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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
拾章 永夜異変の巻+一編
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第八話 異変の後始末

 気付くと、真っ白な空間に立っていた。だが焔と出会った精神世界とはまた違う。俺は動けないし、何やら頭がボーッとしてまともに思考が働かない。


 ふと目の前に朧気な意識を向けると、二人の子供へと中年の男が何かを話している⋯⋯一体何を話しているんだ? 良く聞こえない。


 だが、何故だろうか。あの者達を、俺はどこかで見た気がする。どこで見たのだろうか⋯⋯思い出せない。


 すると、徐々に瞼が重くなっていき、俺はそれに抗えずスウッと意識を落としていった。



─────



雪「⋯⋯ぐっ⋯⋯」


永琳「⋯⋯起きたのね。具合はどう、雪」


 目を覚まし、ガンガンと痛む頭を押さえながら起き上がる。辺りを見渡すと、どうやら永遠亭の病室の様だ。隣には、カルテを持った永琳が座っている。


雪「俺、は⋯⋯」


 そうだ、あの兎耳の少女と戦って⋯⋯それで精神攻撃を受けて気絶したんだったか⋯⋯あれからどれくらいの時間が経っているのだろう。


永琳「貴方が気絶して一時間も経ってないわよ。驚いたわ、鈴仙が貴方を引き摺りながら異変で疲れた所に連れてきたんだもの」


 鈴仙⋯⋯あの少女の事か。それにしても、永琳の話からすると俺が気絶してる間に異変は解決された様だな。


雪「⋯⋯やはり今回の異変は、お前達が起こしたものか。原因は⋯⋯」


永琳「⋯⋯月、よ。鈴仙から教えてもらったの。満月の晩に、使者がやって来るって。大方、科学力の発展に詰まり始めたから私を取り戻そうとしてるのと⋯⋯不老不死の術。それが欲しいんでしょうね」


雪「⋯⋯やはりか」


 満月を偽物に変える、という所で何となくは分かっていた。それに、月の上層部の老害共の事だ。自分達の都合のためならば人の命を道具とする事も厭わない連中だからな。永琳を奴隷の様に働かせ、輝夜を不老不死の為に実験材料にでもする魂胆だったのだろう。


雪「⋯⋯幻想郷には結界が張ってある。外から来る者は『外界で幻想となったもの』だ。月の者が来られる筈はないんだがな」


永琳「不安があったのよ。だって⋯⋯昔助けてくれたとは言え、あの胡散臭い妖怪の結界じゃない」


雪「ハハッ、まあ分からんでもない」


 永琳の言葉に、軽く笑いながら気怠い体をベッドに倒した。


雪「⋯⋯なあ、永琳」


永琳「⋯⋯言いたい事は分かるわ」


雪「なら敢えて言わせてもらいたい⋯⋯せめて、俺に一言くらい相談してくれても良かったんじゃないか?」


 そう、一言だけでも⋯⋯何か伝えてくれれば、何か手は打てたんだ⋯⋯俺じゃ無理でも、伝手を使えばなんとかなったと思う。


雪「俺じゃ、不安か?」


永琳「違うわよ! ただ、私は⋯⋯貴方に頼り切りなのが、嫌だっただけ。また貴方に迷惑掛けるのが嫌だったの⋯⋯」


雪「⋯⋯俺は今まで、迷惑だなんて思ってはないさ。俺が生まれて、初めての親友なんだからな」


 そこまで言うと、俺はもう一度体を起こしてベッドから降りる。まだ万全とは行かないし頭痛が酷いが⋯⋯まあ、動かない訳じゃない。


永琳「ちょ、雪。どこに行くつもり?」


雪「今回の異変の後始末に、な」


 俺は近くに掛けてあった羽織を取り、そのまま紫の屋敷へと向かった。



─────



 紫の屋敷の庭⋯⋯そこにある池に来ると、既に紫が準備を整えて待っていた。池の水面は、通常は満月の夜空を映し出している筈が、今は巨大なスキマと化していた。


紫「待ってたわよ。貴方の事だし、どうせ月に乗り込むんだと思ってたわ」


 そう、今回の異変の後始末⋯⋯それは月に乗り込み、あの老害共に忠告をする事だ。二度とアイツらに関わるな、とな。ついでに少しくらい痛め付けても、まあバチは当たらんだろう。


雪「俺も、それを察知して既に準備を整えてくれていると思っていた。もう入っても大丈夫なのか?」


紫「ええ。でも夜明けまでには帰ってきて。月との繋がりが一度切れてしまうから」


雪「ああ、分かった。今回の異変の宴会でもして待ってるが良いさ」


 俺はそう言うと、巨大なスキマの中に身を投じた。



~第三視点~



 ここは月の都。そこにある防衛軍本部の一室にて、上層部に位置する者達が不穏な空気を流しながら会議をしていた。


重役1「あの二人はまだ見つからんのか!!」


重役2「今、我ら一派の観測員が総力を挙げて探しておる。もう暫しの辛抱だ」


重役3「ああ。我々の科学力なら結界の一つや二つを張ったとしても簡単に見つけられる。既に時間の問題だ」


重役4「あの二人さえ見つかれば我らが月の科学力は更に向上し、不老不死の術も手に入る。そうすればあの忌々しい綿月の娘共に一泡─────」


 一人がそこまで言った所で突然轟音が鳴り響き会議室の扉が吹き飛んだ。そして扉の前に立っていたのは、服に着いた埃を払っている雪だった。


雪「久しいな、老害共。月に行ってもやる事は全部同じか」


重役1「な、なななっ⋯⋯誰だ貴様は! どうやってここに入った! ここまで来るには巡回してる兵士を掻い潜り、厳重なロックが掛かっている扉を⋯⋯」


雪「ああ⋯⋯そんな対人用に作られているもの、人外の俺に通用するわけないだろう? 兵士も、あんな若造じゃなくベテランを配置するんだったな。もっとも⋯⋯万の妖怪を相手にした俺に、数人じゃあどうこう出来るわけないだろうがな」


 その言葉を聞いた重役達は一瞬何の事か分からなかったが、次の瞬間には顔を青ざめ体をガタガタと震わす。


重役3「きっ、ききききっ、きさ、貴様っ、貴様はっ⋯⋯!」


雪「大体数億年振りか? フッ、以前は十数人はいたお前達が今やたったの四人か。他のやつはどうした? まさか死んだわけじゃあるまい」


重役3「貴様はあの時⋯⋯地球で、死んだ筈だ!」


雪「ん? ああ、残念だったな。この通りピンピンしてるさ。まあ、あれで生きているというのは想像し難いものだというのは分かるが⋯⋯っと、俺はそんな話をしに来たんじゃないんだ」


 雪は重役に強い殺気を飛ばすと同時に、周囲に大量の氷塊を創り出す。


雪「⋯⋯今回は警告に来た。二度とアイツらに関わるな。お前達が自分の意思で捨てたあの地球に二度と手を出すな。二度は言わん。次何かあったときには─────」


 ─────貴様らを殺す事も厭わない。


 そう言うと同時に、その大量の氷塊を重役達へと飛ばす。轟音と共に重役達は氷塊に押し潰され、死にはしなかったものの、その衝撃で気を失った。


 それと同時に、その強い衝撃から大きな警報が鳴り、天井に取り付けられているランプが周囲を赤く照らす。


雪「おっと、急いでここから離れなければな。氷は⋯⋯消さなくても良いか」


 どうせアイツらが気付くだろう。そう考えた雪は他の者に見つからないように、幻術で姿を眩ました。

 はいどーも、最近P4Gをやり直している作者の蛸夜鬼です。今は戦慄のガチムチ皇帝を助けた所ですね。


 さて、今回は如何でしたでしょうか? ちなみに次回は恒例の宴会編となります。雪は途中参加になりますかね。


 そろそろ永夜抄編は終わり、次は儚月抄編となります。また雪は月に行くのか⋯⋯随分と頻繁に行くなぁ。


 さて、それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!

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