47、リーシアの森へ
城の応接室にて話し合いをすることになった
今ここにいる者は、俺、ソフィア、シア、リーリエ、ジギール、数名の騎士だ
例の二人組は別室にいる
「さて、俺に自爆を仕掛けて来た者についてだが」
『その前によろしいですか?』
な、なんだ? まだ足りないのか? 回復薬を無駄に3つ消費したんだが、、
「なんだ?」
『私達の方にも、恐らく自爆を仕掛けて来た者の仲間と思われる者の襲撃を受けました』
「随分曖昧だが?」
『シアが近付く前に察知し、私が即座に消しましたので、相手の容姿も類似していたとは思いますが、自爆なども受けること無く』
ふふん、と自慢気なシアだが
「シア、敵について何かあるか?」
「ママをすごいきらってたの、でもひとりなのに、いくつもなの、きらい、たすけて、おなかへったなの!」
うん、相変わらず意味が分からん
「どういうことだソフィア?」
『恐らく、私に対して強烈な殺意を持っていたと、敵は一人にも関わらず幾つもの思考を持っていたらしいですが詳細は不明です』
「敵の特殊性は置いておくとして、俺とソフィアを狙ったという事は敵は絞れるな」
俺は指を一つ立てて
「俺達には個人的な因縁のある敵がいる、しかしそれは無いだろう」
それを聞きジギールが口を開く
「何故そう言い切れるのでしょう?」
「敵が弱すぎる、俺達の個人的な敵は、この地にいるどんな者よりも、俺達の強さを知っている」
俺は指を二つ立てて
「次に帝国、あれだけの被害を与えたんだ、さぞや憎んでいるだろう」
「あの時の帝国軍の生き残りから得た情報からですかな?」
「あの場から逃げれる者などいない、しかし遠方に潜み情報を得た線はあるな、しかし日も浅い中、帝国軍が簡単にジギール領に潜り込めるのかと言う疑問は有る」
俺は指を三つ立てて
「次に、ランギールの送った刺客、もしくはジギールの用意した刺客、あるいは両者かも知れんが」
俺の言葉に室内の空気が凍り付くが、直ぐにジギールは立ち上がり
「有り得ません! 私は勿論、ランギールも同様です!」
「そう興奮するな、可能性の話をしただけだ、これもまず無いだろう」
俺は指を四つ立てて
「最後は、王都にいた愚か者が送った刺客、あの者も俺達をさぞ恨んでいるだろう、しかも同じ国内だしな」
ジギールは苦々しい表情を浮かべる
「可能性は有りますな、、しかし大規模な自爆を使用する者達など聞いた事もありません、、」
「その辺りも踏まえて、ランギールに一度戻る必要はあるか、さてあの二人組だな、襲撃の件とは無関係の様だが、敵対者に雇われた線も無いとは言えんな」
ここまで黙って聞いていたリーリエが直ぐに口を開く
「その可能性は無い」
確かに可能性は低そうではあるが、俺はソフィアとシアに目配せを送る
「あの二人の話を聞く、ジギール、此処に呼んでくれ」
程なくして獣人の二人が部屋に通される
「では話を聞かせて貰おうか」
シアに目線をやると、首を横に振り笑顔だ、ソフィアもそれを確認し一つ頷く
無関係と言うことか
話を纏めると、女は森の民の族長で名はギー、男はお目付け役のガース、闘技場に来た目的は所謂出稼ぎ
その元凶となった背に黒い翼を持つ男、特徴を聞くに、俺達が始末した偽管理者とは別口の様だ
黒い翼の男は、それ以後一切現れていない事から神木が目的だったのだろう
偽管理者の他にも、戦神が産み出した使徒がいる事以外、有益な情報は得られなかった
「話は分かった、お前達の里を襲った男は、俺達の個人的な敵だというだけだ、情報を得て居場所が判れば、始末しに行くつもりだったがな」
リーリエの仲介を挟みながら話し合いを終える
「では、お開きだな、互いの誤解も解けた」
そこまで目をつぶり、大人しくしていたシアが目を開くと、僅かにその瞳が緑色に光っていた
「パパ、じゅうじんのもりにいきたいの、よくないことがおきるの」
シアが思考を読む時に、目が光る等は無い、明確な魔法かスキルの発動か?
予言染みた言い方だが、これがスキルにあった星読みなのか
仕掛けて来た者達も気になるが、戦神絡みかも知れんか、とるに足らん刺客よりも優先度は高いな
「分かったシア、その森へ行こう」
そのやり取りを聞き
「どういうことだ? 我等の森に来ると?」
と警戒感を露にしてギーが問うてくる
「このシアには特殊なスキルが有る、占いの類いだ」
「我等の里に危機が迫っているというのか?」
「どれ程の物かは知らんが、無視出来ん程には信憑性は有りそうなんでな」
騒ぎ立てること無く、静かに、そして強く森へ行きたいという意志がシアから感じた、十中八九何かあるのだろう
その後の話し合いで、ギー達を案内役として、俺達三人にリーリエが、森の民の里に行くことになった
部屋を出て、早速向かおうとした中で、ジギールから呼び止められる
「レオン様、手間は取らせません、少し宜しいでしょうか?」
「なんだ?」
ジギールは周りに目線を送る、俺とサシで話したい事があるのか
俺はソフィアに目配せを送る、俺とジギールを残し、皆部屋を出る
「わざわざサシで何だ?」
「もし襲撃の件がドラギールでしたら、この国の名称が変わる事になる可能性も有ります」
「王国の頭文字が一つ消えるか?」
俺の言葉を受け、ジギールは目を見開き頷く
「俺達に始末させたいということか?」
「いいえ、内戦にお力添え頂きたいとは申しません、ただ内戦の中、他国からの侵攻を受けた際に、御力をお借り出来ればと」
そうジギールは言い深く頭を下げた
「いいだろう、内戦が起きた際、他国の侵攻に対処出来ぬ様ならば力を貸してやる、担ぐ御輿はあれで良いのか?」
「はい、適任であると思っております」
「あいつは一気に老け込みそうだな、お前が婿の手配をしてやればどうだ?」
「英雄の宿命かと、歴史に名を残す事になる者の婿となると、心当たりは御座いませんな」
「悪党だな、さぞ長生きするだろうよ」
こうしてジギールとの話しも終わり、俺達は直ぐに森を目指した
獣人とは夜目がきくのか、昼夜問わず向かえるとのことで、軽い休憩を取りながら森を目指した
進むこと5日、ドーピングで睡魔と疲労を消させつつ強行した事で、翌日には森に到着する所まで来れた
その日は夜営をし翌日に備え、翌朝森に向かう
昼過ぎには森の入り口に到着した、ランギールにある死の森に比べると、枯れ木が目立ち、物悲しい雰囲気だ
死の森と比べ、広さは十分の一程度、生息する魔物も弱い個体が多いらしい
ギー達の案内で森を進むこと2時間たったころだろうか、地にうつ伏せで倒れる二人の人影が目に入る
警戒しながら進み近付くと、ギーがその二人に向け急ぎ駆け寄る
その二人までもう少しの所で、ギーが後方に吹き飛ばされた
一向もギー元まで行き、確認すると、倒れている二人は森の民、そして弾かれたのは
「結界じゃ、しかもこれ程の結界など見たことが無い、こんなものを張れば通常、魔法士の命は無いであろう」
ギーが必死に見えない壁を殴り付けているが、弾かれ何度も転がっている
「ソフィア、やれるか?」
ソフィアは頷き、見えない壁の前に立つ、手のひらを壁に向けたことから神槍での破壊か、と思って見ていると
手のひらを当てた腕を引き、掌底を壁に打ち付けた
「バリーーーーーン」とガラスを叩き割る様な音が鳴り響く、その後ソフィアは空いたであろう穴に手を差し込むと、見えぬ壁を掴んだまま、強引に引き剥がす
「メキメキ、ギシギシ、バキーーン」と複数のきしみ砕ける音がする
ソフィアは壁のあった場所を越えて、倒れている二人に近付いて行くと、その横からギーが駆け抜けて行く
俺達も後に続き、倒れる者を起こすギーの元に行くと、ギーはその男を抱き上げ固まっている
確認すると、獣人の男が目を見開き、口を大きく開け、苦悶の表情で事切れていた
何故事切れていたか直ぐに分かったか、簡単だ
男の胸には抉り取った様な穴があり、そこにあるべき心臓が無かった




