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Episode5-1.どうやらこいつらは好きなものを語りたいらしい。

 投稿が遅れまして申し訳ありません。

 この回でヒロインが出揃います。


 それでは第5話、スタートです♪

 テストは無事に終わった。

 俺はテスト中もいつもと変わらずタマと一緒に帰り、手応えを聞いてみる。


「す、すごいんです!今までのテストって、基本選択問題を当てずっぽうで、それに問題を読んでもちんぷんかんぷんな部分ばっかりだったんです。それなのに今回のテストは問題の意味がわかるんです!」


 何だか興奮気味にテストの手応えがあった事を感動と共に伝えてくれる。一緒に勉強した甲斐があったってもんだ。

 これでなんとか赤点、追試、補習になってしまう事も無さそうだ。

 しかもこの1週間は俺と一緒に帰っている間、あの妙な含み笑いもしなくなった。

 これは結構良い傾向なんだと思う。

 ちなみにアンとチコもテスト中はさすがにストーキングはしてこなかった。

 2人もいつもより手応えを感じているのか、夕食の時も機嫌が良い。


 そんなこんなで順調な日々が過ぎ、テスト最終日の金曜日。


「アルくーん!」


「あ、アルくん、タマちゃんが来たよ!」


 レオがタマの来訪を知らせてくれた。

 ちなみにレオもテストの手応えが良かったらしく、感謝をされてしまった。


 今日のレオは部活の日。

 って事で、俺とタマは2人で帰る事になった。


 大きな川に沿った堤防を2人で歩いていると、少し暖かい空気を感じる。

 いつの間にか夏の気配が顔を出してきたような気がする。


 タマとのデートは明日。

 行き先はタマのリクエストで、結構定番なんだけど、隣市にある温泉と遊園地とアウトレットモールなどが併設された施設があって、そこのアウトレットモールに行く事になった。

 あれだけタマが頑張って誘ってくれたんだ。

 どこまでタマに楽しんでもらえるかわからないけど、頑張ってエスコートしようと思う。

 ん?もしかして、俺って結構楽しみだったりするのか?

 ……まあ、もしかするとそうかもしれないな。

 何だかんだで俺にとっては初めての彼女で初めてのデートな訳だし。



 そして俺達は駅に差し掛かる。

 明日は支線で通っているタマとこの駅のホームで待ち合わせだ。


「じゃ、明日、9時にここのホームでな」


「はい。明日はよろしくお願いします」


 タマが駅に入って行くのを見届けて、俺は商店街に向かう。


 タマは最近俺と2人でいる時も、笑顔になることが多くなってきた。

 最初はただのアホの子だと思った。

 もちろん今も変わらずアホの子だと思う。

 だけどそんなアホの子でも俺の中で存在がどんどん大きくなってきているのがわかる。


「これが捨犬に情が移るって感じなのかな?」


 こんな事、本人に言ったら怒るだろうな

 なんて考えながら俺は夕食の買い物を済ませたのだった。





 その日、俺は夢を見た。



『あのね、アルシンド!私、今度、オヒッコシする事になったの。パパとママがリコンするんだって。ふふっ、よくわかんないけどセチガライヨノナカなのよね」



 ハッとなって目を覚ますと、スマホからアラーム音がけたたましく響いていた。

 あれ?俺、今、記憶の少女の夢を見てた?

 既に曖昧になりつつある夢を脳内に留めようとするも、既にその夢の記憶は霞が掛かったかのように消えてなくなっていたのだった。




 天気は快晴。


 時間通りに起きた俺は休日でもいつも通り朝の早い奈緒と一緒に朝食をとる。

 ちなみにアンとチコは起きてこない。恐らくテスト明けで惰眠を貪っているのだろう。


「ねえ、さっき橋田クリスちゃんのSNS見たら、近くでイベントするみたいなの!お兄、私、行ってみたいなぁ……」


 奈緒は美味しそうに朝食を食べながら俺を見上げる。


「いや、俺さ、今日は出掛けるんだよ。アンかチコに連れてってもらったらどうだ?」


「そうなんだ。うん、そうするよ」


 橋田クリスのイベントならアンもチコも興味があるだろうから断る事もないだろう。

 すると奈緒は朝食を食べる手を一旦止めてニヤついた顔になる。


「ところでお兄、誰とデートするの?タマちゃん?レオくん?美咲ちゃん?」


 いや、なんでそこでレオの名前が出るんだよ?

 まさか奈緒は本気でレオの事をいまだに女だと思っているのか?


「タマだよ。だけどアンとチコの2人にはそれを隠しといてくれ」


 委員長ならまだしも、もしタマとデートするなんてあの2人に知れたら町中探しに出そうだもんな。


「わかったー。うまく言っとくよ」


 奈緒に隠し事をさせるのは心苦しいけど、2人を不安にさせたくないってのは事実だ。

 奈緒の誤解は良い方に向いているからそのままでも良いけど、アンとチコ、この2人にはそろそろタマへの誤解を解いてもらわないと、いつまでストーキングが続くかわからない。

 でもどうやって解けば良いのか、全く思いつかないのが悩みどころなんだよな。

 ま、そこらへんはじっくり考える事にしよう。



「じゃ、行ってくる。奈緒。アンもチコも小さいからはぐれないようにな」


「うん!いってらっしゃーい!」


 こうして俺は奈緒に見送られつつ家を出たのだった。







 現在8時40分ちょい前。

 切符を購入し、回札内に入る。


 我が家の最寄り駅は特急や急行などが走る本線と、市内の山側へ向かう支線、それと市内でも支線とは少し違う方面に向かう小さな鉄道会社の始発駅がある。

 今回の目的地は本線の急行に乗って15分足らず、そしてバスに乗り換えて約20分の場所だ。

 ちょっと早く来すぎた。

 タマが乗ってくるであろう電車はおそらく9時ちょうどに到着するはず。

 って事で、ベンチにでも座って待ってようかな?


 そう思い、手頃なベンチを探す……っと、あれ?

 ベンチにひとり、見慣れた少し背の高い、黒髪ストレートのロングへアーにメガネ……って、タマが早くも来てた。

 確かこの支線の9時より前の電車って……あ、ちょうど8時40分着の電車が今入ってきた。

 って事は8時半前に来てたって事かよ!

 ちょっと気合い入りすぎてね?


「おはよう、タマ」


「あら、ふふっ、アルくん、おはよう。こんな待ち合わせ前に来るなんて、そんなに早く、私に会いたかったの?」


 いや、それはタマ、お前に言いたい。それに何でかわからないけど緊張していて含み笑いモードになってるぞ?


「タマ、深呼吸」


 俺の指示に従ってタマは深呼吸をする。そこらへんはやっぱり聞き分けが良いな。


「ごめんなさい。ちょっと緊張して早く来ちゃいました」


 タマが俺を見上げてヘラッっと笑う。

 リラックスモードに戻れたようだ。

 本当、いったい何に緊張してたんだか……?


「ま、せっかく早く来たんだし、1本早い電車に乗るか。あ、隣、良いか?」


「あ、はい」


 一言断って隣に座る。

 これをしとかないとタマが緊張して、また含み笑いモードになりかねない。

 何だか俺もタマの扱いに慣れてきたような気がするな。


 そんなタマの今日の服装もまたまた派手さは無いものの結構お洒落だ。

 白地のボーダーシャツにデニムのロングスカート……に見えるけど、これはパンツか。

 そしてそれに合わせる履き物はベージュのサンダル。

 初夏の空気が漂う組み合わせに見えた。

 先週の勉強会でも思ったんだけど、タマって結構ふわっとした雰囲気のファッションが好きみたいだ。


「あのさ」


「はい」


「今日も、似合ってる」


「あ、ありがとうございます……」


 こういう会話をしていると、何だか俺達、本当の恋人っぽい……のかもしれない。

 言われた方のタマは俯いてしまって、その後は電車が来るまでの会話は途切れ途切れになってしまったけどな。



 そして急行電車はすぐに来た。

 休日のこんな早めな時間帯の電車って乗ったことがなかったけど、案外人が乗ってるんだな。人混みに押しつぶされるって程では無いにしろ、それなりに人が多い。

 田舎だと思っていた我が町には思っていた以上に人がいるらしい。


 乗っている人の内訳は俺達と同年代、それも女性グループやカップルが多いように思える。

 俺って基本的にあまり休日に外を出歩く方じゃ無いけど、世間一般の中高生って週末はこれほどに出掛けるものなのか。


 そう考えると、俺ってやっぱり高校生として何かがズレてるのかもしれない。

 俺って勉強ばかりに打ち込んでて、たまにアンやチコに連れられて、カラオケとか、今日行くアウトレットモールとかには行った事があるんだけど、あまり誰かと遊びに行った記憶もないんだよな。

 一緒に立って電車に揺られているタマを見てみる。

 俺は今日のこのデートで、彼女を楽しませる事ができるんだろうか?

 ちょっと自信がなくなってきてしまった。



 俺達が降りた駅は、とある都市のベッドタウン。人口も15万人に満たない素朴な市なんだけど、それでも思ったより人が降りる。

 そしてみんながバス停に向かう。

 もしかしてみんな目的地が同じなのか?


 まあ確かに俺達の行く場所は温泉、遊園地、アウトレットモールが併設されている複合施設。

 しかも目的地に向かうバスは有名な植物園にも寄るんだし、人気がある事も頷ける。

 天気だって良いしね。


 そしてバス停なんだけど、そこにも少し行列ができていた。

 やっぱり人気の施設なんだな。

 そして何とか乗れたバスに揺られ、目的地に到着したのだった。


 アウトレットモールにゾロゾロと人が入って行く。

 俺達もその流れに乗ってモール内に入ったのだった。


「本当、すごい人だな」


 実は去年、このモールは一度来た事がある。

 アンとチコに連れられて、奈緒も連れて4人で行ったんだ。

 あの時は土曜だったか日曜だったかは忘れたけど、週末だった。

 あの時はこれ程人は多くなかったぞ?


「あ、あのっ!アルくん、あれ、見てくださいっ!」


 タマが興奮気味に指を指す。

 そして俺はその方向を見てみる。

 広場にたくさんの人だかり。

 そしてそこにはステージが設置されていて、さらにそこには『橋田クリス』の文字があったのだった。

 ここまで読んでくれてありがとうございます!


 ブックマークやご感想などはお気軽にどうぞ。


 それではまた次回♪

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