49、神の怒り
神木が蘇生した事で、本来の神聖な空間に戻った中、獣人達に目を向けると
ギーを始め皆、地に頭を付けている、リーリエだけが間抜けな顔を晒し棒立ちになっているが
平伏するギーの元に行き、倒れたシアを休ませられる場所がないか聞くと、大樹の最上階に部屋があり、直ぐに案内しますとの事で、ソフィアにシアを任せ俺はここに残った
獣人達は「リーシア様が降臨なされ神木を御救いになられた」と咽び泣いていた
ソフィアとシア、獣人達が上層へ行き、俺は神木の手前にある祠の前に立ち、祠の扉を開け中を確認する
「有り得ん、まさか本当にリーシア様なのか? 御主等は一体なんなのだ?」
呟く様に言うリーリエに振り返り
「お前等の言う神と、シアが同一かと問われれば、状況からしてそうなのだろう」
考え込むリーリエに、俺は話を続ける
「お前等亜種族が神と崇める者に頼まれ、俺達は力を貸してやっているだけに過ぎない、それと俺は今機嫌が悪い、直ぐにこの場を去れ」
状況に付いていけずに混乱しているのか、リーリエはフラフラと上層へと消えた
開いた祠の中には一体の木像が置いてある
女の像だが、作りは粗く何とも言い難いが、その女の耳は突き出し、シアの特徴的な耳と酷似していた
俺はストレージから一つのアイテムを取り出す
奇しくもそのアイテムは、女神を模した様な石像だ、その石像を眺めながら思う
この木像の様にシア本来の姿は成人のものだろう、この世界を管理し神と崇められている様な存在だ
外見などそもそも意味をなさないかも知れんが
力を失い子供の姿になっているだけだ、地球で俺に子供などいなかった、しかし俺を父と慕い甘えて来る
短い時間だが愛着や情も移る、俺の目的や備えの為には、ここでこのアイテムを使う事は悪手だ
目を瞑り思い返すと、無邪気にじゃれついてくるシア、それに満面の笑みのソフィアが浮かぶ
俺は目を開くと、石像を握りしめ使用した、石像は光の粒に変わり消えていく
コンソールで確認すると、ステータスの下に12:00に文字が現れ、そのカウントが減っていく
俺は祠の脇にある石に腰掛けると、静かにカウントが終わるのを待った
カウントが0になり、アイテムの効果を確認し、幾つかの設定を済ませコンソールを閉じる
『まだ此方にいらしたのですか?』
少し疲れた様な、安堵した様な声がかかる
「シアはどうだ?」
『相当な無理をしたのでしょう、数値では完治していても直後は苦しそうにしていました、今は顔色も戻り落ち着いた様子で寝ています』
「そうか、さて今後だが神木が蘇生した事で、奴等はまた此処を狙う可能性が出た、最高の餌になるな」
ソフィアは微かに顔を歪めると
『ですが此処が戦場になりますと、また神木に悪影響が出る可能性が、、そうしますとシアが、、』
「それが何だと言うんだ? 不服か? 」
『不服などありません、ありませんが、、』
「随分歯切れが悪いな? 俺は不服だがな、奴等に二度とこの地を踏ませるつもりは無い、現状ここに群がる蝿も直ぐに消し去るつもりだが、お前は違うのかソフィア?」
俺の言葉を受け、ポカーンとした表情になった後、少し呆れた様な微笑みを浮かべるソフィア
『いいえ、レオン様と同じ気持ちです』
「では、外にうろつく蝿をかたすとするか、ソフィアお前はシアの側に居てやれ、俺がやろう」
穏やかな表情だったソフィアが一転、険しい表情と変わる
『レオン様、私にお任せ下さい、先日の件をもうお忘れですか?』
何時もなら気圧される迫力だが
「弱く才能の欠片も無い少女だったお前に、力を与えてやったのは誰だ?」
『レオン様です、しかしそれとこれでは話が違います』
俺はソフィアの前まで行き、手を伸ばす
「俺を力づくで止めてみるか? 出来るかお前に?」
俺は伸ばした手をソフィアの頭に向けると、ソフィアは全身を震わせ、即座に後方に飛び退く
「分からずとも危険は感じれるのか、そう怯えるなソフィア、俺に任せておけ」
まだ震えるソフィアの頭に手を置き、安心させるように撫でる
ソフィアを連れ、入り口のあるフロアに戻ると、シアがギーと獣人の集団を伴い下に降りて来る
シアは俺を見付けると駆け出す、俺は片膝を付いて向かえると、シアは俺の胸に飛び付いて来た
「パパ、ありがとうなの」
「気にするな、回復薬など幾らでもある、それよりまだ顔色が良くないな」
「ちがうの、もうわるいやつに、ここのこがいじめられないの、ありがとうなのパパ」
「シアには分かるのか、後は俺に任せておけ、ソフィアと一緒に休んでいろ」
「はいなの!」と愛くるしい笑顔を向けた後、ソフィアに抱き抱えられる
さてと、外の蝿をかたすとするか、戦神とは別件の様だが、この怒りを納める足しにしてやろう
外に足を向けると、ギーを筆頭に、獣人達が皆膝を付き、俺に頭を下げる
「何のつもりだ?」
「我等の神リーシア様の御父上とは知らず、度重なる非礼を御許し下さい、神たるレオン様にとって矮小な我等ですが、微力ながら我等の力をお使い下さい」
「勘違いするな、俺はシアの保護者代わりだ、それに俺は神などで、、いやギー、同胞の無念その手で晴らしたいか?」
「望めるならば是非に」
「良いだろう、晴らさせてやろう、それに神に背く者に神の怒りをくれてやる、外の蝿に神の力とは何か教えてやろう、貴様達獣人も刮目しろ、神に背く愚かさを」
ギー達獣人を引き連れ、大樹の外に出る、ソフィアはシアを抱えたまま最後尾から着いてきている
ソフィアに目線を向けると、困った様にソフィアはシアに目線を落とす
シアが首を横に振りながらソフィアに何か訴えている、溜め息を一つ吐き外に目を向けると、そこには頭部を包帯で覆い、黒装束の者達が綺麗に30人横一列に並んでいる
俺は黒装束の集団に進み出て
「御苦労、神に背く愚かな蝿共」
「貴様! 我等に何をした!?」
と一人の男が怒鳴り散らす
「五月蝿いな、お前は呼吸する事を禁止する」
周囲が俺の言葉に何を言ってるんだ? と暫し沈黙が流れるが、その男が急に苦しみ出すと、喉をかきむしり、やがて泡と唾液を撒き散らし地に倒れた
「よし、静かになったな、では質問だ」
「き、貴様! 何をした!!」とまた一人の男が口を開く
「首を千切れ」
その男に向けて俺が言うと、男は自分の頭を掴み、捻る様に渾身の力で自分の首を胴体から引きちぎった、男の胴体から噴水の様に青い血が吹き上がる中
「話を続けよう、貴様達は何者だ?」俺が一人の男を指差すと
「我々は魔戦兵だ、魔物の組織を体内に移植した兵士だ」
「馬鹿な! そんな事をして正気でいられる訳がないわ!」
と被せ気味にリーリエが口を挟む、ギーに目線を送ると、察したのだろう、リーリエは数人の獣人に押さえ付けられる「はなせ! 我は賢者だぞ! もがはなへ!ほが」と口に布を噛まされ縄で取り押さえられている
「で? 移植して何故正気でいれる?」
「通常そのまま魔物の組織を移植すれば只の化物に変わるが、獣人の組織を繋ぎとする事で解決をした」
「なるほど、獣人の心臓を抉り取ったのがそれか、ここに来た目的も獣人の心臓か?」
「そうだ、、くそ!? 勝手に口が答えちまう!?」
「よしお前はもう良い、潰れろ」
次の瞬間、男は何か巨大な物でプレスされたかの様に潰れ、男だった残骸と青い血だまりに変わる
「くそっ!操作系の魔法か! やるぞ!!」
と一人の男が合図をするが
「自爆、自殺を禁止する」
黒装束の集団、魔戦兵と言ったか、唸り声を上げるが当然何も起きる事は無い
「さて質問を続けよう、俺達を襲ったのはお前達の仲間だな? 目的と誰に頼まれた?」
俺が一人の男を指差す
「我々は盟主の指示の元、世界に混沌を撒き散らすために行動をしている」
「盟主とは?」
「我々兵士は盟主の事は分からない」
「では、何のために俺達を狙った?」
「我々は様々な国に入り込み活動を開始した、王国の要人の依頼だ」
「その要人とは誰だ?」
「グランギール王国ロイヤルガード、ドラギール公爵だ」




