パーティー
「複数人編成ですか?」
「レイ君は知らないかな?」
レイは初めて聞くその言葉に首を横に振る。
「あ、そうなんだ。それじゃまずは簡単に説明するね。複数人編成って言うのはね、その名前の通り複数の冒険者か勇者が1つのチームとして組んで、戦いを有利に進める為の能力なの」
「能力なんですか?」
「そう。分類としては職業能力と修得能力だね。複数人編成を組んでいる者にのみ与えられる能力」
「へぇ。そんなものがあるんですね。でも、どうやってその能力を解放するんですか?」
「解放の条件は簡単で、複数人編成を組むだけでいいの。複数人編成を組むにはまず、その編成のリーダーとなる人を選んで、その人にこうやって言うの。『私をあなたの仲間にしてください』って。方法はそれだけ。ギルドに申請する必要もないし、魔力も能力も何も必要ない」
「凄い簡単なんですね」
「そう。ただこれだけは必要っていうのが、そのリーダーとなる人に対する絶対的な信頼。これが無いと複数人編成に加わることは出来ないし、複数人編成の恩恵も受けることは出来ない。ただ単に力だけが目当ての口約束じゃ駄目ってことだね」
「なるほど」
複数人編成について興味を示したレイは気になる所を矢継ぎ早にティルファに質問をしていく。
「複数人編成って言うからには四人一組にならないとその効果は発揮しないんですか?」
「ううん。二人からでも効果は発揮するけど、より数が多い時の方がその効力は強くなるの。1番バランスが取れた編成人数は四人らしいんだけどね」
「複数人編成を組む上でのデメリットは何かあるんですか?」
「特にそんな話は聞いたことが無いかな?多分無いと思う。少なくとも私の知る限りではね」
「この世界の冒険者や勇者は複数人編成を組んでいる人は多いんですか?」
「そうだね。勇者よりも冒険者の方が組んでいる人は多いかな?勇者ってほら、一人でも大概なんでも出来る人達ばっかりで変にプライドが高くて自分の命を他人に任せる必要が無いって考えの人が多いからそもそも複数人編成が成立しない事の方が殆ど。その点冒険者は自らの弱い部分を他の仲間でカバーしあって困難に立ち向かうことが多いから必然的に信頼もするようになるし、その流れで複数人編成になるっていうことがざらだからね」
そうしていくつかの質問を終え話が途切れると、今度はティルファがレイに複数人編成についての話を始める。
「元々この複数人編成の起源は真勇者が魔王を倒す為に旅をしていた時に出来たものらしく、文献によると今ある複数人編成には無いような効果もあったらしいの。例えば」
「融合魔法の簡易構築、魔力共有化」
「あれ?レイ君もどこかで読んだことがあるのかな?まさにその通り。融合魔法はその名の通り複数人が放った魔法を空中で融合させて別の魔法にするというとても難しい技術。有名なやつで言えば四つの雷の最上級魔法を融合させた『天竜』とかだね。今でも上位の冒険者や勇者の中でも出来る人は居るみたいだけど、真勇者の四人編成ではそれがもっと簡単に出来るようになっていたらしいね」
「ん……?僕はなんでこんなことを知って……?」
ふと、ティルファの話を聞いていて口から出た単語はどちらも全く聞いたことが無いもの。
転生者として元々備わっていた知識なのか、前世で読んだラノベや漫画に似たような内容のものがあったのかは定かではない。
それ故に何故そんな単語が自分の口から出てきたのかが分からずレイは少し困惑するが、それに気付いていないティルファは話を進める。
「魔力共有化は言わずと知れた真勇者の伝説で度々出てくる力のことだね」
「……仲間の魔力を統合し、個人が元来使用出来る魔力の限界を一時的に大幅に上昇させるもの」
「そう。これはやっぱり知っているよね。仮に個人の魔力の最大値が100だとすると、四人編成の数だけ……最大400にまで使える魔力が増えるというもの。もう少し噛み砕くと、本来なら120の魔力が必要で普段なら発動出来ない魔法でも魔力共有化によって使える魔力の上限が増えた時なら使えるというもの。当然魔力を共有しているだけだから一人が400の魔力を使ってしまうと他の人は魔法を使うことが出来ないんだけどね」
「…………?」
レイはこの世界に来てからまだろくに本や文献に目を通してはいない。
にも関わらず、的確にその単語の意味が自分の口から出たことに更に困惑する。
どこかで小耳程度に話を聞いていた?
この世界に来たときに常識として頭の中に入っていた?
色々と考えてみるも答えが出る筈も無く、かといって答えが出ないからといって別に問題のあることでは無いと割りきったので、レイは特に考えないようにすることにした。
「まぁこっちは文献や伝説に残っているだけでどこまで本当なのかは分からないけどね。実際の複数人編成は身体能力や能力・魔法の威力の上昇やその他は細々とした内容のものばかりだから文献みたいに強力なものは無いし」
「それにしてもたったそれだけの事でステータスの上昇が見込めるのならこれを使わない手は無いでしょう。リスクも無しに強くなることが出来るのなら、こんな楽なことはありませんし」
「そう。だからレイ君。レイ君をリーダーとして、私を複数人編成として迎えてくれないかな?レイ君なら安心して命を任せられそうだし、何よりも強い。それはこの世界において何よりも重要視するべきことだからね。まだ未熟な所はあるけれど、ちゃんと鍛えればきっと私以上の勇者になる筈。今まで一人で戦ってきた私だけど、始めて誰かと一緒に居てもいいなって今回の件で思ったの。だからお願い。私を複数人編成に迎えて」
「えっ!?いや、でも……」
前振りがあったとは言え、レイにとってティルファはこの世界の大先輩。
一撃の能力の威力こそティルファには勝っていると感じているが、それでも経験や戦法はどう考えてもティルファの方が上であり、それを考えると自分がティルファの下に付くのならともかく、自分がリーダーの複数人編成の一員としてティルファを迎えるのは少々抵抗がある。
だからレイはティルファにこう提案する。
「……それなら逆に、僕がティルファさんをリーダーとした複数人編成に加わるって言うのはどうでしょうか?僕には経験や知識が殆ど備わっていませんし、この世界で上手く立ち回るならこの世界のことをより知っている人が勤める方が都合が良いと思うんです」
これならば何の抵抗も無いし、ティルファのことも尊重できる。
そう考えていたのに、ティルファの口から出た言葉はレイの予想を裏切るもので、
「ううん。それじゃ駄目なの。複数人編成にはまだいくつかの効果があって、その中にリーダーの実力に比例して他の仲間の力が上昇するというものがあるの。つまり、強い人がリーダーになれば仲間の力も底上げされるし、弱い人がなれば大して力が底上げされる事も無い。……どちらがいいかなんて考えるまでも無いでしょう?」
「それは……」
レイとて強い人がリーダーになって仲間の力を底上げした方がいいと言うのは分かる。
ゲームとかでもよくあるシステムだからだ。
しかし、本当に僕がティルファさんより強いのだろうか?という疑問は残る。
今まではたまたま自分の都合の良いように事が運んだだけで、いざ実践になると経験も技術も自分より格段に上のティルファさんの方がやはりリーダーに相応しいのではないか?
という疑問も浮かんでくる。
ティルファはそんなレイの考えもお見通しだと言わんばかりに
「今はともかく、後々の事を考えればきっとレイ君の方が伸びしろがある筈だから」
と説得をし始める。
そうして色々と考えた末、レイは決めた。
「分かりました。僕のような未熟者にどこまでリーダーが勤まるかは分かりませんが、僕としてもティルファさんが一緒に居てくれると凄い心強いので是非ともよろしくお願いします」
形はどうあれ、1人の女性に頼られて悪い気分はしないし、自身が間違いなく自分より格上の人だと認識している人にこれから伸びしろがあると言われればその提案を受け入れる他に選択肢は無かった。
「ありがとう!それじゃ早速……『私をあなたの仲間にしてください』」
「おぉ!?」
「ふふ」
ティルファがそう言うと、二人を包むように淡い光がぽぅっと放たれる。
それが数十秒くらい続いて自然に消えると、レイの脳内に声明の声が響き渡る。
『職業能力・複数人編成長を解放をしました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
『修得能力・複数人編成を解放しました。この能力はまだ進化の可能性を秘めています』
「無事成立したみたいだね。今のが複数人編成成立の証。ステータスを確認してみて。職業能力に複数人編成長と修得能力に複数人編成が追加されてると思う」
「はい。確かにティルファさんの言う通り、その二つの能力が追加されてます」
「うん。私の方はリーダーじゃないから代わりに複数人編成員っていうのが解放されてるよ。これで無事、レイ君と私は同じ複数人編成の仲間!えへへ。改めまして、よろしくね!」
「はい!こちらこそ改めてよろしくお願いします!ティルファさん!」
無事、複数人編成を成立し終えたレイとティルファは今後の方針を立てるため、落ち着いて話せる場所に移動することにした。
前回の更新から約3ヶ月も経っているという体たらく……
非常に情けなく思う反面、それでも尚ブクマ等を解除された方が殆ど居ないという奇跡。
私にとってそれは本当に励みになりました。
身辺も少しずつ落ち着いて参りましたので拙い作品ではありますが頑張っていきたいと思います!
恐らく内容を忘れてしまっている方が殆どだと思いますのでまた読み返して頂けると幸いです汗




