第三話 鬼は酒と共に
さて、再び宴会の日がやって来た。今日こそこの異変も終われば良いが、まあ霊夢次第と言った所か。
魔理沙「おい雪聞いてくれよ~! 一昨日、霊夢が私を異変の主犯者とか言って弾幕ごっこ仕掛けてきたんだぜ? 酷いと思わないか!?」
レミリア「雪、少し話を聞いてくれる? 霊夢ったらこの間、前科があるって言って私の館に押し掛けてきたのよ? こんな異変、私が起こすわけ無いのに」
雪「悪いが俺は聖徳太子じゃないんでな。二人一辺に話されても困る」
どうやら霊夢は怪しいと思った者を全員倒していたらしい。魔理沙と紅魔組の他には、アリスという魔法使いと幽々子、紫だったか。さっきから魔理沙とレミリアの二人に愚痴を聞かされて困る。
雪「それで、霊夢は誰が主犯者なのか分かったのか」
二人の話を聞き流しながら、何か準備をしている霊夢に話し掛ける。どうやら⋯⋯結界を張ってるみたいだな。それも捕縛に特化しているものだ。
霊夢「全く。アンタのヒントは意味分からないし、紫も主犯者知ってたみたいだけど「雪がヒント出したなら私は教えなくて大丈夫ね♪」とか言ってどっか行ったんだもの」
ん? 何だ、紫も萃香の事を知ってるのか。いつ知り合ったんだ? まあ、百年ほど外国にいたからその時にでも会ったんだろうか⋯⋯二人が酒を飲み合って、俺の愚痴か何かを話してるのが頭に浮かんだのは何故だろうか。
霊夢「だけど、何となく主犯者はこの神社にいる気がしてね」
雪「どうする気だ?」
霊夢「⋯⋯こうするの、よっ!」
霊夢が結界を発動させると、それが神社中央に集束した。すると境内に霧となって隠れていた萃香が姿を現した。
萃香「うわわっ! 何だ何だ!?」
霊夢「⋯⋯この小っさいのが主犯者?」
萃香「むっ! 誰が小さいって!?」
魔理沙「どうしたどうした?」
何事かと、ゾロゾロと萃香の周りに宴会の参加者が集まる。
萃香「あ~らら⋯⋯雪、もしかしてこれ、バレてる?」
雪「ああ。完全にな」
霊夢「何、知り合い?」
雪「昔出会った友人だ。紹介しよう、鬼の萃香だ。今回の異変の主犯者でもある」
萃香「やあやあ、伊吹 萃香だよ。今回は迷惑かけたみたいだね」
萃香はそう言いながらも悪びれなく頭を掻いた。それを見た者の反応は様々だ。呆れる者、クスクスと笑う者、何が起こってるのか分かっていない者。そして⋯⋯
霊夢「ほんっと、良い迷惑よ! 誰が宴会終わるたびに片付けやってると思ってんの!?」
主に霊夢だが、怒る者といった感じにな。すると霊夢は萃香を捕縛していた結界を解いた。
霊夢「まあ良いわ。いや、良くないけど⋯⋯アンタを倒せば異変は終わる。面倒な片付けもしなくて済む。さっさとやるわよ」
萃香「ハハッ、面白い事を言うね。私を倒すって? 血の気が多くて良いねぇ。嫌いじゃないよ!」
霊夢と萃香は空中に浮くと、何の合図も無しに弾幕ごっこを始めた。宴会の参加者は、それを肴に酒を飲み始める。
弾幕ごっこをしている萃香の顔は、子供の様に無邪気で、そして楽しそうだった。
─────
萃香「ふい~。疲れた~⋯⋯」
雪「お疲れ様と言った所か、萃香」
参加者も各々の家に帰り、静まり返った博麗神社。宴会の片付けを手伝わされた(というか押し付けられた)萃香は同じく片付けを終えた俺の隣へやって来る。ちなみに霊夢は既に寝ている。
萃香「どうだい、一杯」
雪「まだ飲むのか。まあ良いが⋯⋯」
俺達は鳥居の上に座ると、萃香から酒の入った杯を受け取りグイと飲み干す。
雪「⋯⋯それで、宴会は楽しかったか?」
萃香「ん、まあね。最近は出来なかったし」
雪「そうか⋯⋯目的は果たせたのか?」
萃香「⋯⋯いや、全くだね」
萃香は杯の酒に写った月を見詰める。
萃香「地底に篭もってる仲間が、この宴会に気付いて地上に帰ってきてくれれば良かったんだけどねぇ。まあ元々期待してなかったし、しょうが無いさ。地底も良いところだからね」
雪「そう、か」
萃香「ま、幻想郷は嫌いじゃないし、いつか仲間も地上に出れる日も来るさ。気長に待つよ」
そう言った萃香は杯に入っている酒を飲み干すとフワリと浮かぶ。
萃香「さーて、私も帰るかな。じゃあまた、雪。迷惑掛けて悪かったね」
雪「ああ⋯⋯もしまた、酒を飲み交わしたくなったらいつでも家に来ると良い。幾らでも付き合おう」
俺の言葉に、萃香はクスリと笑って去って行く。さて、俺も帰るとしよう。ここ最近は飲み過ぎたからな。明日は肝臓に優しい食べ物でも食べるとしようか。そんな事を考えながら、俺は自分の家へと向かう。
⋯⋯こうして、萃香が起こした小さな異変は幕を閉じた。
はいどーも、作者の蛸夜鬼です。萃夢想編終わりました! 次回から永夜章編となります!
最近、Twitterで投稿報告するとイイねやリツイートが多くて嬉しいです。今後もこの調子で頑張ります!
それでは今回はこの辺で、また今度、お会いしましょう!