♪
夏休みって言っても特に部活をしていない俺にとって毎日する事は変わらない。
3食作って勉強とぬか床の管理だ。
中学校までは普通に夏休みの宿題とかあったんだけど、高校に入るとないんだよな。
って事で、結局夏休みは自主的に勉強をちゃんとやるかどうかで他との差が出てくるんだと思う。
そう言えば、クリスから調べといてって言われてたんだっけ?幼稚園と住んでた場所か……。
って事で、早速それを知ってそうな人にrineする。
俺の実の母親の芹澤有希だ。
ちなみに俺の今の母親って、プリンセスキリハラになるんだよな。
それはそれで何だか不思議な感覚だ。
《俺が昔、鹿嶋で住んでた場所ってどこ?それと通ってた幼稚園教えて》
ちなみに母親は現在、市内の自動車部品工場で事務員をしてるって事だ。
現在の時刻は10時。多分すぐには既読が付かないだろう。って事で、取りあえず勉強する事で時間を潰したのだった。
お昼は家族全員揃った。
アンだったら友達も多い事だし外に遊びに行く事もあるだろうって思ってたけど、案外インドアだったりする。
何でも休みの日にまでみんなに愛想を振りまくのは面倒って事だ。
普段学校ではみんなに囲まれて歩いてるところをたまに見るけど、学校で見せるあの笑顔は仮面だって事を俺は知っている。
夏休み明けの体育祭の打ち合わせで学校に行く事がたまにあるけど、多分それがなかったら毎日家でうだうだしていたんだろうなって思う。
ちなみにチコはたまに遊びに行く事もあるけどそれでも基本インドア。
数日前に1度名古屋に友達と遊びに行ったきりだ。
奈緒はここのところクラスの友達と一緒に自由研究をしているらしい。
自由研究って懐かしいな。俺は小学生の頃、野菜毎のぬか漬けの漬かり具合を発表した事があった。
ちなみに奈緒の今年の研究テーマは『再生野菜の研究』らしい。俺には豆苗ぐらいしか思い付かないけど、豆苗以外にもレタスやネギとかも、再生するらしい。何だか実益のありそうな研究だ。
って言ってももう殆ど再生してきていて、あと数日の観察で終わるらしい。
昼食後、部屋に戻りスマホを見ると返信が来ていた。
《あんた普段連絡してこないくせに唐突に連絡してこないの!教えてあげるけど、その前に顔を見せるとかあるでしょ!?今度の週末、暇なら奈緒と一緒に顔を見せなさい!奈津を迎えに行かせるから》
何だか説教をされてしまった。まあこの反応は予想してたけどさ。
って事で、次の週末は母親と会う事になったんだけど、まあ暇だったし別に構わない。
って事で、数日後のお昼前。
ピンポーン♪
玄関のチャイムが鳴る。
扉を開けるとそこには芹澤先生……って言うか、今は学校じゃないから姉ちゃんで良いか。
「お邪魔しまぁす。って言うか、何、この家の形」
姉ちゃんはリフォーム後の家を見るのは初めてのようだ。
そう言えば父さんがプリンセスキリハラと結婚したって話は言ってあったけど、家が繋がったって事は言ってなかったもんな。
俺達4人で暮らしてるのは言ってあるけど多分どっちかの家で住んでるんだと思ってたんだろう。
「で、父さんとプリンセスキリハラは?まだ海外?」
「うん、今ね、トバゴ島ってとこみたい」
俺の代わりに奈緒がスマホの画面を見せて説明してくれた。
「ふーん、ついに地球の裏側行っちゃった訳かぁ」
さすが社会科教師。トバゴ島って言われてパッと場所がわかるってそれはそれですごい。
「なっちゃん、ゆっくりしていってね!」
アンが姉ちゃんに冷えた麦茶を出す。
「ありがとね、アンちゃん。チコちゃんも元気そうじゃん!」
「うん、奈津姉もね!」
同じ学校の教師と生徒って関係は俺やアンと同じなんだけど、生徒会のアンや実際に授業を受け持っている俺とは違い、姉ちゃんとチコの接点ってあまりない。
考えてみたらアンもチコも、プライベートで姉ちゃんに会うのって、離婚後は初めてかもな。
積もる話もあるのかもしれない。
「じゃ、アルと奈緒の2人を借りてくわね」
みんなで30分ぐらい話をして、そして俺と奈緒は姉ちゃんの車に乗り込んだのだった。
姉ちゃんと母さん暮らす家まで車で15分程。
俺も奈緒も何度かお邪魔した事があるんだけど、いわゆる団地の中古住宅だ。
近くにはバス停こそあるんだけど駅がない。
バスの本数も30分に1本程度で終わる時間も早いから、この辺りの住人の移動は基本的に自家用車になる。
って言うか、この市内ではまだまだそういう地域が多い。思考停止的に公共交通機関があってもそれを知らずに使わない、もしくは知っていても使わないって人が多かったりする。
もしかすると案外人嫌いな人が多いのかも知れないな。
「でさ、アル。噂じゃ最近モテてるみたいじゃないの。何でも毎日一緒に帰ってる女子がいるとか。もしかして彼女?」
姉ちゃんは前をしっかり見据えて運転しながら話しかけてくる。ってそんな噂が立ってたのか。知らなかったな。
「ああ、一応な」
全く一応でないのは明白なんだけど、それでも身内に話すのはちょっと恥ずかしいから一応ってつけてしまった。
「タマさんって言うんだよ、お兄の彼女」
奈緒がまた俺に代わって説明してくれる。小学生にして良くできた妹だ。
「えーっと、タマさん?D組の玉川さん?それともA組の玉置さん?」
そうか、2年生の女子にはそんなにタマ候補がいたんだな。全然知らなかった。ああ、そう言えばうちのクラスにも玉田さんっていたな。
「違う。鏑木玉三郎。」
「ああ、うん、知ってる。B組の珍しい名前した、あの背の高いメガネの女の子ね!私、あのクラスの世界史担当してるし」
確かにタマの背は高い方だけど、それを言ったら姉ちゃんの方がもっと高い。これってやっぱり山田家の遺伝なのかな?
桐原家なんて3人とも140センチ代だし。
「そう、スッゴく美人で、スッゴく賢いの!」
奈緒は未だにタマの事を買い被っているらしい。美人って部分は確かにそうだとは思うけど……。
「えーっと、あの子の成績ってどうだったかしら?あと私も姉として挨拶した方が良いかな?」
「いや、良いって。それよりしっかり運転してくれよ」
一応俺は誤魔化すかのように姉ちゃんに安全運転を促す。
タマとの付き合いが長くなってきた以上、奈緒のタマに対する幻想を壊すのもそれはそれでかわいそうだ。
実際少しずつだけど、タマの成績も上がってきている事だし、もしかしたら奈緒の幻想をどうにか本当にする事も出来るかもしれないしな。
姉ちゃんの運転する車はとある大きな自動車部品工場の近くに造成された団地の中のひとつ、規模としては桜台団地によく似た団地の一角にある一軒家のガレージに止まった。
表札には『芹澤』の文字。ここには俺の実母の芹澤有希と実姉の芹澤奈津が2人で暮らしている。
ちなみに父さんと母さんが離婚した理由は知らない。
おそらく自由過ぎる父さんに母さんがついていけなかったとか、そんな理由だろうと想像する。
何だかんだで俺だって父さんには軽くついていけてないんだ。
「ただいまぁ」
姉ちゃんが家の中に向かって声を掛けると、エプロン姿の母さんが出てきた。
俺の母親は、まあ言うなれば普通の人。
ちょっと口うるさい方ではあるけど俺達3人の子供に対する愛情はしっかりと感じられる。
「久しぶり。2人とも上がりなさい」
rineでは結構怒ってたような文章だったけど、たいして怒ってはいなさそうだ。
「お邪魔しまーす」
早速奈緒が玄関に上がる。奈緒はあまりこういう場面でも緊張する方じゃない。もしかすると俺達3人の中では一番の大物になりそうな予感がする。
リビングに入ると揚げ物やらいなり寿司、サラダなどの大皿が並んでいる。母さんが作ってくれたんだろうな。
なにげに俺は母さんの作るいなり寿司が結構好きだったりする。
「はい、それじゃ食べましょ」
母さんが吸物と割り箸、取り皿を渡してくれた。
母さんにとっては離れて暮らす息子と娘の無事さえわかればそれで御の字って事なんだろう。
「アル。最近どう?成績は維持出来てるみたいだけど……」
おそらく成績については姉ちゃんから報告を受けてるんだろうな。
「あのね、ママ。最近お兄に彼女が出来たんだよ!」
奈緒、お前はそれ以外に話すネタが無いのかよ?
思春期の男子にとって、身内とこういう話題になるって結構恥ずかしいんだぞ?
「えっ!そうなの?もしかしてアンちゃん?」
母さんは思いっきり勘違いしている。
「違うよ。アルと同じ学年の鏑木玉三郎って子。大人しくて結構良い子よ」
姉ちゃんが補足すると、何だか母さんが驚いたような表情になった。
「玉三郎って……まさか橋田さんとこの?」
まるでただ事でない母さんの様子に、俺達3人は揃って息を飲んだのだった。
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