第十話 寒気の雪女
これは、春雪異変が終ってからまだ雪が溶け切っていなかった頃⋯⋯異変解決から翌日の話だ。
俺は自分の家の縁側で、雪がまだ残っている庭を眺めながら茶を飲んでいた。いつもと違うのは、今日は来客がいるということだ。
?「⋯⋯遂に冬も終わり、か」
そう呟くのは、俺の隣で冷たい茶を飲む少女⋯⋯名を『レティ・ホワイトロック』。種族は雪女で、能力は『寒気を操る程度の能力』。冬の間に何度か出会い、同じ氷系の能力持ちという共通点から気が合って友人となった。
そんな彼女だが、雪女故に冬にしか力が発揮出来ず、冬以外の季節は非常に弱ってしまう。昨日まで春雪異変で冬が続いていたから良かったものの、その異変を解決した事で彼女はあと数日でどこかに隠れ、そして次の冬まで会えなくなる。
雪「寂しくなるな」
レティ「それ、本当に思ってる?」
雪「当たり前だ」
レティは俺の返事にクスクスと笑う。何がおかしいんだろうか? 俺は変な事を言った覚えは無いんだがな⋯⋯。
雪「寂しくないと言った方が良かったか?」
レティ「別にそういう訳で笑ったんじゃないわよ。ちょっと、ね⋯⋯」
雪「⋯⋯?」
レティ「えっと⋯⋯私、雪女だから冬の間しか出てこれないでしょ? そのせいなのか分からないけど、私って周りからの印象悪いのよね」
「冬が巡ってくるのは私のせいじゃないのに⋯⋯」と続けながら、苛立った様に頬を膨らませる。感情豊かで何よりだ。
雪「それで?」
レティ「それで、まあ⋯⋯何気に初めてなのよね。そうやって寂しくなるって言われたの。それが嬉しくってね」
レティは少し恥ずかしそうに微笑むと、俺の目を見つめてくる。レティの頬は少し赤くなっていて、彼女の白い肌では良く目立つ。
レティ「⋯⋯次の冬まであと大体7ヶ月。忘れられないか心配だわ」
雪「安心しろ。記憶力には自信がある」
レティ「フフッ、本当かしら」
レティはクスリと笑うと、茶を飲み干して立ち上がる。恐らく次の冬まで隠れる場所に向かうんだろう。彼女が活動出来る期間も、精々明日までだろうからな。
雪「行くのか」
レティ「ええ。そろそろ隠れ家に戻らないと。私の事をよく思ってない輩に退治されちゃうもの」
そう言ってレティはフワリと浮かぶ。そして空へ飛んでいこうとすると、俺の方へと振り向いた。
雪「どうした?」
レティ「⋯⋯霧の湖の近くで、次の冬がやって来たら待ってるわね」
雪「迎えに来いと」
レティ「そういう事。約束してくれる?」
雪「フッ⋯⋯分かった、約束しよう」
レティ「ありがと。じゃあ⋯⋯またね、雪」
雪「ああ。また会おう、レティ」
そう返すとレティは嬉しそうに微笑み、この幻想郷のどこかにある隠れ家へと飛んでいった。
雪「⋯⋯来年の冬が、少し待ち遠しくなるな」
そんな事を呟きながら、俺は湯飲みに残っていた茶を飲み干した。
はいどーも、作者の蛸夜鬼です。今回は如何でしたか? 楽しんで頂けたでしょうか?
さて、早速次回予告となりますが、どうやら雪が風邪を引いてしまった様です。そんな日常の一部分を投稿したいと思っています。
それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!




