自分にだけ厳しい女騎士に騎士団を辞めると伝えたら、急に泣き出してヤンデレに豹変した(2400字)
なんだ、キミか。
一体何の用だ。
悪いが、私もあまりヒマではないんだ。
見て分かるように、書類仕事が溜まっていてな。
用件があるなら、手短に言ってくれるか?
次回の大型モンスター討伐任務か?
そのことなら、キミの参加は認めないと、前も言ったはずだが?
……はぁ。
わざわざ、参加させてもらえない理由を聞いてくるとは、キミはずいぶんと愚か者らしい。
常識で考えれば、分かるだろう。
キミが弱いからだ。
当然だろう。
モンスターを討伐するのに充分な力があれば、任務に連れて行くに決まっている。
悔しいのなら、もっと訓練をしろ。
この話は、ここまでだ。
さあ、訓練に戻れ。
……なぜ、戻らない。
まだ話があるのか?
騎士団をやめる?
……なぜ、急にそんなことを言い出す。
まあ、多少厳しい言い方になったかもしれないが。
そんなに任務に参加したいのなら、強くなればいいだろう。
まあ、今回の任務には間に合わないかもしれないが。
だが、訓練を積んで強くなれば、その内、大型モンスター討伐任務に参加できるだろう。
そもそも、騎士団を辞めて、どうするつもりだ?
気に入らないことがあったからといって、すぐに辞めるようでは、違う仕事を始めたとしても長続きはしないぞ。
私がキミのことを嫌っているから、辞めるだと?
なぜ、そんなことを考える?
私は、キミのことを嫌ってなどいない。
私がキミに何かしたか?
嫌がらせのようなことは、していないと思うのだが。
模擬戦で、キミに負けた団員が大型モンスター討伐任務に、選ばれている?
それも、一人だけではなく、何人も?
そ、そうか……。まあ、そういうこともあるだろう。
剣の腕というのは、模擬戦だけで分かるものではないからな。
つまりキミは、私が嫌がらせで、キミを任務から外したと思っている訳だ。
そんな事実はない。
嘘じゃないさ。
キミを任務から外したのは、キミが弱いからだ。
……なっ……その魔法具は……。
ひょっとして、嘘を見破る魔法具……?
ち、違うんだ。
たしかに、嘘をついていた。
でも、それは……。
ああ、そんな眼で、私を見ないでくれ。
キミに嫌われるのは、いやだ。
違うんだ。
本当に、嫌がらせではななくて……。
私は、キミのことが心配だったんだ。
キミが危険な任務で怪我したらと思うと心配で……。
もちろん、騎士団の団員のことは、みんな大事に思っている。
でも、キミは……特別なんだ。
私には弟がいたんだが、……昔、無茶をして死んでしまって……。
キミはその弟に、とてもよく似ているんだ。
だから、キミには危ないことをして欲しくなくて……。
わ、分かってくれるかい?
じゃあこれからは、危険な任務には参加しないで、書類仕事とか、安全な仕事だけしてくれるかい?
なんで。
なんで嫌って言うんだい!
そんな……。
騎士団を辞めて、冒険者になるなんて……。
うううう。
やだやだやだやだ。
なんで、私から離れていくんだ。
ぐすっ……ぐすっ……ぐすっ……。
なんで。
なんでなんでなんで。
なんで、こんなことに。
こんなことになるなら、任務から外さなきゃよかった。
ああ、私のバカバカ、バカバカバカ。
やだやだやだやだ。
辞めるなんて、言わないでくれよ。
私を置いていかないでくれよ。
ううう、うううううううううう。
ぐすっ……ぐすっ……ぐすっ……。
……え? 慰めてくれるかい?
嘘をついた私を許してくれるのかい?
ああ、キミは優しいんだね。
ありがとう。
……私のそばに、近寄ってくれて。
ふふふふ♡ ごめんね♡
ああ、慌てなくて大丈夫だよ♡
今、キミにした注射はね、キミが私に逆らえなくなる魔法の薬さ。
そうだね、この薬一本で、平民の一年間の生活費にはなるぐらいの高価なものだね。
でも、キミが私のものになると考えれば、安いものさ。
安心していいよ。
薬の効き目は、ずっと続く訳じゃないさ。
効き目が切れれば、キミの体も自由になる。
それに、さすがに、キミに何本も薬を打ち続けるのは、お金が足りなくなりそうだ。
という訳で。
今日から私の屋敷に、一緒に住もうね。
屋敷の秘密の部屋で、キミのことを私のモノにしてあげよう。
薬なんか使わないよ。
もっと素敵な方法で、キミを私のモノにしてあげる。
キミの体にたっぷり分からせてあげようね。
あぁ、楽しみだなぁ♡
きっと誰かにバレる?
ああ、そんなことは何も気にしなくていいさ。
家族や召使いにバレたって、何の心配もいらないよ。
なあに、これでも裕福な貴族だ。
一人の人間を、屋敷で飼うぐらいのこと、よくあることさ。
まあ、男の貴族が気に入った女を屋敷で飼うパターンのほうが多いんだが。
女の私が、キミのような可愛い男を飼ってはいけないということも、ないだろう。
キミは貧しい家の生まれだったね。
富を手に入れるために、富を奪われないために、力を付けたかったんだね。
でも、そんな心配はもうしなくていいんだ。
キミに必要なものは、全部、私が与えてあげる。
キミが頑張る必要はないんだ。
キミは、私に愛でられるだけの存在でいればいいんだよ。
ふふふ♡ そうだ♡
はじめから、こうしていれば良かったんだ♡
キミのことは、私が屋敷で永遠に飼ってあげるからね。
大丈夫。食べものも、娯楽も、何の心配もしなくていいんだ。
ああ、ごめんね。 怖がらせてしまったかい?
ふふふふ♡ でも、キミの泣き顔も、とっても可愛いよ♡




