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46、城門の悪魔

「今、背に黒い翼と言ったか?」


「そうだ! 我等同胞と神木の命を奪いし悪魔だ!」


女は思い出したのか興奮気味に声を張り上げている



「ジギール、この二人を連れて行き、話を聞きたいがいいか?」


「構いませんが、宜しいので?」


「ああ、心配するな、少しでも不自然な動きをしたら責任を持って殺す、ソフィアにもそう指示を出そう」



そのやり取りを聞き、巨漢の男が女を抱えたまま、大きく後方へ飛び距離を空ける



「抵抗せずに大人しく同行しろ、それと逃げれると思うなよ?」


二人に向けゆっくりと俺が進むと、女が羽交い締めにされていた腕を振りほどく


「やはりあの男の仲間か! 敵わずとも、せめて一太刀! 散った同胞の無念をここで晴らす!!」


女の青い目が金色に光り、肩まである髪が逆立ち「パチッバチチッ」と電撃の様な物が女の身体の周りを覆い出す


「あの時は使用しなかった奥の手か、残念だが今回は喰らってやらんぞ?」


俺は女の動きに集中する、踏み出す女の動きはスローモーションの様だ


かわし腕をへし折り、足を砕くイメージをする



「やめよ! 森の民の女!!」


と後ろから声がかかり、女は飛び込む寸前で止まる、俺が声の方を振り向くと、リーリエがこちらに歩み出る



「邪魔をするなリーリエ、直ぐに終わる」


「我が話をつける、無駄に傷付ける必要はあるまい?」


俺はリーリエの首を掴み、持ち上げると、顔を引き寄せる


「何時からお前は俺に指図出来るようになった? そのお節介は、お前の命に釣り合うのか? 弱き者は怯え従へ、安い命でも大切にしておけ」


リーリエは、俺の脅しに一切臆する様子も無く、真っ直ぐに俺を見返すと


「勘違いはしておらん、手間は取らせん、頼む」


そう訴えるリーリエを、俺は女目掛け放り捨てる、リーリエは地に落ち2度3度跳ねて女の足元で止まる


「大人しく同行するようにさせろ、貸し一つだ」


リーリエはヨロヨロと立ち上がると


「感謝する、借りは必ず返そう」


その様子に呆気に取られていた女がリーリエに近寄ると


「平気か!? あの男、やは」


「やめよと言っておる! 大人しく同行するのじゃ!」


リーリエへの鬼気迫る迫力に固まる女


「我はエルフじゃ、分かるな?」


その言葉に女はリーリエを見返すと、大きく一つ頷く


「種族は違えど、同じ古代の神を信仰し、自然との調和を望む亜種族、大きく括れば同胞とも言えよう」


「ならば同胞の無念を晴らす好機を分かるだろう!」


リーリエは女の両腕を掴み、真っ直ぐ見据えると



「無駄じゃ、無念を晴らす事など出来ん、仮に一太刀浴びせても、あの男の従者の逆鱗に触れるかも知れん、触れれば最後、御主の同胞全て、いや御主等の住まう森はこの地から消える事になるやも知れん、その覚悟はあるか?」



「な、なにを馬鹿な事を、、」



「馬鹿な事では無い、曲がりなりにもこのグランギールの賢者と呼ばれるエルフ、リーリエが保証しよう、それにじゃ明確に敵と見ているのならば、御主達を捕らえ同行させる事はせんじゃろう、大人しく同行し、話を聞かせてくれまいか?」



後ろで経緯を見守っていた巨漢の男が近寄る


「お嬢、賢者リーリエの名は聞いた事があります、ここは従いましょう」


女は少し考え込むと身体の力を抜き、小さく頷いた




「話は付いたようだな、後でリーリエにこれを渡しておけ」


俺はジギールにストレージから出した回復薬を渡す



「ハッ、、」


「大人なげないか?」


「いえ、そんな事は」


「リーリエの価値とは何だ?」


困惑した様子のジギールは


「賢者と言われる知識に力、グランギール随一の魔法士と言うところでしょうか」


「肩書きは付加価値に過ぎない、リーリエの価値とは詰まる所、力だ」


「それは分かりますが」


「お前やランギールの様に、政治や人を扱う事に長けている訳ではない、対応も杜撰だ、そして俺はお前達に力を望んでいない、つまりリーリエは俺と交渉する材料は少ない、線引きはせんとな、度が過ぎればソフィアはそれを許さんだろう」



こうして二人組を連れ城へと向かった、隊列は護衛の騎士で前後を挟み、俺は中央でリーリエと二人組は後方、ジギールは先頭の騎士の後ろに続く



城門が目前の所で、先頭を警戒しながら進む騎士の足が止まる


ジギールが騎士の肩に手を置き確認すると、ジギールも騎士同様ピクリとも動かず固まっている



「どうした? 何かあったか?」と俺が問うても一切の反応が無い


俺に仕掛けて来た奴等が城へ襲撃でもかけたのか?


俺も先頭まで行くと、固まるジギール、騎士達が小刻みに震えている



何事かと城門に目を向けると、途端に俺の手足が震える、身動きは一切取れず、血の気は引き、冷や汗がどっと出る


城門に本来いる騎士の姿は無い、いや数人いるが昏倒し泡吹くもの、痙攣する者が見える



城門の中央に、憤怒の化身とも言える悪魔が、そこに顕現していた


見たものに恐怖と絶望を与える、人智の及ばぬ暴力の権化


俺はこれ程の恐怖と絶望を味わった事は無い


身体は震え、足は一歩も動かず、己が弱者である事を痛感する




そう門の中央には、憤怒の表情のソフィアが仁王立ちしていた


その怒気から来るものか、ソフィアの周りの空間は歪んでいるかの如く闘気が視認出来る


むりむりむりむり、なんだあれ? 何に怒っている?



固まる俺をソフィアが確認し、俺と目線が合うと、美しく、そして優しく微笑むソフィア


良かった、何時ものソフィアのようだ、もしやソフィア側も襲撃を受け、警戒していたのかっと、歩を進めようとした所で気付く


顔は微笑んでいるが、俺を見付けた事で、視認出来るほどの闘気が倍以上に膨らんでいる、、、




怒りの対象は、俺でしたーーーー!、はいアウトーーーーー!!


待て、まてまてまて、俺が何をした? 激怒される覚えが無い、しかし俺に残された時間は僅かだ


俺は横にいるジギールを肘で合図を送る


ジギールは僅かに顔をこちらに向け、声は出さないがその口元は一言、「無理です」と動いていた


だよな、無理だよな、、こうして俺の死刑執行が刻一刻と近付くなか、空気の読めない奴から声が掛かる



「何をしておる? 早急に城へい、、」と途中でリーリエの言葉が止まる


俺は横に来たリーリエに目線をやり、必死に一言を絞り出した


「今、借りを返せ」


リーリエはビクンと一つ跳ねると


「わ、わ、我は年を取りすぎて、さ、最近、耳が遠くなっひゃ」と消え入る様な返しをした後、下を向き微動だにしない


この野郎! 何が借りは必ず返そうだ!! とその時、透き通る様な声が門から届く



『レオン様? 早く此方へ』



その言葉に鉛の様に重くなった足を動かし、ソフィアの元へ行く、絞首台に登る心情とはこう言うものなのか、、


ソフィアの元へ着くと、城門の影にシアがプルプル震えているのが目に入る



『レオン様、闘技場にて敵の自爆を受けたと伺いましたが?』


「ああ、魔法を受けたと思っていたが、自爆だった様だ、しかし無傷だしんぱ」


俺が言い終わる前に、ソフィアに抱き付かれる


『知らせを聞き、どれ程心配したか、、』


「ああ、心配をかけたな、すまなかった」


とソフィアの頭を撫でようとするが、ロックされ腕が上がらない



『お気をつけ下さいと言いましたよね?』


ミシッミシッと俺の身体から鳴ってはいけない音がする


「す、すまなかった、注意していたつもりが油断し、」


メキメキッ、と音がし締め上げる力が増す



『迷宮の件も踏まえ、十分警戒するよう言いましたよね?』


いたいたいいたい、トロール神なんて比じゃない激痛が走る


「ほ、本当にすまなかった、い、以後無いようにする」


何とかそう絞り出すと、ソフィアは満面の笑顔を俺に返し



『御反省下さい』





との一言と「ボキンッ、ゴキッ、ゴキン」と鈍い音が鳴り響いた




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