2話-聞いてみよう
顔を見上げてみて驚いた。
「かっこいいー。」
「……あんた、余裕やな…。そんなん言うとる場合か?」
思わず、ズッコケそうになった。(確かにカッコイイけれども!!)
馬上の男の人は、艶やかな栗色の髪は短いながらも光をはね返し、精悍な顔立ち、無駄なく引き締まった体、どこにいても目立つであろう類の人間だった。
「こんな所で何をしている?ここは戦闘区域だから危険だぞ。戦い自体はもう終わっているが、まだ残党が残っているかもしれないし、早く離れろ。」
戦闘区域?
聞き慣れない単語に戸惑いながらも、その男の人の言うことに従うことにする。しかし、
「勇者様!!こんな得体の知れない者たちに近づいてはいけません!!敵の間者かもしれないんですよ!?もっと疑ってかかるべきです!!」
「間者なんてこんな所にいるわけないでしょ?ここは戦闘区域なんだから。」
馬に乗った金髪にヘイゼル色をした美少年ががなりたてた。しかし、同じく馬上のこげ茶色の髪の女の子に窘められる。
「区域でも外れの方だし、近くの街か村の人間が迷い込んできたんでしょうよ。そっちの方がが信憑性高いと思うわよ。」
「そんな戦闘区域を知らないほど幼い子どもには到底見えないだろ!!大体全く同じ服を着ているんだぞ!?しかも私も今まで見たことない服装で。怪しすぎるだろ!!」
全く同じ?
そう言われて愛実は隣の少女を改めて見た。少女は自分の来ている私服と寸分違わぬ服を着ていた。
「服、かぶってるよね?」
「たまたまだよ?」
たまたま?今のあたしの服装は、青い花柄のTシャツに緑の上着、ベージュのズボンである。特に珍しい格好ではないが、全く同じなのはまずない。しかし、少女の方は気にも止めてないようだ。
薄く笑いながら、そう返しす少女をマジマジと見たところでいろいろな事に気がついた。
(母に似ていると思ったけど、写真の母より少し年を取っているように見えるわ。髪も短いし…。)
写真の母は、いつどの写真も髪が長かった。愛実が髪を伸ばしているのもそれが理由の一つである。しかし、目の前の少女の髪は肩を少し超えた程度のセミロングヘアだ。
「そういえば、ここって……んッ!?」
「あー……。国の危機かなんかなんですか?戦っているみたいですけど。」
やっと現状に思い至るまで頭が回転し始めたのに、いきなり少女に口を塞がれた。(ここの事聴こうと思ったのに!!)
でも、彼女の言った内容に少し疑問も感じたので、大人しくしてみる。
「国の危機ではないよ。ここは…」
「何を言ってるんだ?」
栗色の美青年の声を遮って、金髪の美少年が呆れたように話した。それを聞いた少女があれっ?という表情をした。
「ここは戦闘区域なんだぞ?だから戦闘しているんだ。」
「…じゃあ、」
「戦闘区域って何!?」
一番気になっていた単語についてどうしても聞いてみたかった。横で少女が一瞬焦ったような顔をしたことにも気づかなかった。
「戦闘区域をご存知ないのですか?」
馬上の黒髪の女性に初めて声を掛けられた。その声は随分怪訝そうなもので剣呑な雰囲気も含まれていた。警戒心を露わにしため眼光に怖気づきそうになっていたら、
「ここに至るまでの記憶がないんです。」
と、少女が不安気な様子で呟いた。
「……あの…。本当に記憶ないの?」
初めて会った時の印象からは記憶喪失という感じが少女からはしなかった(だって全然不安気じゃなかったし!!)。思い切って尋ねると、少女はにやりと意地悪そうに笑って、
「どうだと思う?」
「だって、そんな雰囲気見せなかったし!!私よりもずっと落ち着いて見えたし…。」
そうだ。彼女は、この環境に馴染んでいるように見えた。しかし、此処のことを知らないとも言っていた。 謎ばかりが深まっていく。
「まぁ。そやけど、記憶喪失のままの方がいいと思うよ。とりあえず、今の所は。」
確かにその通りだった。
少女のその言葉に全員が驚いたようだ。勇者が天馬を降りて近づいてきた。
「記憶喪失なのか?」
「そうみたいです。知らん男の人達に追いかけられて、この森の中を走っていたところからしか覚えてなくて…。」
「そっちの娘もですか?その娘のことも覚えてないのですか?」
黒髪の女性も馬から降りて会話に加わってきた。後ろの2人も馬から降りようとていた。
「わかんない。でもずっと手を繋いでたから知り合いだと思うんですけど……。」
「そんなの信じられるか!!嘘に決まってる!!」
「もー!!あんたうるさい!!ちょっと黙ってなよ!さっきから女の子にそんな事しか言えないわけ!?」
「女とか関係ないだろ!!勇者様の敵だったらどうするんだ!」
「じゃあ、本当に記憶のない娘だったらどうするわけ?追い払って野垂れ死にさせちゃっていいっての?」
「…っそれは…。」
「2人とも静かになさい。」
そう言って黒髪の女性は勇者に目を向けた。
「……とりあえず、行く所が決まるまではここの軍に身を寄せないか?嫌でなければだが…。」
勇者の言葉に美少年が嫌そうな顔をしながら苦言を呈そうとしたが、女の子に阻まれていた。
「迷惑でなければ、それでお願いします。さっき追いかけてきた人達が近くにいるかもしれないし…。」
と言って頭を下げたので、愛実も慌てて右に倣った。
そうしてあたしたちは、先程の森からそう遠くない場所に設けてある軍の陣営に連れてきてもらった。疲れているだろうとの配慮で天幕に少し休憩させてもらっている。もうしばらくしたらあたしたちの今後のことを話し合うつもりだ。
「まあ、そんな時間ないかもしれんから、今のうちに私たちのための相談しよか。」
「あたしたちの?」
「そうやよ、まずは今後どやって…」
「それより、名前!!まだ聞いてないわ。あたしは愛実。火宮愛実って言います!」
ずっと聞きそびれていた名前をようやく聞いてみた。しかし、
「記憶喪失やからな。何とでも呼んで。」
「何言ってるの。記憶そう…」
途中で口を塞がれて最後までいうことができなかった。
「しぃー。誰が聴いておるかわからんから不用意なことは大きな声で喋んな。」
「もごもご。(わかりました。)」
「よろしい。名前は何でも良えよ。…そやな、イーさんとでも呼んでくれ。」
「イーサン?外人?」
「違うけど…。便宜上ね。外人みたいな名前多いし…ね?」
「?」
コンコン。
まだ彼らの名前を聞いていないのに?
返答に疑問を感じたが、ノックの音に気を取られた。
やっと更新しました。。。
ついでにやっと少女の名前を出せました。本当は他の人も出したかったけど、次回に持ち越します。
こんな調子で気長に更新する予定です。この物語を読んでくださる奇特な方。気長に付き合ってください。




