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66、連合軍と王国軍 両陣営の軍議

王都から1日程進んだ平原




平原にはランギール軍2500、対して王国軍2万、そして先程ジギール軍3500がランギール軍に合流し、平原には連合軍6000に、王国軍2万が距離を開け、睨み合う形になっていた



先に到着し、平原にて陣を引いたランギール軍の天幕に、到着したばかりのジギールが、数人の騎士を連れて入っていく



天幕内には、マリー、ギー、騎士団長のドーンに、ランギールの影武者、それに数人の騎士達がおり、皆立ち上がり、ジギールを迎える



ジギールは先ず、マリーの元へ向かうと、両手を差し伸べる、マリーも慌てて両手を出し、両名は固く握手をする



「御無事で何よりだマリー殿」


「恐縮です、ジギール侯爵様」


マリーだけでなく、天幕にいるランギール陣営の全員が、困惑と驚きを隠せなかった


帝国との戦争での活躍で、男爵位を賜ったマリーではあるが、言わずもがな侯爵との地位の差は、天と地である


その上、握手を求め、尚且つ両手を差し伸べる等有り得ない話であった



咄嗟の事で礼をしそびれたマリーは、慌てて膝を付こうとするが、ジギールに止められる



「その様な礼など不要だ、マリー殿、貴殿は我等の神が、御目を掛けている御方なのだからな」


困惑するマリを他所に、ジギールは次に、ギーの元へ向かうと、片手を差し伸べる


ギーはそれに応じ、ガッチリと両名は握手をする



「ギー殿も来ているとは心強いかぎりだ、宜しく頼む」


「命を受け此処にいる以上、失敗は許されない」


王国内で屈指の力を持つジギールが、獣人の女を友の様に扱う様に、益々ランギール陣営は困惑をする



「全くその通りだな、我等に失敗は許されん、失敗は神への背信行為に等しい、、ん? 皆の者どうかしたか?」


困惑するランギール陣営を代表して、ドーンが答える



「お久し振りです、ジギール侯爵様、侯爵様の対応に、私を始め皆困惑をしている次第でして、、」



「マリー殿に言った言葉が、そのままの理由だ、ギー殿に対しては、我々は大きく括るならば、同じ神を信仰する信徒、同士とも言える仲だ、そうであろうギー殿?」


ギーはジギールの言葉に、大きく頷くと



「我等、森の民の神はリーシア様だ、その神を御助け下さっているのが、レオン様、ソフィア様の両名だ、更に我等の神は御二方を、父母として慕っておられる、当然、我等森の民にとって、御二方共に、神として信仰を捧げる対象だ」



その言葉にジギールは満足気に頷き、直ぐに軍議に入り、先ず最初にジギールが口を開く



「しかし、どういうことだ? 王都より僅か1日の場所に陣を引くなど、余程のアホが軍を率いているのか?」


ランギール陣営に微妙な空気が流れる中、マリーが答える



「王国軍を率いているのは、ブリュッセル侯爵です」



「儂の失言だ、許されよマリー殿」


「いえ、ジギール様が仰るのも当然です、この様な王都の間近に陣を引くとは、多数の民を連れているとはいえど、有り得ません、もっと有利な場所に幾らでも陣を引けたはずです」



「王国の虎が軍を率いておるのか、、一度目の帝国の侵攻にて、ランギール侯爵の功績が光るが、帝国の侵攻に合わせて、北の魔法王国にも動きが合った、奴は逸早く察知すると、僅か1000人の軍を率いて、戦わずしてそれを押さえた、大きく表には出ていないが、その功績はランギール侯爵にも匹敵する、二度目の帝国の侵攻時、逆に其処を利用され、北へと厄介払いされていたがな、奴もまた力と知恵を兼ね備えた英傑と言えよう、王都で勇者気取りの大間抜けとは器が違う」



「罠でしょうか?」


「その可能性は低いとは思うが、先ずは魔戦兵に対してだが、報告の通り民を盾にするであろう、そこに魔戦兵を配置し、あの自爆を放たれては堪らんな」



「その件については我々に御任せ下さい」


「何か策が有るのか?」


「私が少数の騎士を率いて、最前線に立ちます、その後ろに我々ランギール軍を配置し、ジギール様には本陣と、左右のフォローを御願いしたいと思います」



「ランギール軍で盾になるつもりか?」


「はい、それとレオン様からジギール様に此れを」


マリーはストレージから美しい鎧を取り出す



「おお! 此れをレオン様が儂に?」


「はい、耐熱に優れた神龍の鎧です、自爆に対して非常に有効です」



「おお! その様な貴重な者を儂に、これは儂も」


鎧を確認し、感激した様子のジギールに、申し訳なさそうにマリーが話を続ける



「此れをお渡しする際に、ジギール様にレオン様から伝言があるのですが、、」


「おお!御言葉まで、それでレオン様は何と?」



「此れを着て、後方で茶でも飲んでいろ、年寄りは命を粗末にするな、、と、、、」


マリーの言葉に凍り付く天幕内だが



「そうか、、神の御言葉ならば、仕方あるまいよ、儂は後方にいるとしよう」



少し寂しそうなジギールにマリーがフォローを入れる



「あの、レオン様はジギール様を気遣っていらっしゃるのかと、、」


「分かっておる、少し残念でもあるが、御気遣いに嬉しくも思っておる、儂の仕事は戦が終わった後だと思っておるしのぅ、儂等ジギール軍はフォローに回る、頼むぞ」


「はい、御任せ下さい」






場所は移り、王国軍の本陣でも軍議が行われていた



天幕内には怒号が飛んでいた



「どういうつもりだ!? こんな場所で陣を引き、数日を無駄にするとは!!」



天幕内で声を張り上げているのは、ドルフ伯爵と言い、この進軍に際し、ドラギールが無理矢理捩じ込んだ副指揮官である



「落ち着かれよ、幾度も説明したであろう、戦に馴れぬ民を連れている以上、無理な進軍は士気が下がる、それに此処ならば、直ぐに王都から補給も出来る、消耗戦には最善であるとな」


怒号を受けても、冷静に回答するブリュッセル侯爵に対して、ドルフ伯爵は更に続ける



「兵数は勝っているのだ! 押し潰せば良かろう!」


「此方の兵の半分は民だ、対して向こうは、二度の帝国との戦をも乗り越えた兵士達だ、練度が違う、大きくぶつかれば、被害は甚大になる事は明らかだろう、それとも貴殿の連れて来た兵士達だけで、どうにか出来るのか?」



怒りの治まらぬドルフ伯爵に、黒ローブの男が耳打ちすると、ドルフ伯爵は小声で「チッ、分かっておる」と返すと


「まぁ良い、此処は引き下がろうではないか」


こうして、ドルフ伯爵と黒ローブの男は、天幕を後にする





ドルフ伯爵と黒ローブの男の去った天幕内



「義父上に、あの様な無礼な物言いとは」


「気にするなラッセル、寧ろあの様なアホウを寄越したドラギールには、感謝したいくらいだ、其れよりもラッセル、例の件は抜かりないな?」



「ハッ、万事抜かりなく」


「ランギール侯爵は、常に最前線に身を置く、成ればこそだ、必ず勝つぞ、王国に仇なす敵を討ち、民を守るぞ」


「はい、義父上、必ず」




王国軍、本陣より少し距離の離れた天幕にて



「ガシャーーーーーン!!」 天幕内に置かれたテーブルを、蹴り倒した音と、怒りをぶちまけるかの様な怒号が響く


「クソ! なめやがって!!」


怒り狂うドルフ伯爵を、諭す様に黒ローブの男が宥める



「落ち着いて下さい、ドルフ伯爵、直ぐに戦も始まります」


「分かっている! しかし怒りが治まらん、あのロートルめ!」



「ドラギール様からは、戦に勝利する事を命じられていますが、場合によっては自軍内で、不幸な事故が有っても良いと、仰られていました」



黒ローブの男の言葉に、ドルフ伯爵は少し考えると、ニンマリと顔を歪める



「成る程、戦に事故は付き物だな、そして不幸にも事故が起きた時の為にいるのが、副指揮官と言うことだな」



「その通りです、ドルフ伯爵」




天幕内には、嫌らしい笑い声が響き、その数時間後、王国軍2万と連合軍6000の戦が始まったのである



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