最終話 雪“に”異変が⋯⋯?
~第三視点~
慧音「ふぅ⋯⋯また随分と貰ってしまったな」
永夜異変から数日後。慧音は、人里の人々からいつもの礼だと随分と多くの野菜やらを貰っていた。しかし一人で消費出来る量ではなく、どうしようかと悩んでいた。
慧音「⋯⋯雪さんにお裾分けするか」
慧音は幾つかの野菜を見繕って箱に詰めると、人里近くにある雪の家へと向かった。
慧音「雪さん、慧音です」
家に着き、戸を叩き暫く待つが反応はない。何度か戸を叩いたが、出てくる様子は無かった。家にいないのかと戸に手を掛けるが、鍵は掛かっておらずすんなりと開く。
慧音「雪さん?」
少し悩んだ末、何かあったのではと思った慧音は家へと上がる。居間、台所、縁側と見て回ったが雪の姿は見えない。そして寝床の障子を開いたのだが、そこにいたのは⋯⋯
雪「むぅ⋯⋯ん? けいねか。どうしたんだ⋯⋯なんか、おおきくないか?」
慧音「な⋯⋯な⋯⋯」
⋯⋯およそ七、八歳程度の身体にまで小さくなっている、子供姿の雪が布団に潜り込んでいた。
雪「⋯⋯ん、なんでねまきがブカブカなんだ? どうなって⋯⋯」
雪は身体に合っていない寝間着を見ると有り得ないものを見たかの様な目をしながら、言葉を失った。
慧音「雪さん⋯⋯それは一体⋯⋯」
雪「⋯⋯けいね、おまえからみて、おれはどうなってる」
慧音「⋯⋯子供になってます」
雪「⋯⋯とりあえず、きがえる」
~子供白狐着替え中~
寝間着からいつもの着物へと着替えた(変わらずブカブカだが帯でズリ落ちない様に締めている)雪は、慧音を居間に通した。
雪「おちゃもってくるから、すこしまっててくれ」
慧音「あ、はい」
雪はお茶を持ちに行ったが、暫くして居間に戻ってくる。しかしその手には何もなく、慧音は首を傾げた。
慧音「どうしました?」
雪「⋯⋯った」
慧音「え?」
雪「⋯⋯きゅうすに、てがとどかなかった」
慧音「ウッ⋯⋯な、なら私が淹れてきますよ。待っててください」
雪「すまない⋯⋯」
そのシュンとした姿を見て慧音は内にある何かを刺激されたが、何とか堪えると代わりにお茶を淹れてきた。
慧音「そ、それで⋯⋯何故そんな姿に?」
雪「⋯⋯こころあたりがないといえば、うそになる」
雪が舌っ足らずながら説明すると、どうやら宴会の翌日、永琳との約束通り過去を思い出す薬を貰い、服用したそうだ。
しかしこれといった効果がなく、結局失敗だと思ったという。
雪「おそらく、そのくすりがもんだいなんじゃないか?」
慧音「⋯⋯あとで妹紅に頼んで永琳を連れてきて貰いましょう。それまでは⋯⋯そうですね、私がお世話します」
雪「いや、そこまでしてもらうのは⋯⋯」
慧音「台所に手が届かなかったのは誰ですか?」
雪「うっ⋯⋯」
慧音「それにそんな姿じゃまともに生活出来ないじゃないですか」
雪「⋯⋯わかった。おねがいする」
慧音「はい。じゃあ私は⋯⋯早いですが昼食作ってから、妹紅に伝えてきますね」
そう言って慧音は簡単な昼食を作り、妹紅の元へと向かった。この家から出るに出られない雪は、早めの昼食を摂ると仕方なく本棚から一冊の本を取って読み始める。
紫「雪が子供になったと聞いて!」
雪「うおっ!」
その直後、スキマが開いて紫と藍、橙が出てきた。そして雪の姿を見るとキラキラとした視線を彼へと向けた。
紫「やだっ、本当に子供になってるじゃない!」
雪「なにしにきた」
橙「雪しゃま、可愛いです!」
雪「なかみはせいじんだんせいだぞ。かわいいはやめろ」
藍「舌っ足らずな狐耳の子供⋯⋯イイッ!」
雪「おいゆかり。らんのめがちばしっていてこわいんだが」
三人が雪を囲み、遊ばれそうになるのを何とか逃げ出す。しかし帯で締めているとはいえ、慣れぬ格好で上手く逃げられる訳もなく、すぐに捕まってしまった。
紫「あら、どこに逃げようっていうのかしら?」
藍「ゆ、雪。一度だけ、一度だけで良いからお姉ちゃんと呼んでくれないか?」
橙「私も! お姉ちゃんって呼んで貰いたいです!」
雪「ええいはなせ! だれがよぶか!」
紫「折角だし服持ってきたわ。そんなブカブカなのじゃなくてこれ着たらどう?」
雪「おんなものじゃないか! じょそうするしゅみはないぞ!」
慧音「雪さん、今帰りました⋯⋯って、何をしてるんだ!」
ギャーギャーと騒ぐ中、雪を思って早く帰ってきたのだろうか。慧音が帰ってきて紫達を引き離し、抱き上げる。
雪「た、たすかったぞけいね」
紫「ちょっと、何どさくさに紛れて雪を抱っこしてるのよ。私にも⋯⋯」
慧音「ええい帰れ帰れ! ふざけた事を言ってるな!」
慧音は紫に強烈な頭突きを喰らわした。鈍い音と共に紫の顔が痛みで歪む。
紫「っ─────! な、何よ! ただ雪で遊びたかっただけなのに!」
雪「ふざけるな! かえれ!」
藍「ああ、雪ぃ~⋯⋯」
橙「お邪魔しました!」
紫が頭を押さえながらスキマを開き、三人は雪の家を去って行く。
慧音「全く⋯⋯大丈夫ですか、雪さん」
雪「ああ。たすかった」
慧音「それは良かった⋯⋯あ、そうそう。永琳なんですが⋯⋯」
慧音の話によると、今日永琳は少々忙しく永遠亭を離れられないと妹紅経由で伝えられたらしい。しかし薬の効果は分かってるらしく、どうやら雪が服用した薬は『過去を思い出す薬』ではなく『過去の体を取り戻す薬』なのだそうだ。
薬の効果は発症から24時間後に収まるらしく、そらまでは大人しくしておけば良い、とのことだ。
雪「なら、あしたのあさにこれはなおるのか」
慧音「そうなりますね。それまでは最初にも言いましたが、私がお世話します」
雪「ああ。たのむ」
そして今日一日、雪は慧音の世話になることになった。せめて掃除や洗濯は雪がやろうとしたのだが、箒が大きすぎたり長竿に手が届かなかったりと、結局慧音に手伝って貰った。夕飯を作るときも台を使って手伝おうとしたのだが、包丁を持つ手付きが危ないからと慧音に止められた。
雪「おれはむりょくだ⋯⋯」
慧音「しょ、しょうがありませんよ」
一日、何も手伝う事が出来なかった雪は子供故の無力さに打ち拉がれていた。その姿を見た慧音は密かに可愛く感じながら雪を慰める。
慧音「明日の朝になれば元に戻るんですから。もう夜も遅いですしお眠りになったらどうですか?」
雪「むう⋯⋯そうする。けいね、きょうはたすかった。なにかおれいがしたいんだが、なにかようぼうはあるか?」
慧音「いえいえ、そんな⋯⋯」
雪「いや、かりはつくったままにしておきたくないからな。なにかおれいをさせてくれ」
慧音「そういうことなら⋯⋯」
慧音は少し考えるが、特にこれといったものは思い付かない。どうしようかと悩んだ矢先、子供姿の雪が目に入る。
慧音「⋯⋯その、雪さんは嫌がるかもしれないんですが」
雪「なんだ」
慧音「⋯⋯お姉ちゃんって、呼んでくれますか?」
雪「おまえもか⋯⋯」
雪は呆れた様子でため息を吐く。だがキョロキョロと辺りを見回すと、慧音を見据えて
雪「いちどだけだぞ⋯⋯きょうはありがとう、けいねおねえちゃん」
慧音「はうっ⋯⋯」
少し恥ずかしそうにお姉ちゃんと慧音を呼ぶ。その姿を見て内にある何かが刺激された慧音はニヨニヨと笑みを隠せずにいる。
慧音「そ、それではまた明日、一応様子を見に来ますね!」
雪「ああ。またな、けいね」
慧音は足早に雪の家を去ると、自宅の寝室で雪の言葉を心の中で反芻して何度も悶えた。寝る前、少しだけあのままの姿でいてくれないかと思ったりもする。
⋯⋯結局、雪の身体は早朝に元に戻っていたが。
はいどーも、作者の蛸夜鬼です。本日は投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
さて、話変わって次回のお話となりますが、次は儚月抄編となります。確か東方キャラが月に行くお話でしたよね? べ、勉強しなきゃ⋯⋯。
それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!




