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かみかみ  作者: 明日駆
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第16話 “主従契約”

 目が覚めると、見慣れないタイル張りの天井が広がっていた。


 ゆっくりと身体を起こして周囲を見回す。白いカーテンで仕切られているところを見ると、どうやらここはどこかの病室である事がわかった。気を失う前の状況を考えると、恐らくここは日諸木学園の保健室なのだろう。

 しばらく呆然と白いカーテンの中央を見つめていると、突然カーテンが動いて一人の少年が姿を見せた。星町忠幸である。


「お、気がついたみたいだな」


 そう言うと、忠幸はベッドを囲んでいるカーテンを開いた。薬品の並ぶ棚や机の上に重ねておいてあるカルテ、それに開いた扉の外に見える廊下の不必要に大きな窓からすると、やはり日諸木学園の保健室で間違いない事がわかった。

 カーテンが開かれた事に気づき、小さな椅子に腰掛けていた少女が守哉に目を向けた。


「……かみや。よかった……気がついたんだね」


 その口調からすると、どうやら七瀬で間違いないようであった。いつも通りのくせのある水色のツインテールに、白いワンピース。ここは校内であるために、今は上履きを履いている。


「ふん。そのまま永遠に眠ってればいいのに」


 腹を立てているような顔でそう言ったのは、七瀬の近くにあるベッドに腰掛けている少女である。守哉を気絶させた張本人であるこの少女は、七瀬と瓜二つだった。服装までまったく一緒であり、違うのは髪形と目つきだけだ。

 守哉が七瀬と七瀬によく似た少女を見比べていると、それを察した七瀬が口を開いた。


「……この人は、私のおねえちゃんなの。名前は、神代七美(くましろななみ)

「七瀬、こんなヤツに教える必要ないわよ。大体、ここに居る事自体が不服なの。目が覚めたんならもういいでしょ?私は行くわよ」


 そう言って立ち上がった七美を七瀬は慌てて押し留めた。


「……ま、待ってよ。一言くらい、謝らなきゃ……」

「なんで私が!?間違えたのはこいつじゃない!」

「……だからって、暴力はよくないよ」


 大声でわめく七美とは対照的に、七瀬はいたって冷静だった。これではどちらが姉なのかわからないな、と守哉は思った。

 それは忠幸も同意見だったのか、忠幸はぽつりと呟いた。


「……どっちが姉なんだか」

「なんですってぇ!?もう一度言ってみなさいよ!!」

「な、なんでもないです、はい」


 七美に睨まれて、忠幸は萎縮してしまった。なおも忠幸を追求しようとする七美を慌てて七瀬が押し留める。


「……だ、ダメだよ、おねえちゃん。そんな風にしたらかわいそうだよ」

「だってこいつが……!!」

「まぁまぁ、七美さん落ち着いて」

「誰が七美さんよっ!!あんたなんかに名前を呼ばれたくないわ!!」


 守哉が割って入ると、七美は守哉を睨みつけた。


「じゃあなんて呼べばいいんだ?」

「そもそも呼ばないで。話しかけないで。私、あなたと同じ地面を踏んでるって考えただけで気分が悪くなるの」

「だったらずっと靴履いとけばいいじゃん」

「人の揚げ足をとるなんて、あんた最低ねっ!!!」

「いや、率直な感想を言っただけなんだけど」


 面倒くさいやつだな、と守哉は心の底から思った。大人しい七瀬とは大違いである。


「ていうかさ、俺、どのくらいの時間気絶してたんだ?」

「……1時間くらい。大丈夫、逢う魔ヶ時まではまだ時間があるよ」


 七瀬が壁にかけられていた時計を見ながら言った。現在の時刻は5時過ぎ。確かに、まだ逢う魔ヶ時までは時間がある。

 だからといっていつまでも保健室で寝ているわけにもいかないので、守哉はベッドから出た。七瀬が心配そうな顔で守哉を見つめて言った。


「……もう大丈夫なの?」

「ああ。あんまりここで寝てるのも悪いし、そろそろ帰るよ」

「寮まで送ってやろうか?」


 心配そうな顔で忠幸も言った。七美は険しい表情でそっぽを向いている。恐る恐る、守哉は話しかけてみる事にした。


「間違えて悪かった。今度から気をつけるから、今日のところは許してくれないか?」


 頭を深く下げる守哉。横目で守哉を見た七美は、ため息をついて立ち上がった。そのまま保健室の扉まで向かう。帰ろうとする七美を、慌てて七瀬が呼び止めた。


「……お姉ちゃん、うちに寄ってかないの?」

「遠慮するわ。七瀬の顔が見れれば十分よ」

「……でも、おばあちゃん心配してるよ」

「あのババアが?―――ふん!!笑わせるわ。あのババアが七瀬以外の人間を気にかけたりするわけないでしょ!見え透いたウソつかないでよね!」


 それだけ言うと、七美は保健室を出て行った。寂しそうな顔で七美の去った扉を見つめる七瀬を、守哉は心配して話しかけた。


「姉ちゃん、いっつもあんな感じなのか?」

「……うん。ごめんね、七美おねえちゃんは怒りっぽいから……」

「いいよ、元はといえば俺が悪いんだ。それより、早く帰ろうぜ。なぁ、忠幸?」

「ああ。待ちくたびれちまったよ。さっさと帰ろう」


 守哉に促され、七瀬と忠幸が立ち上がる。三人は保健室を出ると、校門で別れた。

 その間、七瀬は終始浮かない顔をしていた。



 ☆ ☆ ☆



 守哉が寮に帰ってくると、いつも通りカウンターに突っ伏して寝ている優衣子の姿があった。

 近づくと、守哉の気配を感じたのか、のっそりと優衣子は顔を上げた。


「……お帰り。今日も我が寮は閑古鳥が鳴いてたわ」

「そりゃ、寮長がこんな調子だからな。お客も寄りつかねぇだろ」

「失礼ね~。こ~んな美人の女将がたった一人で切り盛りしてるのよ?普通は大繁盛するところでしょ」

「その女将にやる気が感じられないのが問題なんだよ。……まぁ、それ以外にも理由はあると思うけどな」


 たわいもないやり取りを交わし、階段を上がろうとして、途中で思い止まる。最近使っていなかったエレベーターの方に向かうと、上に上がるスイッチを押してみた。しばらく待つと、ちーん、という音と共に扉が開く。


「今日はいけるかな?」


 そう呟いて守哉が足を踏み出そうとすると、突然勢いよく扉が閉まった。


「なにぃ!?」


 慌てて足を引っ込める。そのまま様子を伺っていると、再びエレベーターの扉がゆっくりと開いた。


「……お前、俺になんか怨みでもあんの?」


 そう言うと、守哉は諦めて階段を使った。

 

 最上階につき、廊下の一番端にある607号室へ向かう。部屋の扉を開くと、今日は誰もいなかった。ほっと一息つくと、守哉はショルダーバッグを放り投げて寝転がった。

 ぼんやりと天井を眺める。逢う魔ヶ時の訓練までまだ時間はある。眠ろうと目を瞑ったが、中々寝つけない。仕方なく、立ち上がってベランダへ出た。

 607号室から見える景色は中々のものである。位置的に考えて見えるのは鎮守の森と島を囲んでいる海しかないが、人間の手が加えられたものが見えない景色というのは、守哉にとっては最高の景色だった。

 何も考えず、手すりに寄りかかって景色を眺める。心地よい風が守哉の髪をなびかせた。


 しばらくの間ぼんやりと景色を眺める。どれほど時間が過ぎたのかはわからないが、ふと守哉は横に顔を向けた。

 すると、手すりの上に座っている一匹の三毛猫と目が合った。


「よう、神和ぎ。また会ったニャ」


 なんともいえない表情で三毛猫を見つめる。守哉の事を知っていて言葉を喋る三毛猫は藤丸以外存在しない。というか、喋る猫自体藤丸以外にいるのかわからない。まぁ、正確には藤丸は三毛猫ではないのだが。


「ニャニャ、もう俺の事忘れちまったのかニャ?物忘れ激しいのニャ」

「……忘れてねぇよ、藤丸。つか、なんでここにいるんだよ」

「お前の臭いを追って来たのニャ。俺にかかればどこに誰がいるかニャんてすぐわかっちゃうのニャ」

「そりゃ凄いもんだな。ところで、何しに来たんだ?」

「別にニャにも。しいて言うニャら暇だったからだニャ」

「俺の優雅なひと時を邪魔しやがって。用がないなら帰れ」


 そう言うと、守哉は部屋に入って窓を閉めた。ベランダに取り残された藤丸は、閉められた窓の前で直立すると、前足を使って扉を開けて部屋へ侵入した。


「酷いニャ。俺、何も悪い事してニャいのに」

「したよ、今。不法侵入だ」

「猫には関係ニャいニャ」

「お前猫じゃねぇだろ。和魂だろ」

「でも見た目は猫ニャ。とってもぷりてぃーニャ」


 片足で立ってくるりと一回転する藤丸。可愛らしく見せようとしているのだろうが、残念ながら守哉はどちらかといえば犬派だった。

 というか、それ以前に直立二足歩行する猫は気持ち悪い。


「どうニャ?萌えたかニャ?」

「気持ち悪いからやめろ。つか出てけ。俺は寝る」


 冷たく言い放った守哉は、仰向けになって目を瞑る。それを見た藤丸は、守哉の腹の上に乗っかってお座りした。なんとなく藤丸が乗っかってきた事に気づいた守哉は、目を閉じたまま言った。


「どけよ」

「まだ俺のはニャしは終わってニャいニャ。寝ちゃダメニャ」

「用があるなら早く済ませてくれよ。そして出てけ」

「つれないヤツニャ。でも、放置プレイは嫌いじゃニャいから許してやるニャ」


 守哉は呆れた。この猫はどれだけ世俗にまみれているのだ。


「それで、話ってなんだよ」

「実は、今日からお前に仕える事にしたニャ。ニャんニャりとご命令してくれニャ」

「悪いけど、俺ペット飼うような余裕ねぇから」

「ペットじゃニャいニャ。しいて言うニャら使い魔ってとこだニャ」

「……なんでまた、そんな気になったんだ」

「お前に恩を返すためにはどうすればいいか友達に相談したら、お前と主従契約を結ぶのがいいって言われたんだニャ」

「主従契約ってなんだよ」

「別に、ただの口約束ニャ。ようするに、今日から俺はお前の下僕にニャるのニャ」


 胸を反らして偉そうに藤丸は言った。その態度はどう見ても守哉に仕えようとする者の態度ではない。一言で言うと、偉そうだった。


「いきなり下手にでられても困るんだけど」

「そうニャ?お前、王の力を持ってるわりには王の資質はニャいのニャ」

「王の力……赤砂御先生も言ってた気がするな。王の力ってなんなんだよ」


 守哉が聞くと、藤丸は呆れ顔になって答えた。


「お前、本当にニャにも知らニャいのニャ。でも、知らニャいのも当たり前かもしれニャいニャ。王の力に関しては、島の誰もがお前に教えたくニャいだろうからニャ」

「前置きはいいから教えろよ」

「いいけど、条件があるニャ。俺をお前の使い魔にしてほしいニャ。きっと役に立ってみせるからニャ」

「俺の頼みは断れないんじゃなかったのかよ」

「そうだニャ。でも、できれば俺を使い魔にしてほしいのニャ。そうすれば、俺は気兼ねなくお前に恩返しができるのニャ」

「使い魔ねぇ……。なんか、響きがヤダな。どうせなら友達になってくれよ」

「俺は猫……もとい和魂ニャ。友達ニャんて無理ニャ」


 少し寂しそうに藤丸は言った。そんな藤丸に、守哉は真顔になって答えた。


「友達に猫も和魂もねぇよ。友達の条件は、話したい時に話せる事だけだからな」

「……。お前、いい事言うニャ。確かに、あの子の言った通りいいヤツだニャ」

「あの子?」

「いや、こっちのはニャしだニャ。とにかく、ニャら友達兼使い魔にしてほしいのニャ」

「それなら大歓迎だよ。つか、使い魔は譲らないのな」

「ニャ乗り上げる時に二つニャがあるとカッコイイからニャ」

「そんな理由かよ……」


 守哉は呆れ顔になって答えた。藤丸は腕を組んで偉そうに言った。


「俺は藤丸、百代目神和ぎの偉大なる使い魔ニャ!……どうニャ?」

「偉大なる、をつけるとこ違うだろ。それじゃ俺よりお前の方が偉そうじゃないか」

「固い事言っちゃダメニャ。それより、王の力について知りたいんじゃニャかったのかニャ?」

「そうだった。早く教えてくれ」

「いいだろうニャ」


 そう言うと、藤丸は、コホン、と小さくせきをした。猫のくせにそんな仕切りなおし方するのか、と守哉は呆れた。


「神和ぎの持つ王の力とは、ずばり言魂の事ニャ」

「言魂?あれのどこが?なんでもできるとかいって、実際できる事は大した事ないのに」

「確かに、言魂によって具象化できる想像は極めて限られているのニャ。まぁ、逢う魔ヶ時に限っては別だがニャ。ちなみに言魂は非常に扱い辛いニャ。お前はいとも簡単に使ってたけど、実際はそれなりに訓練をつまないと発動さえ難しいのニャ」

「そうなのか?俺、失敗した事の方が少ないくらいなんだけど」

「だから、その点に関してはお前は天才ニャ。でも、だからこそ言魂の持つもう一つの力を知らせるわけにはいかニャかったのニャ」

「もったいぶらずに言えよ」

「わかったニャ。……言魂の持つもう一つの力。それは、お前と同一の神力を持つ生命体を無条件で従わせる力。これを服従(ふくじゅう)言魂(ことだま)と呼ぶのニャ」

「よくわかんないんだけど」

「つまり、この島に住んでいる生物は、絶対にお前の命令に逆らえニャいのニャ。ただし、例外的に神和ぎもどきには効かニャいけどニャ」

「ふーん……つまり、皆俺の言う事をきくわけだな」

「そうだニャ」


 守哉はぼんやりと天井を見つめた。今更、そんな力があったと知っても、守哉は使う気になれなかった。

 不意に時間が気になって時計を見ると、時刻は5時45分になろうとしていた。守哉はゆっくりと身体を起こす。腹に乗っていた藤丸が床に転げ落ちたが、守哉は気にしなかった。


「そろそろ逢う魔ヶ時だな。神代家に行かなきゃ」

「ちょっと待つニャ。お前、服従の言魂を使う気じゃニャいだろうニャ?」

「別に使わねぇよ。そんなもん使ったら面白くなくなるだろ」


 そう言うと、守哉は部屋の外に出た。藤丸も後をついてくる。


「ニャら、俺に言う事はニャいニャ。俺としては、お前には暴走してほしくニャいからニャ」

「暴走ってどういう事だよ」

「先代の神和ぎのうち、何人かはこの服従の言魂の存在を知って島でやりたい放題したんだニャ。それを神和ぎの暴走と呼んでいるのニャ」

「どんな事をしたんだ?」

「それは、想像に任せるニャ。でも、誰しもが思い描くような、くだらない事をしたんだと思えばいいニャ。例えば―――そう、強姦やら殺人やらニャ」


 驚いて守哉は藤丸を見つめた。こののどかな島らしからぬ単語に、守哉は戦慄した。

 そんな守哉の様子を見て、藤丸は冷たく言った。


「人間ニャんてそんニャものニャ。欲望のままに力を振りかざし、結果その身と心を滅ぼす。お前にはそうニャってほしくニャいものニャ」


 守哉は黙りこくって階段を下りた。一階のロビーを通ると、カウンターには本日営業終了と書かれた札が置いてあった。優衣子の姿はない。恐らく、管理人室で寝ているのだろう。

 寮を出ると、藤丸は守哉と逆方向へ行こうとした。


「おい、どこに行くんだよ」

「逢う魔ヶ時が近いから、学校にはあんまり近寄りたくニャいのニャ。俺は寮の周囲の鎮守の森で暮らしてるから、用がある時は呼んでくれニャ。すぐに駆けつけるニャ」


 そう言うと、藤丸は林の中に姿を消した。


「……猫とは思えないヤツだな、ホントに」


 藤丸の消えた林を見つめてそう呟くと、守哉は坂を下りていった。



 ☆ ☆ ☆



 神代家のインターホンを押すと、いつも通り七瀬が出迎えてくれた。客間に通されて待つ数分、険しい表情でトヨがやってきた。 


「準備をしろ。すぐに始めるぞ」


 そう言うと、トヨは身体強化の言魂を発動させた。そのまま庭へと出ていく。守哉も身体強化の言魂を発動させると、トヨを追って庭へ出た。

 庭園の真ん中で向かい合って立つ。トヨが静かに目を閉じたのを確認し、守哉も精神を集中させる。


「言魂による基礎訓練は今日で最後じゃ」

「!じゃあ今度から来なくていいのか?」

「たわけ。明日からは本格的な戦闘訓練に入るんじゃよ」

「今までのは本格的じゃなかったのかよ……っ!?」


 守哉が言い切る前にトヨが動いた。一瞬で守哉の懐に潜り込み、みぞおち目掛けて正拳突きを放つ。咄嗟に守哉は腕を交差させて防御したが、次の瞬間謎の衝撃で後ろに吹き飛んだ。トヨの言魂だ。


「なんのっ!」


 空中で体勢を立て直しながらイメージする。着地した瞬間目掛けてトヨが踏み込んでくるのはわかっている。守哉が地面に着地すると、思ったとおりトヨが突進してきていた。トヨが投げ技を仕掛けてくるタイミングにあわせて発声する。


「―――風よ!!」


 守哉の声に呼応して、トヨの周囲に烈風が巻き起こった。烈風が庭園の砂利を巻き上げ、トヨの視界を防ぐべくトヨの顔面に襲い掛かる。


「―――甘いわぁっ!!」


 トヨの叫びに呼応して、トヨに襲い掛かろうとしていた烈風が動きを止めた。同時に大きく守哉に向かって踏み出し、素早く首を掴む。そのまま地面に叩きつけようとした瞬間、守哉は発声した。


「―――させるかッ!!」


 持ち上げられた守哉の身体が空中で止まった。突然守哉が空中で停止したために、勢いよく叩きつけようと動いていたトヨの動きが一瞬鈍る。守哉はその隙に、トヨのわき腹目掛けて拳を叩き込んだ。


「ぐぅっ!?」


 うめき声を上げ、トヨの体勢が崩れる。同時に守哉の首を掴んでいた腕も外れた。地面に着地した守哉は、左腕で素早くトヨの顔の右半分をわし掴みにした。そのまま勢いよくコマを回すように薙ぎ払う。


「―――うぉりゃあっ!!」


 守哉が左腕を薙ぎ払ったのと同時に、烈風がトヨの身体を包み込む。高速回転しながらトヨの身体が吹き飛び、進路上にあった池の中へ突っ込んだ。ばしゃーん、と音を立ててトヨは水面に叩きつけられる。

 守哉は油断せずに池の様子を見守る。すると、突然水面からトヨが飛び出してきた。思わず身構えるが、トヨは池の前で着地した。

 互いに睨み合う。すると、トヨは憎悪を顕にしてを浮かべて呟いた。


「してやったり、と言いたそうな顔じゃな」


 その言葉に、守哉は不敵な笑みを浮かべて答えた。


「実際、してやられただろ?」


 ふん、とトヨは鼻を鳴らした。


「今から本気でいかせてもらうぞい。覚悟せい」

「望むところだぜ」


 再び身構える二人。庭園に緊張が奔る。


 そんな光景を、縁側に座る七瀬は浮かない顔で見つめていた。

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