31話『魔力眼』
「⋯⋯あなたたち、一体何をするつもり⋯⋯」
フュールは鎖で手を繋がれた状態で、四天王の1人、ラエティティアに問うた。すると、ラエティティアはニッコリと笑いながらフュールの元へと歩み寄ってきてから口を開いた。
「何をする、か。そうだね――こうかな」
そう言ってフュールの胸元に手をかざす。
「う――くあああああ!!」
と、手をかざした瞬間、フュールが苦しそうに苦悶の表情を見せながら声をあげる。それを見たラエティティアは嬉しそうに微笑んだ。
「いい声を出すね。でももう少しで終わる。待っててね」
そう言ってラエティティアは手に力を入れる。すると、フュールの胸から光り輝く石のようなものが出てきて、ラエティティアの手に収まる。
「⋯⋯はぁ、はぁ。それは⋯⋯マギノステイン⋯⋯!」
フュールが息を荒げながらラエティティアを睨む。
「そう、これはマギノステイン。キミの力の源、マギアビーストの証拠だよ」
「⋯⋯一体、それをどうするつもり」
「そうだね。ボクたちはある目的の為に動いているんだ」
「⋯⋯ある目的?」
フュールが怪訝な顔をしながら問う。
「そう、知りたいかい? なら教えてあげよう。マギアゲールの再現さ」
「なっ⋯⋯!」
フュールの狼狽が口から漏れる。それを見たラエティティアはおかしそうに笑った。
「いい反応だね。マギアビースト、それはマギアゲールで猛威を振るっていた兵器。キミの方がマギアゲールについてはよく知っているはずだ」
「⋯でも、どうやってそんなことを。マギアゲールなど、再現できるはずはない」
フュールが言うと、ラエティティアは「いいや」と言い、続けた。
「それができるのさ。そう、マギノステインがあればね」
「⋯⋯どういうこと」
「知らないのかい? なら教えてあげるよ」
言ってラエティティアはフュールの顎をクイッと持ち上げる。
「――マギノステインは全て集めると絶大な力を誇り、願いが叶うのさ」
「くっ⋯⋯!」
フュールは力強く歯噛みした。そんな都合の良い話があるものかと思ったからだ。しかし、大分前にフュールは聞いていた。エーベルトとライムントが話していたことを。
「まぁそういうことだよ。このマギノステインは飾っておこう。綺麗だからね」
言ってフュールの後ろにある台にマギノステインを置く。すると、マギノステインはその場に浮遊した。そして、ラエティティアは手を大仰に上げ言う。
「さて、楽しみになってきたね。待っているよ、エーベルト」
▲
「エーベルト、少し来てくれないか?」
翌日の放課後。
エーベルトが寮に戻る支度をしていると、ライムントから声がかかった。大人しくライムントについて行くと、対策本部の地下室まで来た。
「兄貴、いきなり呼び出して何の用?」
エーベルトがそう言うと、ライムントは
「わるいな」と頭を下げてから口を開いた。
「お前にこれを渡したかったんだ」
言って差し出してきたのは、紫色の玉のような物が付いたイヤリングだった。
「⋯⋯これは一体?」
「それは魔力眼という名の魔道具だ。最近、作ることに成功したんだ」
「魔力眼? 一体何に使うの?」
エーベルトが言うと、ライムントはエーベルトの手から魔力眼を取り自分の耳に付けた。
「うーん、15か」
「15? 何のこと?」
ライムントは自分の耳から魔力眼を外し、再びエーベルトに差し出してきた。
「ああ、15というのはお前の戦闘値だ」
「戦闘値?」
「戦闘値、それはその人物の戦闘能力を数値化したものだ」
「つまり15ってのは⋯⋯」
エーベルトが頬に汗を垂らしながら聞くと、ライムントは頷いた。
「エーベルト、お前の戦闘能力だ」
「低っ!! 俺こんな弱いのかよっ!?」
エーベルトは頭を抱えて膝から崩れ落ちた。ライムントはそれをおかしそうに笑ってから言った。
「大丈夫だエーベルト。お前には封印する能力という誰にも真似出来ない能力が備わっているからな」
「ま、まぁそうだけど⋯⋯それより一般人の平均的な数値はどのくらいなの?」
「平均的な数値、か。そうだな、大体500〜1000といったところだな」
「なんか聞かなきゃよかった⋯⋯」
再び崩れ落ちそうになるが、エーベルトは思い出したように手をポンと叩いた。
「そういえば兄貴の戦闘値を見てないな!」
言ってエーベルトは魔力眼を耳に付けた。そしてライムントを見やる。すると、数値が目に浮かんでくる。そしてエーベルトは頬に汗を垂らした。理由はライムントの戦闘値にあった。
「嘘、だろ⋯⋯?一、十、百、千、万⋯⋯」
そしてエーベルトは腰を抜かしてしまった。
「おっと大丈夫かエーベルト」
「⋯⋯お、おう、大丈夫。ってそれどころじゃない!」
「どうしたんだそんなに慌てて」
「そりゃ慌てるよ! 兄貴の戦闘値、55000なんて数値を見ればね!」
そう。兄貴ことライムントの戦闘値55000もあったのである。慌てるのも当然のことだろう。
「どうしたらそんなになるんだ!?」
「ま、まぁいろいろ訓練してな。それより魔力眼は気に入ってくれたか?」
「あ、うん、気に入ったよ。でもどうして兄貴は俺にこれを?」
そう。ライムントの戦闘値に驚いて聞きそびれていたが、どうして魔力眼をエーベルトに渡したのかが気になるのである。
「いずれ俺たちは鬼怒哀楽と戦うことになる。そのときに相手の戦闘値を測れば役に立つと思ったんだ」
「なるほど」
「ま、そういうことだ。気に入ってくれて何よりだ。まぁ俺はそろそろ会議があるから行く。じゃあなエーベルト」
そう言ってライムントは小走りで地下室をあとにした。
「魔力眼⋯⋯いい魔道具だな」
そう呟き、エーベルトも寮に戻った。




