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64、都市ランギールの攻防と成長

街へと散った魔戦兵達は、住民に襲いかかるが、返り討ちに合い、次々に倒されていき、散った16人は、現在10人へとその数を減らしていた


住民への不意討ちを仕掛けているつもりが、その実、住民は全て騎士か傭兵である


しかし都市ランギールに残る騎士と傭兵は、レオンによるパワーレベリングを受けた者は少数で、力関係で言うならば、魔戦兵の方が遥かに上だった



では何故、簡単に返り討ちに合っているのか?


一つは魔戦兵とは、魔物の力を十分に発揮する為には、身体を魔物化する事で大きく力を発揮出来るが、住民相手に使用する必要性は無いと判断していると共に、魔物化はその見た目からも目立つ為、兵士達との交戦を控え、より多くの住民を殺す為に、魔物化を使用していない


二つ目は、パワーレベリング時に得た素材を使用し、街にいる兵士達の武具の水準は、末端の持つ武具ですら、この大陸において、秘宝と遜色の無いレベルになっている為である






「ドーーン、パーーン」と狼煙らしき物が打ち上げられる中




「何だこれは! クソッ! クソッ!」



散った魔戦兵の一人が、襲い掛かった住民の反撃に合い、深手を負いながらも、距離を取り、有り得ぬ状況に不満を爆発させる



「グォォォ!!」


魔戦兵が吠えると、その身体は不自然に肥大していき、その身を化け物に変える


深手を負った事から、命令の遂行は困難と判断し、魔戦兵は自爆を起動させる


「キュイーーン」と力の集束する音がなり、今まさに自爆するという瞬間




「シュッ、ガッ!」と魔戦兵の足元から音がする


魔戦兵が音がした地面を見ると、石畳の道にも関わらず、地面には矢が深々と突き刺さっていた



「狙撃者がいたか、どこに隠れてるいるか分からんが、しかしもう遅い、、まとめて焼け死ぬがいい!!」



すると、どこに隠れていたのか、数人の住民が手に大きな袋を広げながら、迫ってくる


「バカめ! 何か知らんが死ね!! 、、、何故爆発しない?!」



魔戦兵は、自爆が発動しない事に慌て、自身の身体を確認すると、その胸にポッカリと空洞がある事に気付く



「まさか、、あの一撃で、、」


魔戦兵は周囲を見渡すと、遥か遠方の時計台が目に入る、目を凝らすと時計台に豆粒の様に見える人影が確認出来た


「バカな、あそこからだと!?」


見つめる時計台の人影が、キラリと一瞬光った所で、魔戦兵は意識を失った


その額には、矢が貫通した穴が空いていた




「よっし命中だ、楽勝だねぇ~」


「兄さん、真面目にやって下さい、失敗は大きな被害に繋がるんですよ?」


「分かってるつうの、次の合図はあそこか、、アリア、フォロー頼むわ、家が邪魔で射線がとれねーよ」


「分かってます、兄さんは標的付近に撃ち込んで下さい、私が操作して命中させます」



各所で魔戦兵の発見と同時に狼煙で知らせ、そこを時計台から長距離射撃をする事で、迅速な対応を可能としていた


パワーレベリングにより、大きく力を上げた事で、ジョンはこの超長距離射撃を可能としていた


同様にアリアも、狼煙の上がった地点を、速やかに風魔法を利用した長距離探知をしており、標的の捕捉、風魔法による補助で、射線が取れなくとも、必中を可能としていたのである






「グゥ、傭兵ごときに何故だ、、」


ジョン達の射程範囲外の地点、散った魔戦兵の一人がいた、既にその身は化け物とかし、その周りを距離を開けて傭兵達が包囲している


そんな中、一人の傭兵が対峙している、片手斧に盾を持つ、ベンである



「皆さんはコイツが逃げないように、周囲の警戒を頼みます、コイツは俺がやりますので」



魔戦兵は何度も、爪をを伸ばしジョンに向けて放つが、ベンはどっしりと構え、その攻撃を軽々と盾で受け流しつつ距離をつめていく



「注意者リストには、こんな奴はいなかったぞ!? クソッ、貴様は何なんだ!」



ベンは吠える魔戦兵に一切答える事は無く、丁寧に攻撃を受け流し、堅実に間をつめると



「ぐぁぁあああ!!」


片手斧で魔戦兵の右腕を切り飛ばす


魔戦兵は苦痛に顔をしかめるが、顔を歪めながら笑みを漏らすと、残った左腕で、ベンの首を掴むと



「貴様も道連れだ!! 業火に焼かれて死ぬがいい!!」


ベンはその左腕を、盾で跳ね上げると、即座にその腕も切断する



「もう遅い! 死ね!!」


両腕を失った魔戦兵から、魔力の集束する音がなる



「皆! 伏せろ!!」



ベンは即座にストレージを開くが、次の瞬間 「ドガァーーーーーーーーン!!」という轟音と共に爆風が広がる



爆心地は大きく抉れ、黒炎の火花が周囲に散る


ベンも爆風に飛ばされたのか、かなりの距離を吹き飛ばされ、地面に転がっている



「おい! ベン! 無事か?」


転がるベンに、周囲の傭兵が声をかけると、何事も無かった様に、ベンは立ち上がり



「平気です、ここの後処理を頼みます、俺は他の合図のあった地点へ向かいます」



「おう、無理すんなよ、ここは俺達に任せておけ」


ベンは大きく頷くと、狼煙の上がった地点へ向けて、走りだした



「よし、残った俺らは消火後、散った石や瓦礫をかたすぞ」


「おう!」と傭兵達は手分けして、作業を開始したのだった



魔戦兵の自爆の被害は、本来凄まじい、しかし今の自爆の被害は、爆心地こそ大きく抉れているが、小規模な上、黒炎は僅かに周囲にちらつく程度である、爆心地にはキラキラと青い光りが、紙吹雪の様に舞っている



この紙吹雪の様な物が、自爆の被害を最小限にした物である


この正体は革の袋だ、無論只の革の袋ではない、革は死の森の高位の魔物の皮を使った袋で、その内側には神龍の鱗から作った粉によって、コーティングをしてある


つまりベンは自爆直前に、この袋をストレージから取り出し、魔戦兵に被せたのだ


こうする事で、衝撃や黒炎は大きく威力を失い、強化されている防具も相まって、被害を最小限にする事に成功した


この袋は、街にいる兵士全てが携帯しており、致命傷を避ける為と、街への被害を最小限にする為に、ランギールが事前に配布してあった物である



リーリエの魔法を自爆と見立てて、耐久テストを重ねる中で、思い付いた案であり、実験通り自爆の被害を最小限に食い止める事に成功していた





傭兵ギルドの直ぐ手間



「どうした? 虫を駆除するんじゃなかったのか?」


その身を巨大に膨張させ、さながら上位のトロールの様な化け物、商人を装っていたリーダー格の魔戦兵が、ガルバに向けて煽りを入れる



「うるせぇよ、こっからだよ、まぁみてろや」


肩で大きく息をして、全身ボロボロのガルバは 「オラァァ!!」と気合いを入れ、巨大な戦斧を、魔戦兵のリーダーに振るう、対してリーダーは拳で迎え撃つと



「ギーーーーーーン!! メキ、ミシ、バキャーン!」とガルバの振るった戦斧は、砕け散る



「おや? 随分脆い斧だな、次は素手で殴り合うか?」


斧を粉々にした事に気を良くしたのか、リーダーは上機嫌にガルバに語りかける



「糞野郎が、てめえの勝ちだ、、俺じゃ勝てねぇ、、クソッ、あばよ」


ガルバはリーダーの目の前で、諦め気味に捨て台詞を吐いた後、無防備に立ち尽くしている



「フンッ、随分往生際が良いな、ではさらばだ傭兵」


リーダーはそう言うと、腕を振り上げ、肥大した拳をガルバに向けて放つ



「ああ、さらば、精々あの世で宜しくやれや、この糞虫が」



リーダーはガルバに向けて、拳を降り下ろすが、その拳は届かない、それどころか、ガルバが回転している


いや、ガルバが回転しているのでは無く、自身の視界が回転している事に、気付くリーダー格の魔戦兵



大きく視界が回転し、その回転が止まった所で、自身の異常を理解する


リーダーの目に写っているのは、自分を見下ろすガルバ、それと自身の魔物化した体、その体にはあるべき物、頭と降り下ろした腕が無かった



「いつの間に、、こ、この俺が、、申し訳ありません、盟主さ、ま、、」


こうしてリーダー格の魔戦兵は絶命した



「チッ、これから奇跡の大逆転だったつうのに、よけーな真似しやがって、鼻垂れが」


ガルバが悪態を付くと、頭部の無い魔戦兵の影から、一人の男が姿を現す



「すいません、邪魔をしたみたいで、それよりかなり傷を負った様ですね、ギルドで休んでいて下さい、俺は他に向かいます」


男は黒付くめ装束に、腰には左右一本づつ、細身の剣を携えている



「チッ、人を年寄り扱いすんじゃねぇ! 、、、まぁなんだ、助かったぜダン、アサシンも板に付いてきたじゃねーか、ほらとっとといけ!」


ダンは小さく笑うと、一つ頷き、高速でその場から消えていった



以前のダンの武器は両手剣、戦闘スタイルは、純粋なアタッカーであり、正々堂々切り伏せる物だった


しかし彼の体格、才能を考えるにそれは不向きだった、当然ガルバやライラは、動きを生かした軽い武器で、敵の虚を突いたり、翻弄する事を勧めていた


物語に出て来る勇者や英雄に憧れるダンは、ガルバやライラの提案など呑まなかった



帝国軍との戦争から、彼なりに考え、自身を見つめ直し、ライラに師事し、二刀流の習得に努めていた、動きも直線的な物から、変則的に虚を突く物へ変えて行き、同行したパワーレベリングを経て、一流のアサシンとも言える力を手に入れていた



ガルバは回復薬を、一気に飲むと



「こりゃあ、いよいよ俺も現役引退か、知らねえ間に、どいつもこいつもイッパシになりやがって」


フンッと鼻を鳴らし、ガルバはギルドへと歩き出した、その背中は嬉しそうでもあり、寂しげでもあった

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