第1話 パンツ一丁だけど俺は変態じゃない!
体が寒い……
まるで何も着ていないかのような感覚だった。
そして動こうにも体が怠すぎて言うことを聞いてくれなかった。
「ままぁーあれ何ー?」
「……早く歩きなさい!」
「おいおい、何だあいつ?」
「さぁ?そもそもあいついつの間にいたんだ?」
……いろんな声が聞こえる。
蔑む声や笑い声など様々な声が鮮明に聞こえる。
それに何処かに不審者がいるのか奥様方が怖がっている声も聞こえる。
一体何事なんだ……?
俺は怠い体を無理やり動かし、周囲を見た。
そして俺はその光景に驚きを隠せなかった。
「ど、どこなんだここは!」
明らかに見たことも無い街だった。
言うなれば近代ヨーロッパの町並みだった。
石造りの家、そしてその時代の格好をした人々。
ここは何処なのか、なぜここにいるのか。
何も思い出せない。
色々と考えているとあることに気づいた。
「俺……パンツ一丁じゃね?」
その瞬間俺はそそくさと大事な部分を隠した。
「何見てるんだ!この変態共!」
「いやお前じゃい!!」
周囲から一斉にツッコミが飛んだ。
すると警官らしき人物が声をかけてきた。
「君!そこで何をしてるんだ!」
「いや違うんだ!俺は何もやってない!」
そう弁明すると俺を見つめたあと呆れたように言った。
「じゃあなんでそんな格好なんだ?」
……パンツ一丁で町中にいる。
何も弁明できねぇ?!
俺は必死に言い訳を考え、一つの答えにたどり着いた。
「これはファッションです!」
こだまが街中に響くほどの声量で答えた。
すると警官は可哀想な目でこちらを見ていた。
「わかったわかった。あとは警察署で聞くからこっちに来なさい」
そう言いながら俺を連れて行こうとする警官。
「待ってくれ!俺は変態じゃないんだ!いや確かにパンツ一丁だけども!」
警官は聞く耳も持たず、警官が持ってきたであろう薄い布を俺の体に巻き付けた。
「人目が恥ずかしいならこれでもつけとけ」
「ここがどこかも分からないまま、俺の人生は終わるのか――」
と絶望していた時、何処からか車のエンジン音が聞こえた。
そしてその音を出していた車が俺達の近くに止まると警官達の表情は一気に硬くなった。
何が起きているかわからないままその状況を見ていると、
黒い車から運転手が降りてきて後ろの後部ドアを開けた。
その瞬間警察官達は俺を掴んでいた手を離し、ビシッと敬礼をした。
そして周りにいた住民達は一気に緊張が走る雰囲気になった。
「なんだこの騒ぎは?」
そう言いながら出てきたのは軍服を着た一人の男だった。
何処かドイツ帝国の軍服と似ており、高級将校と思われる軍服でもあった。
さっきまでの警官達は硬い表情のままその男に報告をした。
「大将殿!急に正体不明の男が現れたという通報を受けまして出動した所存でございます!」
報告を聞いた男はこちらを睨む。
「確かに見かけない顔だな。それに……なんでパンツ一丁なんだお前……」
「いや俺は本当に記憶が無いんだ!それに俺が住んでいた場所とは全く違うんだ!」
そう言うと警官達は俺に向かって怒鳴った。
「エトムント大将に何という言葉遣いだ!慎め!」
するとエトムントと言われる男が警官を諭して、俺に近寄る。
「じゃあお前さんは何処から来たんだ?」
「俺は日本の東京に住んでるんだ!」
自分の住んでいた場所を言うと周りの人々はコソコソと話し始めた。
「おいおい、日本って場所聞いたことあるか?」
「いや知らねぇな」
「そもそも東京ってのもなんだ?地名か?」
「しっかし聞いたこともねえぞ、そんな場所」
俺はその反応を見て違和感を感じた。
いくら地理や世界地図が不得意でも誰か一人ぐらいは知っているはずだ。
なのになぜこの反応なんだ?
そう考えているとエトムントはぼそっと話した。
「──そして彼等は軍を率いて世界を導いた……まさかな?」
そして俺を見つめ、口を開いた。
「君、少し付いてきてくれるかな?」
隣にいた警官は驚いた。
「た……大将殿!こいつはただの変態では?」
誰が変態じゃこの野郎。
「ああ、変態だ。ただ少し気になったことがあってな」
いやだから誰が変態じゃ!
「あとはこっちで調べるから君たちはもう下がっていいぞ」
そしてエトムントはこちらに振り返り、言った。
「付いてきてくれるよな?」
そういうエトムントの後ろには護衛の兵士が怖い目をしながらこちらを見ていた。
「は……はい!」
こうして俺はエトムントが乗っていた車に乗車したのであった。
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