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東方 白狐伝  作者: 蛸夜鬼
玖章 春雪異変の巻
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第九話 花見の酒宴

幽々子「あら~、現世の桜も悪くないわね」


雪「そうか? 俺は冥界の桜の方が好きだな」


霊夢「ほら、そこの半霊! さっさと酒持ってきなさいよ! アンタらのせいで大迷惑だったんだから!」


妖夢「ま、待ちなさいよ! うぅ、発端は幽々子様なのに何で私だけ⋯⋯」


雪「⋯⋯あんな風に騒がしくないからな」


幽々子「フフッ、楽しくていいじゃない」


 そんな事を、幽々子と話しながら花見を楽しむ。後ろではプリズムリバー楽団の演奏が聞こえ、彼女らの周りには主に紅魔館組が演奏を楽しんでいる。


 紅魔館組は⋯⋯まあ、咲夜が異変解決を手伝ってくれたし、折角ということで俺が招待した。どうやら宴会などが好きなのは誰も変わらんらしい。


 ふと、どんちゃん騒いでる方へと視線を向けると妖夢が目を回しながら動き回っている。よくよく考えればたった一人で仕事をしてるんだ。少し手伝おうか。


雪「ちょっと、妖夢の手伝いをしてくる」


幽々子「分かったわ。いってらっしゃ~い」


 幽々子に一言告げると妖夢の方へと向かう。すると妖夢が足を引っ掛け、持っていた食器を落としそうになっていた。


 すぐさま時間を凍らせると食器を取り、倒れそうになっている妖夢の体を支える。そうした所で丁度時間が動き出す。


妖夢「しまっ⋯⋯あ、あれ?」


雪「大丈夫か?」


妖夢「え、あ、はい⋯⋯大丈夫です」


雪「なら良い。休み無しで働いてるだろう。俺が代わりにやっておくから、少し休め」


妖夢「で、でも⋯⋯」


雪「良いから座っていろ」


 無理矢理妖夢を座らせる。氷人形を創り出して空になった食器を片付けさせたり、酒を運ばせる。ふむ、こんなもんで良いだろう。


 俺はコップに水を入れると妖夢へと渡し、隣に座った。


雪「ほら」


妖夢「あ、ありがとうございます」


 妖夢は水を飲み一息つく。俺は近くにあった酒とつまみを見つけると、つまみを食いそれを酒で流し込む。


妖夢「⋯⋯あの」


雪「ん?」


妖夢「雪さんは幽々子様のご友人で、西行妖の事を最初から知っていたと聞きました。昔、何があったんですか?」


 ふむ⋯⋯まあ、今妖忌が居ないなら話しておく必要があるか。


雪「⋯⋯場所を移そう」


妖夢「分かりました」


 そうして少し離れた場所までやって来ると、辺りに人がいない事を確認する。


雪「ここで良いだろう⋯⋯さて、何から話そうか」


妖夢「⋯⋯どういう経緯で、幽々子様と出会い、西行妖の事を知ったんですか?」


雪「ふむ⋯⋯煙草良いか?」


妖夢「構いません」


 俺は懐から一本の煙草を取り出すと火を点ける。妖夢に掛からない様に煙を吐くと、昔話を始めた。


 紫の頼み事。妖忌と幽々子との出会い。月での戦いと部下との再会。紫との喧嘩⋯⋯そして、西行妖との戦い。


 俺の話を聞いていた妖夢はコロコロと表情を変える。特に妖忌という単語が出てくると興味深そうな顔になった。


雪「─────という訳で、幽々子と出会い西行妖の事も知った訳だが⋯⋯他に何か知りたい事は?」


妖夢「あ、あの! お爺ちゃ⋯⋯師匠に会ったことがあるんですか!? それでは、どこに行ったのか知っていますか!?」


雪「妖忌の事か? そりゃあ大分昔の事だからな⋯⋯だがどこに行ったのかは知らない。俺だって旅ばかりしていたからあまり白玉楼には寄らなかったからな」


妖夢「そう、ですか⋯⋯」


 妖夢はその事を聞いてシュンと落ち込む。話を聞くと、どうやら妖忌は妖夢の祖父であり剣術の師匠で、まだまだ未熟だというのに急にどこかへ消えてしまったらしい。


雪「⋯⋯妖忌は、お前に何を教えてたんだ?」


妖夢「え? えっと⋯⋯とにかく素振りと基礎をやらされました。剣技は教えてもらってません。お師匠様は『技は見て盗め』と言っていましたから⋯⋯あ、あとは『真実は眼では見えない。耳では聞こえない。真実は斬って知るものだ』と教えられました」


 それを聞いた俺はクスリと笑う。全く、口下手な妖忌らしい教え方だ。


雪「⋯⋯俺の知っている言葉に『守破離(しゅはり)』という言葉がある」


妖夢「⋯⋯しゅはり?」


雪「ああ。『守』り、『破』り、『離』れると書く」


『守』とは、師からの教えを忠実に守り、それから外れる事の無いように、という意味だ。


『破』とは、今まで学んで身に付けた教えから一歩進んで他流の教え、技を取り入れる事を心掛け、師から教えられたものに拘らず更に心を発展させろ、という意味だ。


『離』とは、更に修行して『守』にとらわれず『破』も意識せず、新しい世界を拓き独自のものを生み出せ、という意味だ。


雪「妖夢、お前は既に『守』を行い、『破』の域に足を踏み入れている。他流の教えや技を見て盗み、『離』の為に心を発展させろ。目の前の物事に捕らわれるな。お前の求める剣の道は眼でも、耳でもなく、その剣が教えてくれる」


妖夢「⋯⋯」


雪「⋯⋯と、恐らく妖忌はこう言いたかったんじゃないか? 飽くまで推測だがな」


妖夢「⋯⋯守破離、ですか。ありがとうございます、雪さん。何だか、心のモヤモヤが取れた気がします」


雪「ああ、それなら良かった」


幽々子「二人ともー、何を話してるの~?」


 すると二人だけで話してる事に気付いたのか、幽々子が料理を食べながら駆け寄ってくる。


雪「さて、俺達も戻るか」


妖夢「そうですね」


 そう言って、妖夢は幽々子の元へ駆け寄り、俺はゆっくりとみんなの元に戻っていった。

 はいどーも、作者の蛸夜鬼です! 今回は如何でしたでしょうか?


 守破離⋯⋯良い言葉ですよね。とある漫画を読んでいて知ったのですが、私の心に残った言葉です。


 と、まあそれは置いといて⋯⋯次回から大体二、三話ですかね? そのくらいを日常パートにしようと思います。まだ出し切れてないキャラもいますからね。


 それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!


 ⋯⋯あ、今日の内に全話編集しておきました。

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