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デッド・オア・キス  作者: 夕凪渚
2章 メリエース大陸〜第2のマギアビースト〜
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14話 『新たな転入生(こいつも変態)』

 HR(ホームルーム)が始まり健康診断が行われた数分後。エーベルトのいる教室は喧騒を極めていた。特に男子が騒いでうるさい。なぜうるさいのか。それは1人の女によって引き起こされたうるささだった。教卓の隣に立っている。その姿を教室にいる全生徒が見ていた。その人は――


「フェミリー・ローレイラと言いますぅ。よ・ろ・し・く・ね!」


『うおおおおおおおお!!!』


  そう。1人の女とは先日封印に成功したマギアビースト、フェミリー・ローレイラだった。妙にエロい仕草をしながら自己紹介をすると、男子は色めき立った。それを見たヴェローザは呆れたようにため息を吐いていた。


「みんなー! 私にたくさん話しかけてね? そうしたら特別にィ、いろいろなことしてあ・げ・る」


『いやっほぉぉぉぉい!!』


「男子共うるせぇ! たった1人の女の色気に惑わされてんじゃねぇ!」


  またも男子から歓声が上がると、ヴェローザが堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒が切れたように男子を怒鳴りつけた。すると男子は少し落ち着いたようで、席についていた。


「はぁ⋯⋯。改めてこちらから紹介する。今日から転入するフェミリー・ローレイラだ。フェミリー、お前はエーベルトの左隣の席だ」


「はーい」


  ヴェローザが言うことに対し、フェミリーは軽い調子で返事をし、席の方へと歩みを進める。と、席に座るかと思いきや、エーベルトの前に立つ。


「な、なんだよ」


「この前のキス、素敵だったわよぉ」


「お前までそういうこと言うのかぁ!!」


  エーベルトが悲鳴を上げると、それと同時に女子からドン引きの声が上がる。男子からは嫉妬の声が上がる。どちらの声もエーベルトは求めていない。フェミリーが引き金となって起こされたある種災厄(さいやく)だ。


「ちょっとどういうことエーベルト! この女ともキスしたわけ!?」


「いや! してないしてない!」


  ユリアンネが斜め後ろから身を乗り出しエーベルトに怒鳴りつけた。それに対しエーベルトは声を裏返し(本当はキスをしたのだが)否定した。


「フェミリー。私とのキスのときの方が素敵だった」


「いやそこ張り合うなよ!? お前は出てくるな!」


  突然、フュールが介入し教室からまたも悲鳴と嫉妬の声が上がる。エーベルトは声を裏返して言った。


「じゃエーベルト君。隣だからよろしくね♡」


  何が楽しいのかスキップしながら席についた。


 ――黙って席についてくれよ!?


  と思うエーベルトであった。


  それから順調にHRは進んでいき、授業が始まるまでの休み時間になった。


「エーベルト、フュール、フェミリー。3人は話がある。ついてこい」


  と、エーベルトが先ほどの騒ぎで疲れた体を休ませていると、ヴェローザから呼び出しをくらった。3人はヴェローザのあとを追った。




 ▲




  エーベルトたちが呼び出されたのはMB対策本部の地下室だった。そこにはヴェローザと共にエーベルトの兄――ライムントも居合わせた。


「休み時間なのに呼んで悪いな。だが、これからの話だ、よく聞いてくれ」


  ヴェローザは言いながら何かの大きな画用紙のような物を机の上に広げた。エーベルトが覗き込むとそれは、5大陸が全て写った地図だった。


「エーベルト、フュール。お前ら2人は先日行ってきて貰ったばかりだが、もう一度別の大陸に行ってもらう」


「またですか!?」


「また行くの?」


  エーベルトとフュールが声を上げると、ヴェローザが鋭い目付きで睨んできた。


「当たり前だ。これからお前達には全てのマギアビーストを封印するまで大陸を行き来してもらう」


「大陸を行き来ですか⋯⋯」


  大陸を行き来するのは本来なら船を使い行くのだが、ライムントという強大な魔力を有する者がいるため、転移でいける。その点はエーベルト達にはありがたかった。


「今回行ってもらう大陸はここだ」


  そう言ってヴェローザは地図を指さした。ヴェローザが指した大陸は少し小さめの大陸だった。


「ここですか。何ていう大陸ですか?」


「アーボレス大陸だ。この大陸はスラム街が多い。いきなり攻撃をしてくる奴もいるかもしれない」


「ちょ、怖いこと言わないでくださいよ」


「大丈夫よエーベルト君。私がしっかりやっつけてあげるわ!」


「いいとこ取りは許さない。やっつけるのは私」


「お前らいい加減俺を挟んで争うのやめて!?」


  エーベルトは争いを仲裁するように悲鳴を上げた。だが、フュールとフェミリーの言っていることはごもっともである。もしエーベルトが襲われても対処できないため、そこはフュールとフェミリーに任せられる。


「まぁそんな感じだ。私も実際に行ったことはないから詳しいことは言えない」


「ここでマギアビーストは目撃されているんですか?」


  エーベルトが問うと、ヴェローザは腕組みをしながら少し険しい顔をして言った。


「それがな、アーボレス大陸での目撃情報は無いんだ。それが気がかりではあるがな」


「え、じゃあもしいなかったら?」


「そのときはそのときだ。別の大陸へ行かせる」


  ヴェローザは淡々と言ってみせた。エーベルトは納得がいかなかったが、聞くのを止めた。――殴られそうだからだ。


「3人には早いが、明日アーボレス大陸へ向かってもらう。長い滞在になるかもしれないから準備をしておいてくれ。そろそろ授業の時間だ。お前らは先に戻っていろ」


『分かりました』


  3人は同時に返事をし、地下室から出ていった。

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