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77、戴冠式

俺達が王宮に入り、数日経過し、王国軍と民兵達も王都へ帰還し、騒然としていた王都も、少し落ち着きを取り戻し、ランギール新王の元、新たな国の誕生を、民は概ね歓迎している様だった、貴族達の中には反発する者も少なく無い数がいるらしく、ジギールやブリュッセルが奔走しているらしい



大分落ち着きを取り戻してきたので、7日後に戴冠式を行う運びになった



戴冠式に花を添える為に、シアとソフィアに話を付けた俺は、ガーを連れて一人拠点に戻っていた


大樹へ向けての旅では、命の保証は出来ない為、ギーに帰還を促したが、可能な限り同行したいとの事で、俺一人でリターンする事になった



拠点に到着し、神木の元に行く、幸い獣人達と会う事は無かった、聖地としてここへ踏みいる事はしていないのだろう、一々崇められては堪らんからな



拠点のコンソールを開き、幾つか用を済ます事にする


ここに来た理由は、最終戦に備え、マクロを作成しに来た、ガーの事はついでに過ぎない



マクロ、つまり、設定した行動を自動で行う、ゲームでの便利機能といったところだ


このマクロの作成は拠点でしか行えず、シアから得た情報から、最終戦で必須になるだろう



それから試行錯誤しながらマクロを組み、正常に作動する事を確認した所で、ガーの件に移る




「数日前にも言ったが、ガー、お前が選べ、此処で事が終わるまで待つか?」



ガーはフルフルと横に首を振る



「では、どんな犠牲を払ってもシアの助けとなりたいか?」



ガーは首を縦に必死に振る



「数日前にも言ったが、お前の障壁は有効だ、今のソフィアならば、一瞬で破る事は容易いだろうが、逆を言えば、一瞬でも足止め出来るという事だ、敵がソフィアの力と拮抗していた場合、致命的な事になる可能性がある、対象が俺の場合は更に足止めを食う羽目になる、前回の事が良い例だ、分かるか?」



「グワァ」と一声鳴き、首を縦に振る



「此処でお前が、俺の指示に従うと誓いを立てても、俺は全く信用しないし、そんな事では連れては行けん、俺は必ずシアを元の姿へと戻す、現状今の状態で、敵の戦神の前に立てれば、100%、「俺が」勝つ、そこに行き着く為の手札の一枚だった物が、お前の邪魔で不要に失ったアイテムだ、分かるか?」



「グワァ、グワァ」



「失った手札の代わりにお前がなると言うならば、連れて行ってもいい、その為には、この拠点で俺の所有物になる設定を、お前が受け入れるならばの話だ」


直ぐに頷こうとするガーを手で制止し



「良く考えて決めろ、所有物となれば、俺は文字通り、手札として使用する、必要ならば、俺は躊躇無くお前に死ねと命じるし、シアが苦しんでいようとも、見捨てて待機しろと命じるかも知れん、俺がデリートの操作をすれば、お前は跡形も無く消滅する、お前が居なくとも、シアを元に戻す、敵の戦神を倒す事は確実だ、つまりシアの目的を果たす為に、お前は不要だ、それでもシアの役に立ちたいと望むならば、俺の手札として連れて行こう、お前は何もせず此処に居るだけで、シアは力を取り戻す、付いてくればお前のせいで失ったアイテムの代わりに、俺が有利に進める為に、お前を利用する、さぁどうする? 此処で待つか?」



ガーは首を振ると、おれの元に降り立ち、その首を垂れ、俺に差し出す


「分かった、今からお前は俺の手札だ、必要な時に切らせてもらう、精々役に立て」



それからガーを俺の所有物へと設定をする、こう問えば、俺の手札に成ることは分かっていた、卑劣かも知れんが、俺の願いを叶える為には、これ以上切り札を使う訳にはいかない、戦神の為に使用するつもりの切り札が一枚、これは決定している、もう一枚の切り札を道中で切りたくない、道中使用すれば、俺の願いは叶わないだろう、道中を最悪ガーを切り捨てでもやり過ごし、現状のまま戦神の前に立つ、それが出来て、願いが叶う確率は五割と言うところだろう




ガーの設定を済ませた所で、ガーを抱え、全力で王都へと走り、僅か2日程で帰還する




王都に到着し、王宮へ行く途中、中央広場にて人だかりが見える、近くに寄ると、住民の他に多くの騎士達が壇を作成している



成る程、此処で民に向けての戴冠式を行うつもりか、、丁度良い、話の分かる奴を騎士の中から探していると、壇の前に、ジギールとマリーの父親がいる、俺は集まる住民の間を抜けて、ジギールに向けて歩き出すと



「そこの男、止まれ! 現在新国王ランギール様の式典の準備中だ、一般人の立ち入りは」



「話の途中で悪いが、後ろを見てみろ、赤鬼が襲って来るぞ」



俺は騎士の後方を指差し、忠告してやるが、間に合わんか、騎士の後方から、顔を真っ赤にした鬼が、猛烈な速さで駆け寄ってきている



「貴様、何を言って、がぶんっ」



後方からダッシュして来た、赤鬼に後頭部をラリアットされて、地面にぶっ倒れる騎士だが、元気な爺さんだな



「レオン様、今お戻りですか?」


「ああ、そっちは戴冠式の準備か」



「ハッ、四日後に戴冠式を行う予定です」



冷静な対応とは裏腹に、足元で騎士を踏みつけてるぞ、爺さん



「丁度良い、壇をもっと手前に持ってきておけ、それと中央の噴水周りを、もっと民衆が近寄れ無い様にしておけ」



「ハッ、その様に致しますが、何故に?」


「俺達からのランギールへの祝い代わりに、戴冠式にちょっとした花を添えるつもりだ、楽しみにしていろ」



「ハッ、ではその様に」


ジギールは作業する騎士達に指示を出し、俺の意向通りに作業は進む




「それよりジギール、何処かで一杯やらないか?」


「良いですな、では何処か近場で」



「それでしたら私の行き付けの店がございます、宜しければ其処で、娘の礼すら満足に出来ていません、是非に」



脇にいたマリーの父親が、話に入ってくる



「マリーの礼云々は必要無いが、落ち着いた店が良いな、頼めるか?」



「ハッ、綺麗処も呼べますが、如何しましょう?」



「綺麗処は、普段で十分間に合っている、落ち着いて飲めればそれで良い、ついでに渡す物もあるしな、ガー、シアの元へ行ってやれ」


俺の横で、透過したガーが、一声上げるが、飛び立つ気配が無い



「お前を奴隷に変えた訳では無い、必要な時以外は、シアに付いていてやれ」


「グワァ」と一声上げて、飛び立った様だ




それから男三人、ブリュッセルの行き付けの店で飲み、その時にかなりの量のアイテムを、ジギールとブリュッセルに渡しておいた、属性魔法の呪符に、今まで集めさせた回復薬などだ、ゴールが見えた今、不要なアイテムを大量に抱えていても仕方無い、後でランギールやマリーにも渡していくつもりだ



それよりも、マリーの父親が涙ながらに、感謝の言葉をループさせ、それに釣られてジギールまで涙する光景は、割と地獄絵図だ、泣き上戸か、、




そんなこんなで、四日が過ぎ、戴冠式が行われる日を迎える




俺とシアは、中央広場横の時計台の上から、その様子を見ている



中央広場の中心には噴水があり、その周りには大きく柵と騎士達が警護に付き、噴水前に式典の壇が設置され、壇上には、着飾ったランギール、その前に跪くのは、ジギールにブリュッセル、ランギールの脇にはマリーの姿も見える



「さて始めるか、シア、派手にやれ」


「はいなの!」



壇上では、式典が進み、ジギール、ブリュッセルの両名が剣を捧げ、戴冠式も大詰めという所だ


シアは杖を掲げ、くるくると回すと、噴水へと杖を指し示すと、地響きと、「メキメキ、ゴウッ」と音を立て、噴水をぶち壊し、その真下から瞬く間に巨木が姿を現す



騒然となる民衆だが、巨木から一人の女性が舞い降りると、その騒ぎは収まって行く


巨木から舞い降りた女性は、その背に、赤と白の光りの翼を背に携えていた



天から舞い降りた、女性はランギール前に降り立つと、2対4枚の翼を大きく広げる


民衆からは、「神だ! 神が降臨なされた!」との声が上がる中、ランギールは目の前に降り立った女性に跪き、それに続き、マリー、ジギール、ブリュッセル、騎士達へと広がり、その輪は民衆にも広がる



『私は偉大なる神の遣い、使徒である、人の子、ユリア=ランギール、偉大なる神の言葉を伝える、汝をこの地の王と認める、神に感謝し、国の為、民の為、その任を勤めよ』



「ハッ、このユリア=ランギール、この命尽きるまで、民の為に身を粉にして勤めると誓います、偉大なる神に感謝と信仰を」



民の反応は概ね良いが、中には、本物か? 魔法だろ? と懐疑的な言葉も飛び交っている、仕上げだな、見せてやれソフィア



『聞くがいい、人の子等よ! 偉大なる神、絶対にして唯一の神は、ユリア=ランギールを、この地を治める王と認められた! その意向に背きし愚かな背信者には、神罰が下される! その力の一端を刮目せよ!』



ソフィアはそう言うと、手を天に掲げる、天には巨大な燃え盛る、もう一つの太陽が発現し、その手を降り下ろすと、その太陽から、炎で出来た龍が無数に産まれ、集まる民衆に向けて降り注ぐ



悲鳴、絶望、恐怖、免れぬ死に直面する民衆に、無慈悲な絶対的な力が行使され、その力が民衆を呑み込もうする中、ソフィアが地に手を付けると、その周囲から光りの槍が無数に発現し、天へと昇る、その光りの槍は降り注ぐ龍と衝突し、その全てが相殺され砕け散ると、白と赤の光りとなって、広場へと降り注ぐ



『人の子等よ、神の存在を心に刻め、そして神の意向に背きし者には神罰は下る、この国に、この地の全てに伝えよ!』



そう言い残し、神の遣いは消える



余りの出来事に、呆然となる人々だが、やがてランギール様万歳! 新国王様万歳!と声が上がり、その波は広がり、大歓声に包まれる



「ご苦労だったな、ソフィア」


『只今戻りました、あれで宜しかったですか?』


「ああ、上出来だ、少々演出過剰な気もするがな」


「ママ、格好よかったの!」




壇上では大歓声の民衆に答え、ランギールが剣を天に掲げている、その様を、俺達三人は時計台の上から眺めていた





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