53、弱き英雄を強き王へ
二人が落ち着いてから、互いの持つ情報を交換する
ランギールは襲撃を受けてから血眼で情報を集めていたとの事だ
襲撃者については帝国軍に酷似した者がいたそうだ、傭兵部隊が対峙した指揮官が魔物と人の混合したような化物だったらしい
しかし帝国や他国から侵入した可能性は低いとの事、国内から差し向けられた者、国内で自分と俺達に私怨が有り、そんな輩を雇える高位の者、そこまで説明したランギールは言葉を詰まらせている
そんなランギールに此方の情報を伝えると
「その情報は本当に、、いや分かった、少し時間が欲しい」
重苦しい空気の中
「ぐぅー、すぴぃー、もうその薬は飲みとうない、むにゃ、うーん」
リーリエがソファーに倒れ込み魘されていた、流石に無理をさせ過ぎたしな、叩き起こそうとするギーを制止する
「そこの賢者は勝ち馬に乗るそうだ、精々こき使うと良いさ」
俺達は執務室を出、食事を取り、何時もの客室へと向かう、ギーは隣の客室でリーリエと同部屋だ
さてランギールがどうするかだが、十中八九王都とはやり合う事になるだろう
刺客を送り始末しようとした事から、王都は掌握していないかも知れんが、あの魔戦兵を複数抱えているならば、時間の問題だろう
仮にランギールが降りても、俺は何ら構わない、森を拠点としてジギールを押し上げるだけだ
拠点を手に入れた今、物資などはジギールを使えば変わらん、いや、森の拠点に近い分、ジギールの方が利便性も高い
ソフィアが気にかけているマリーだが、今までの貸しと救ってやった命だ、ランギールから貰い受けてジギールの騎士にでもすれば良いだろう
まぁランギールは降りないだろうがな
『レオン様、今後ですが帝国軍同様に、私が力を振るえば宜しいですか?』
「いや、仮に内戦になったとして、俺達は表に立つつもりは無い」
『以前仰られた私に無用な人種の虐殺をさせたく無い為でしょうか?』
「それも有るが、王都の兵がどれ程かは知らんが、まぁ最低でも1万はいるだろう、敵国なら被害を気にする必要は無いが、この国として数万の人間が死んでは、その後治める事は容易では無いだろう、国力の大幅な低下も招くだろうしな」
『では私達は傍観すると?』
「現状は何とも言えんな、状況次第だが、双方被害を抑え引き延ばしている間に、頭を叩ければ理想だろうが、引き延ばす事も、頭を叩く事も問題があるな」
『例の魔戦兵でしょうか? 頭は私が潰せば宜しいのでは?』
「そうだ、問題は魔戦兵だ、頭の方はソフィアがやれば確かに簡単だろうが、俺達が力を貸すとしても御膳立てを整えるまでが理想だろう、やはり肝心な所は次代の王の役目だろう、だからこその問題だ」
『弱いと言うことでしょうか?』
「そうだ、頭を叩くとして、引き付ける方も力が足らん、リーリエの話から自爆をする前に絶命させれば、起動出来ないらしいが、それが出来るのはリーリエとギーくらいか、マリーは自分に防壁を張れば問題無いが相性は良くないな、その二人も相手が複数となれば凌ぎきれまい、何より肝心の神輿が弱い」
『では以前マリーを鍛えた様にでしょうか?』
「そうだな、パワーレベリングをする必要は有るが、それだけでは足らんだろうな、何か自爆を含めて有効な防具を用意出来れば良いが、耐熱特化の防具ないし、素材があればいいのだろうがな」
ゲーム時なら容易く素材を集めて防具を作れるのだが、明日にでもランギールとリーリエに聞いてみるか、などと考えていると、シアが何やらソフィアに耳打ちをしている、、嫌な予感しかしないが、、
「どうかしたか?」
いつにも増してドヤ顔のシアに尋ねると
「シアはしってるの! あつくないすっごいのしってるの!」
「ほほう、眉唾物だが聞こうか?」
するとシアは目を閉じ、口を尖らせると
「ん~、むちゅ~なの! ん~」
と迫って来るが、隣のソフィアまで『ん~、ん~』とシンクロして迫って来ている
俺は二人に、「バチーン、バチーン」とデコピンを返してやる
「ぎゃ~なの!! おでこわれちゃうの~!!」
と床を転げ回るシア
だがもう片方が全く止まらない、くそ! このポンコツ! 目を覚ませ! と数度デコピンを喰らわしてもびくともせずに迫って来る
おいシア! 助けろ!
頭を押さえて凌ぐ事数分、シアの助けも借りて何とか止めたが、どっと疲れた
「それでシア、何か心当たりがあるのか?」
「すんごいのがいるの! したにいて、おおきいの! はねがあっておくちもすんごいの! みずもばばーってなの!」
はいはい意味が分からん、いつも通りソフィアに通訳をしてもらうと
地下に巨大な水龍がいるらしく、そいつの素材ならば耐熱性なら完璧らしい
「まずその話は本当なのか?」
「シアはうそつかないの!シーちゃんがおしえてくれたの!」
シアはそう言うと、ストレージから小さな杖を取り出し、得意気に掲げている
なんだその杖は? 飾り気のない木製の杖だが、それにシーちゃん?
「神木の杖か?」
「そうなの! シーちゃんはものしりなの!」
「成る程、仮にそれがいたとして、何処にいる? どこぞの秘境か? この大陸外か? パワーレベリングに時間を割く必要も有る、内戦は直ぐには無いだろうが呑気に秘境にドラゴン退治する時間の余裕は無いぞ」
シアは杖を掲げ、ふんぞり返ると
「だいだいけじやシアが、おしえてあげるなの!」
けじやって何だよ、賢者だぞシア、まぁ付き合ってやるか
「偉大なる賢者シアよ! 水龍は何処にいるのか? 教えて頂きたく」
と頭を下げる俺に満足したのか
「うむうむ、おしえてあげるなの! もりのいえからしたにいけるの!やまにむかっていくなの!」
うむうむ、分からん、クスクス笑ってないで通訳してくれソフィア
死の森の神殿から地下に行くことが出来、その地下を山脈に向かい進むと水龍がいる、こういう事らしい
神殿とは俺達が降り立った神殿の事か? 出来すぎている話だな、そんな都合の良い話があるのか?
「ぽかん」と俺の頭をシアが杖で叩くと
「うそなんていってないの! そこにもシーちゃんがいるの! シーちゃんをまもるのにいたのに、おなかがぺこぺこで、わるいこになったの、だからやっつけていいの!」
その地下にも神木が有り、それを守護する水龍が狂い、だから討伐をして良いという事か
無駄足でもそれならば時間はそこまで掛からないか
「分かったシア、水龍討伐に向かおう、但し明日のランギールとの話し合い次第だが、先にパワーレベリングをする事にはなるだろう、それ以前に少し休息を取らねばな、このところ強行軍だったしな、ソフィアもそれで良いか?」
『はい、レオン様』
こうして翌朝、ランギールに呼ばれ執務室へ行くと、そこには昨日のひどい有り様のランギールではなく、英雄然としたランギールがいた
皆椅子に腰掛けた所で、俺は問う
「決まったか?」
迷いの一切無い表情でランギールは言う
「ドラギールを討つ」
「それで?」
「其処からはジギール侯爵次第だが」
「ジギールは担ぐ神輿は決めているそうだぞ?」
ランギールは目を閉じ、息を一つ吐き、目を開くと
「ドラギールを討ち取り、以前の様に王を支える事も出来よう、しかし帝国との戦しかり、時代は弱き王を許さぬ、私が護ろう、このランギール領だけで無く、グランギールの全てを、私が王になる」
「決まりだな、俺達が御膳立てを整えてやる、弱き英雄ランギールを、強き王にしてやろう」
「おばさんかわいそうなの、ずっとひとりなの」
シア、人には絶対に言ってはいけない言葉があるんですよ、それとソフィア、口元が笑ってるぞ




