26、パワーレベリング
訓練も終わり、騎士達が訓練所の片付けを行っている中、伯爵と談笑をしていると、ソフィアが騎士の方を向き固まっている
何事かと、そちらに目を向けると、女の使用人、いわゆるメイド服を着た女に、数人の騎士達が絡んでいるように見える、耳を傾けてみると
「おい!ちんたらせずに、早くかたせ!」
「はい!今直ぐに!」と返事は良いが、そのメイドは致命的に、不器用なのか知らんが、一向に進まない、
騎士達はその様子に堪えかねたのか、怒号が飛び交う
「家柄だけで、ランギール様にお世話になっているというのに、良くそれで騎士を目指そうと思ったな!」
「お前の為だ、才無き者には向かぬのが騎士だ、荷物をまとめて、家に帰ったらどうだ?」
「いえ!私はきっと努力を続け、騎士になってみます!」
という様なやり取りだ、すると伯爵が横から
「あの者は、私と親交のある貴族の長女なのだ、向こうのたっての希望で預かったのだが、どうにも才能の欠片もなくてな」
「貴族の長女なら普通は、嫁に行くとかじゃないのか?」
「あの者を見て何ともおもわぬか?」
「なにがだ?普通の娘だろ?」と良く見ると、ああ
「身長が高いということか?」
「そうだ、普通、王都に居を構える貴族は、社交界は重要な物となる、その伴侶として連れ歩くのが、あの身長ではな」
「くだらんな」
「本人も解っているのだろう、才能は無く、戦いなど無理と言うことを、それでも居場所が何処にもないのだ」
「私も不憫に思い何とかしようと、稽古も付けてやってるのだが、それを見る騎士達は面白くないのだろう、しかし私が割って入れば、事態を助長しかねんからな」
メキメキメキ、ミシミシっと嫌な音が鳴る、ソフィアの腕は軽く震え、拳を強く握り込んでいる、土で固めてある地面には、亀裂が入っていた
自分と重なったのか、努力を重ねるも、才能は無く弱い、強者には無理だとレッテルを貼られるか
あの管理者は、人形であり、装備品と切り捨てたが、力無き過去の自分に重ねて憤る姿は、まさに人のそれだ
彼女は、感情を余り外には出さないが、この地に来て、見、聞き、考えている
ソフィアの成長を促すためと、もう一つ彼女に、枷を嵌めておくか
「どうした?ソフィア」
『いえ、何でもありません』
「過去の自分に重なるか?」
『いえ、、はい、かさなります』
「救ってやりたいか?」
黙り込むソフィアに
「俺は救いたく無いが、ソフィアは救いたいのか?」
『いえ、、私は、、』
「ソフィア、お前はどうしたいんだい?」
『私は、、出来ることなら救ってやりたいです』
「そうか、ならば救ってやろう」
ソフィアは、うつむき加減な頭を、ガバッと持ち上げ
『レオン様!?宜しいのですか?』
「俺には無価値でも、ソフィアお前に必要な物なら、俺が掬い上げてやろう、連れてこいソフィア」
「レオン殿、良いのか?私から見ても、魔法も使えず、剣の才も無い、とても戦えるようになるとは、、」
そう申し訳なさそうに聞く伯爵に、俺はこう言う
「騎士達から見て、あの女は弱く、使い物にならないと言うことだろう?俺達から見れば、騎士達も、あの女も変わらんよ、等しく弱い」
「それになランギール、俺の国には、勝てぬ壁にぶち当たった時、打破する格言がある」
「ほう、是非ご教授願おう」
「なに、簡単な事だよ」
「レベルを上げて物理で殴ればいい」
伯爵は口をパクパクさせたあと、小さな声で、いや、そのレベルを上げることがまず、と呟いていると、ソフィアが騎士達を払いのけ、メイドの女を連れてくる
「女、名は?」
「わ、私は、マリー=ブリ、、」と言い終わる前に、手で遮る
「姓など要らん、ではマリー、この俺がお前に力をくれてやろう」
何を言っているのか解らないのか、ポケーとしている女に
「すぐに準備して町の正門まで来い、時間は有限だ、行け」
やっと理解したのか、頭を深く下げた後、女はドタドタと訓練所を後にする
「と言うわけで、暫く預かるが良いな?」
「あ、ああ、宜しく頼む、しかし仮にも預かっている身だ、危険なことは、、」
「心配するな、一週間は留守にすると思ってくれ、それと直ぐに一つ用意してほしい物がある」
こうして準備をし、町の正門に向かうと、フルプレートに剣に盾を持つデカイ置物が目に入る
あの女か、、近くに寄ると、ガチャガチャとやかましい音を立てて礼をするマリーに
「マリー直ぐにその装備を、ストレージにしまえ」
「ひゃいっ!」と慌てて装備をストレージに仕舞ったマリーを引き連れて、死の森の浅い位置まで移動する
「ソフィア、周囲に気配は?」
『御座いません』
「よし、ではマリーを昏倒させろ」
「へっ!?」と驚くマリーの背後に、ソフィアは素早く回ると、その首に腕を回して昏倒させる
「では始めるか、周囲には警戒しておけ」
俺はストレージから、一つの魔石を取り出す
『レオン様、それは一体?』
「ソフィアは知らんのか、まぁ滅多に使わん貴重品だしな、これはポイントメモリーの魔石だ」
「使い捨てだが、これにより記録した場所にリターンを使えるようになる、当然一度そのポイントに飛ぶと記録は消えるがな」
『貴重なアイテムを宜しいのですか?』
「時間は惜しい、それにソフィアが、自ら初めて俺に頼んだ事だ、アイテムなど惜しくはないさ」
俺が魔石を地に落とすと、魔方陣が浮かび、そして消える
「よし、マリーを担ぎ、近くによれ」近くに来るのを待ち、ストレージから呪符を取りだし
「リターン・ホーム」と唱えると視界は歪み、戻るとそこは始まりの神殿入り口だった、ソフィアにマリーを起こさせ、状況が飲み込めないマリーをしりめに
「ソフィア、この指輪を付けろ、今付けている耐性の方を外してな、それとマリーお前もこの指輪を付けておけ、効果はソフィアが後で確認しろ」
二人に指輪を付けさせ、次に伯爵に用意させた只の鉄の棒を取り出す、加工していない巨大なメイスと言ったところだ
「まず最初に、ここで見聞きしたことを他者に伝えれば、マリー貴様を殺す、いいな?」
ブンブンと縦に頭を必死に振るマリー、その容姿は、ショートの赤茶色の髪にスタイルは、グラマラスと言うか、色々でかすぎる、顔立ちは整っているが、身長185と言ったところだ
「マリー、お前の武器だ」と、その鉄の塊を渡し
「ソフィア、何でも良い一匹連れてこい」
返事をし森に消えるソフィアを待つこと10分程だろうか
「ゴガォグゥゥ」と悲鳴を挙げた体長3メートル程の黒い狼の首を押さえ付け、肩に担ぎ上げたソフィアが、森から戻ってくる
「マリー、貴様のステータスをみせろ」
連れてきた狼の魔物に脅えながらステータスを見せてくる
マリー レベル11 HP200 MP0 他ステータスは、高いものは、力80 絶望的に低いのが、素早さ3 器用さ2 他も軒並み低かった、スキルは 腕力強化1 頑強1
「ソフィア、地に押さえ付けて身動きを取れないようにしておけ」
「さあマリー、殺せ」
脅え震えるマリーに、再三催促をすると、覚悟を決めたのか棒を持ち上げ狼に降りおろす
しかし叩けど叩けど、狼は死なない
「ソフィア、少し弱らせてやれ」
そういうとソフィアは、左の拳を狼の腹に叩き込む、メキョメキ、ボゴンと鈍い音と共に、狼は悲鳴を挙げ、その口から大量の血を吐き出す
「さぁマリー、続きだ、やれ」
マリーは泣き叫びながら、ひたすらに棒を降り降ろした、それから1時間がたったころ狼の目から光が消え飛散する
マリーのステータスを確認すると、レベル20 HP300 力100 スキルは、それぞれ2に上がっていた
「よしソフィア、ここから俺だけ別行動をする、試したいことがあるんでな、一週間後に神台前だ」
『レオン様!お近くにいないと護衛が!』
「ソフィアよく聞け、お前は俺の命令を聞き、常に護衛だけをする人形では無い、お前自身で考え、悩み、最善をつくせ」
「俺は常に、お前が壁にぶつかった時に、与え、補助し、必ずお前を勝たせてきたな?」
『はい、全てはレオン様に頂いた物です、勝利もレオン様の物です』
「それは違う、俺は常にお膳立てをし、最後にはソフィア、お前が己の力で勝利を掴んで来たのだ」
「今回も俺は、お前の望む形にお膳立ては整えた、後はお前の力で勝利を掴めいいな?」
『畏まりました、必ずや御期待に答えます』
「ああ、期待しているよソフィア」
そして7日分の食料、薬品などをソフィアのストレージに写し、俺は一人、森の中を進んだ




